⒊超絶美人で、しっかりしてるけどたまに抜けてるところが可愛い女神スィスより♡
心地のいい昼下がり、太陽の光を受けながら微睡み、そして目が覚めた俺の目の前には1人の女性が。腰までかかるプラチナシルバーの髪、ピッタリとしていて、体のラインがしっかり見える、くるぶしには少し届かない程度のネイビーのワンピース。スタイルのいい体つき。少し幼さが残る顔立ち。少し知的な、サファイアブルーの瞳。容姿のみに限定するが(内面がわからないため)、一言で言えば、「完璧な女性」そのものであった。
『おはようございます、マスター』
(いや、えっと、あの、えー……)
ただいま絶賛混乱中でございます俺ことフィリス・メトリオであったが、正直考えても何も分からないので、一旦諸々のことは諦めて素直に質問してみることにしたかったのだけれども、今現在俺には喋ることができないため、
「あううえあ?」※誰ですか
と声を出すことしかできなかった。どうしよう、コミュニケーションを取る方法がないぞ、と考えていたところに。
『当システムの名称はシェル。私も「シェル」と名乗っております』
(え?)
『繰り返します。当システムの名称はシェル。私も「シェル」と名乗っております』
(いや、別にそれはいいんだけど……え?俺の考えてることが分かるの?)
『はい。当システムはマスターの能力に依存するため、マスターと常にリンクした状態となっております。その為、思考での会話が設定されている場合には思考内での意思疎通が可能となっております。しかしながらご安心を、相手に伝えようという意識を持っての思考だけが共有されます)
(へぇ……ハイテクだなぁ)
『この程度で驚かれても困ります。マスターはこれから世界をハッキングされるんですから』
(ハッキングって、女神様が言ってた?)
『はい、その通りです。マスターには、これから世界をハッキングしてもらいます』
(いや、ちょっと待ってくれ。一旦質問していいか?)
『はい、何なりと』
(俺が生まれた時に聞いた声もシェルの声だったのか?確か「システム:シェル起動」みたいなことを言っていた気がするんだけど……)
『はい、その通りです。あの音声は私の音声です』
(そうか……。あ、あと、なんであの時の音声以降一回も姿を現さなかったんだ?スキルも使えなかったし)
『それについては、深くお詫びいたします。実は、あなたには今回特別に、この世界での言語に関する知識と、生誕時から視覚認知機能を完全に発達させる、という2つの特別特典がついてくる予定だったんですが……)
そう言って、シェルは1つのウィンドウを展開する。というか当たり前のようにファンタジー、あるいはSFとも言えるような要素を使うのやめてもらえませんかね。
シェルが開いたウィンドウには、こんな文章が。
「翔吾くん、改めフィリスくんとシェルちゃんへ
ごめーんっ´д` ; 実は特別特典つけるの忘れちゃってたー(>人<;)
本当は言語知識と視覚認知機能の早期発達の2つの特典をつける予定だったんだけど、私が忘れてたせいでつけるの忘れてたみたーい(;´Д`A
だから代わりにシェルちゃんにしてもらったから、それで大丈夫だと思うよー
(๑•̀ㅂ•́)و✧
あ、多分そのせいでスキルが使えるようになるの1ヶ月くらい遅れると思うけど、ゆ・る・し・て・ね♪(o´д`)σ)´Å`) ツンツン
超絶美人で、しっかりしてるけどたまに抜けてるところが可愛いくてギャップ萌えする女神スィスより♡ჱ̒ ー̀֊ー́ )」
『とのメッセージが届いたため、やむを得ず生誕時に権限を行使させていただきました。そのせいで、1ヶ月もこうしてマスターのサポートができなかったのです』
(なぁーるほどねぇ……………許さん女神スィス。何が「ゆ・る・し・て・ね♪(o´д`)σ)´Å`) ツンツン」だっ!まず絵文字がうざいんだよアホっ!なーにが「ギャップ萌えする女神」だ!元から抜けてんだろっ!それに俺結構ハッキングとか楽しみにしてたのにっ!静かに楽しみにしてたのにっ!なんでお前の都合でそんな損をしなきゃならねえんだよっ!)
『心拍の異常な上昇を確認。落ち着いてください、マスター』
(落ち着けるかっ!!あの女神のせいで俺は1ヶ月の間ずっとスキルを使えなかったんだぞ!?)
『落ち着いてください、マスター。スキルを使いたいなら、早くあんな女神なんか忘れて作業を開始しましょう』
シェルのその言葉に、怒りが和らぎ、好奇心が勝っていくのを感じる。
(あ、そうだな、そうだよな!あんな女神なんて気にせずさっさとスキルを使えばいいんだ!)
『はい、そうしましょう。準備はいいですか?』
(はいっ)
『それではまず、マスターのこの世界で何をすればいいのかについて話したいと思います』
(はーい)
俺結構こういう説明とか好きなんだよな。
◇
『まず、マスターの3つの目標について説明したいと思います。そもそも、マスターがこの世界に送られてきた理由はなんだと思いますか?』
(んー、ハッカーだしデバック?)
『はい、その通りです』
(え゛、あってたの?)
『はい。マスターには、バグに対処してもらいたいのです』
(へぇ。バグって具体的には?)
『マスターが対処するバグは、この世界のコード内で悪性の働きをするものに限られます。バグは、世界の誤作動。そして、バグによってコードに干渉する権限を与えられてしまった個体がコード内に侵入して故意に悪性活動を行うもの。これを、ハッカーとして対処してもらいます。』
(そうなのか。ちなみにだが、善性の働きをするバグっているのか?)
『はい、存在します。まず、マスター自身が公式に認められたバグみたいなものですし、魔法なんかもその分類ですね』
(俺もバグなのか……というか魔法がバグってどう言うこと?)
『解説します。まず、魔法の素となるものは知っていますか?』
(あれじゃないの?マナ?魔力?そのあたりでしょ?)
『正解です。人間はマナと呼びますし、神々もマナと呼びます。正式名称もマナですね』
(マナって物質なの?正式名称とか言ってるけど)
『マナは厳密には物質ではありませんが、知覚の違いによっては物質にもなり得ます。まず、マナについて詳しく説明をします。元々、マナとは物質を構成する最小単位として世界にプログラムされていました。ただし、マナとは「受動的概念物質」です。マナは、常に全てのものと重なって存在しており、またその全ての物質もマナで構成されています』
(……?…??ごめん、全然わからん)
『一旦説明を続けます。最後にまとめて噛み砕いて説明します。「受動的概念物質」とは、何かに知覚されて初めてそれが何か決定される物質のことです。おそらく、マスターの前世には無かった言葉かと思われます。そして、「受動的概念物質」に当てはまるのが、マナです。マナは、プログラムによって知覚され、水と知覚されたならば陽子、中性子を作り原子核を構成し、電子となり、それが集合し水分子となり、水へと変化するのです。』
(……なるほど、すっごくよく分からん)
『例えば、マナに向かって人が「これは鉄だ!」と言ったら鉄になれますし、コードに「お前は水だ!」と指定されたら水になれると言うことです』
(なるほど)
『魔法は、その変化によって起こったバグです。例を用いて説明します。例えば、「燃える」と言う状態は物質の急激な酸化反応によるものですが、魔法はそのプロセスを行いません。本来、マナとは、コードによって定められた「特定の質量と性質を持つもの」という枠にのみ変化可能です。これが「物質」になります。しかし、魔法はその枠組みから外れているものです。具体的には、炎は物質の急激な酸化反応ですが、魔法で使われる炎は酸化反応による炎を「1つの物質」と定義した状態に変化しているのです。これが、魔法が「バグ」である理由です』
(へぇ、そう言うことだったんだ。と言うか、魔法って何があるの?)
『人類が発見済みの魔法は、火、水、風、土、光、闇、無の7つになります』
(じゃあさ、水魔法とかはなんでバグな訳?別にバグじゃなくない?)
『説明します。そもそも、マナが変化可能な回数は1度きりです。しかし、魔法は世界に存在するマナと、周囲にある物質をマナと再定義したマナの、二つの種類のマナで構成されています。ですから、その「再定義されたマナ」が含まれている時点でバグですし、世界に存在する水と魔法で生み出された水は根本的に構造が違います。水は、水分子、つまり酸素原子2つと水素原子2つによって構成されていますが、魔法で生み出された水は、どこまで割っても「水」が最小単位、つまり新しく定義された「水」で構成された物質になるのです。他の魔法でも同じことが言えますね』
(なるほど……まあなんとなく、ぼんやりとだけどわかってきたぞ)
『それはよかったです。魔法は、このようにバグから生まれたものですが、それを見つけた神々が「これ使える」と判断した結果、世界のルールとしてコードに追加されたのです』
『これが、マスターの1つ目の目標、デバッグです』
◇◇◇
超常的視点
女神によって、少しだけ思考を誘導されたフィリスの脳は、なんの疑問も抱かず、当たり前かのようにシェルの説明を聞くことを受け入れている。
女神は、一体何をしようと言うのか。それは、まだまだフィリスには分からぬ謎であった。少なくとも、思考誘導に気づくまでは。
基本的に女神はいいやつです、たまにうざいですし、なんでそんなことしてるのかはまだ分かりませんが
あと結構シェルさんも女神にキレてたり




