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君>世界   作者: 雪ノ雪
第七章『遠い半身』
98/112

13/双璧まみえる

 時間は少し遡る。

(私って思ってた以上に人脈なかったんだなぁ)

 色々と声をかけてはみたが、結局クウォンタ以外に手を貸してくれる人が居なかったという現実を前に、アンナはもう少し人付き合いは大事にしようと心に決めつつ、クリスエレス上空に辿り着いた。

「うむ、なかなか気持ちの良い速度だったぞ! 少し乗らない間に成長したな!」

 自身の相棒である飛龍の背中をバンバンと叩きながら、クウォンタが豪快に笑っている。

 転移門はクリスエレスという国の特性上、アンナには用意するのが難しかったので、この移動手段を用いる事にしたわけだが、想像していたよりずっと早くに到着できた。

「ご苦労だった! こっちの用件が終わったらたらふく食わせてやるからな! 楽しみにして待っているんだぞ!」

 そう言うなり、クウォンタは飛龍から飛び降りた。

 地上までの高さは大体四ヘクター(四キロ)くらいだろうか。着地の直前に自身の身体の大部分を雷化して重さを取っ払えるアンナはともかく、彼は一体どうするつもりなのか?

(まあ、死にはしないか)

 その程度で死ぬような奴が看板になれるわけもなし、とアンナも心配するのを早々に止めて、彼と一緒に飛び降りる。

「戦闘には参加させないんですか?」

「弱いからな! 危ない真似はさせられないさ!」

 離れていく飛龍を見上げながら訪ねると、そんな答えが返ってきた。

 実際弱いなどという事はまったくなく、多分『黒潰石(ルダナウェル)』の傭兵程度の戦闘能力は余裕であると思うのだが、飛龍を所持している人間は総じて飛龍を戦わせる事を嫌う傾向がある。

 理由はまあ、代替が非常に困難な存在だからだろう。更に言えば、戦いは自分一人でどうとでもなる『真深夜(レドゥフォドゥン)』クラスの傭兵が飼い主である事が殆どだから。

(私も手に入れてみようかな)

 飛龍の力を得るには、まずタマゴを確保する必要がある。生まれたばかりの飛龍に親だと思わせない限り、従える事は不可能だからだ。まあ、稀にタマゴ自体が市場に出る事もあるようだが、その事態に遭遇した事はなかった。おそらくはデマ。仮に事実だとしても、財産の十分の一くらいを消費する覚悟は必要そうだった。

(……そこまでの意欲は、ないか。それに、この先世界がどうなるかもわかんないわけだしね)

 手にするにしても、それは『極日(きょくじつ)』の後となるだろう。

 その後も世界が続いてくれている事を淡く期待しつつ、そろそろ着地を考える必要があるかと、視線を地表に向ける。

 あと三百ヘクテル(三百メートル)程度。そのタイミングで、クウォンタが得物を構えた。

 柄の部分に非常の長い鎖を備えた斧が、ゆっくりと縦に回転を始める。

「あ、もしかして結界だけじゃなく、内門そのものまで壊すつもりですか?」

「然り! その反発を使って落下速度を相殺する! 神子の最大強度を突破できるかどうか試しておく必要もあるし、一石二鳥だな!」

 回転は残像を残すほどの速さとなり、斧を赤く朱く紅く輝かせていく。

 紅のうちはまだ安全だ。これが紫になるともうアンナでは防げない。蒼になればウィンすら突破できる。そして漆黒の輝きに至れば、神すら消し飛ばせるだけの威力と規模を誇る。

 最終段階は蒼黒らしいが、それは見た事がない。まあ、多分大陸の半分くらいが消し飛ぶ程度にはなるのだろう。当然、使用者であるクウォンタも死ぬ事にはなるが。

(間違っても巻き込まれないようにしないとね)

 パラシュートのように魔力の膜を張って落下速度を僅かに落とし、クウォンタとの距離を取る。ついでに緩やかに自己の雷化も開始。

「さあ行くぞ! 肉を苛め! 魔力を燃やし! 魂を込めて! 吾輩はそれを証明しようっ!」

 高らかな宣言と共に、蒼色の斧が放たされた。

 何重にも束ねられた、二百ヘクテル以上はある鎖が物凄い勢いで彼の手元から離れていく。

 ――着弾。

 斧に宿された甚大な魔力が解き放たれ、凄まじい轟音と衝撃波が吹き荒れる。

 その威力を前に内門は完全に破壊され、そこに込められていた結界も跡形もなく消え去った。

(この感じ、地下の魔法陣も逝ってくれたかな?)

 もう少し強固な結界を想定していたのだが、思ったよりも柔らかかったようだ。宣言とは裏腹に、周りの無力な一般人を巻き込まないよう、クウォンタはかなりの安全マージンを取っていたのだが。

「さて、これからどうするのだ? 吾輩は早く戦いたくて仕方がないが」

 先に理想的な破壊の痕の上に降り立ったそのクウォンタが、鎖をぐるぐると自身の腕に巻きなおしながら催促してくる。

「これだけ派手な登場をしたんですから、すぐにでも――」

 言葉の途中で爆音が轟いた。魔石によるものと思われる、まったく同じ魔力の純度と量で構築された攻撃魔法が、複数の地点で同時発生したのだ。

(こっちの登場に合わせたって感じだな)

 実に挑発的。本当、ララエスタはこの遊びを愉しんでいる。……まあ、標的含め、このあたりは予想通り。何の問題もありはしない。

「今の魔石の質を見たか? 全てが漆黒以上。数も百は超えていたな。全部で一千億はくだらないだろう。吾輩の懐だったら破産していたな。それに、傭兵もずいぶんと雇ったようだ。やはり彼女は派手だな。見ていて清々しい!」

「是非とも修正してほしい悪癖ですけどね。 ……っていうかこれ、アルタ・イレスの看板の気配じゃない?」

 そこまで詳しくはないが、一応商売敵だ。そのクラスの相手の情報くらいは把握している。

 三位、五位、九位の三人。

 アルタ・イレスで『真深夜(レドゥフォドゥン)』に位置しているのは第二位だけなので、そいつ以外は正直そこまで深刻な脅威ではないが、ララエスタがこの程度のカードしか用意できなかったとも思えない。

(となると、やっぱり第二位もいるんだろうな。さすがにオセはないだろうけど)

 というか、彼女の性格的にオセは使えても使わないだろう。神子で神子を殺すなんて、なんの面白味もないからだ。

(それにしても、ほんと、派手にやる)

 爆音は勢いづいて、街をみるみるうちに赤く染めていた。まるで夕焼けの茜が空から地面に堕ちてしまったみたいだ。

 スロウも、まずはそちらの対処を優先するはず。

 内門を壊して侵入した時点で潜伏という選択は捨てていたのだが、これだけ盛大に大勢が暴れまわっているのであれば、今からでも遅くないかもしれない。

 その旨をクウォンタに伝えると、

「やはり吾輩は真正面から殺り合いたいぞ!」

「不意打ちが駄目そうなら嫌でもその機会はやってきますから、それまで我慢してください。あ、先に言っておきますけど、わざと見つかるような浅はかな真似はしないでくださいね」

「むぅ……!」

 どうやら考えていたらしい。

 ため息をつきつつ魔力を内側に仕舞いこみ、世界に溶け込むように気配を消していく。

 クウォンタも、渋々ながら最低限の隠密性は確保してくれた。……といっても、動き回ってもバレないほどのパフォーマンスではないので、状況把握はこちらが担った方が良さそうだ。

「では、クウォンタさんは私が連絡するまで、或いは出てきた本命が隙を見せるまで、ちゃんと隠れててくださいね」

 そう言って、アンナは行動を開始した。


                §


 街中で行われていたのは虐殺だった。正規兵の弱い事弱い事。

 死に際に自国の神に助けを求めるさまは、哀れを通り越していっそ滑稽ですらあった。

(この人たち、なんで兵士なんて道選んだんだろう?)

 あんまり詳しくはないが、クリスエレスというこの独裁国家にも一応職業選択の自由はあった筈だ。

 選んだのにこの体たらく。彼等は守るべき市民をろくに守れもしない。

 市民共もそうだ。この事態を前に彼等が行うのは祈りのみ。

(気持ち悪い奴等)

 視線を切って、他に目を向ける。

 スロウはまだ出てこない。自国の民が虐殺されようがどうでもいいという事なのか? それとも出て来れない理由があるのか。

 前者はさすがに考えにくい。神子にとって国民とは財産だからだ。対神子を想定した時、必ずその消耗品は必要になる。儀式を捨てていない限りは、今ここで失う事を良しとする理由は存在しない。

 ならば後者、トラブルの類に見舞われているという線が濃厚だが、それは果たしてどのような種類なのか……

「――」

 突然、妙な気配が近くに現れた。

 空間転移だと思うが、詳細は不明。

 より一層に隠密に力を注ぎつつ、そちらに向かう。

 何処かの貴族の庭の巨木の傍。そこに標的の女の姿はあった。

 腰まで届くさらさらとした金色の髪に、淡さを多分に示した桜色の瞳、白と蒼を基調とした礼装。

(うん、間違いない。天上のスロウだ)

 右の鎖骨の下あたりに子供の拳くらいの大孔が空いている。なかなかの勢いで血が噴き出ていた。深手を負わされてからまだそれほど時間は経っていないといった感じ。

 他の神子と戦って、負けて逃げてきたのだろうか? だとしたら逃すまいともう一人神子がやってくる可能性が高そうだが……まだそういった事態になっていないという事は、その相手も手傷を負って痛み分けになったと見るのが自然か。 

 なんにしても、これ以上ない好機。

(今なら、私一人でもやれるかな?)

 細剣に手を掛ける。

 静かに静かに、神であっても反応できない間合いまで詰めていく。

 と、そこで不意にスロウがこちらを向いた。

 なにかを喋ろうとして、激しくせき込む。

 臓器をやられているわけでもなさそうなのに、大量の血が抑えた手の隙間から溢れ出ていた。喉の内側を損傷しているのだ。かなり深刻なのだろう、辛うじて呼吸は出来ているといった具合。

 今踏み込んでいれば殺せていたかもしれないが、さすがにこうも都合がいいのは不自然だ。

 それに、どういうわけか、スロウはアンナの顔を見たとき一瞬その表情を和らげた。そこには、たしかに安堵の色があった。

 もちろん、彼女と直接的な面識はない。

 この状況下でなければ、誰に対してもその手の仮面をつけるタイプだと判断した事だろう。けれど、今は違う。相当に危機的だ。更に言うなら目が合った瞬間、もう隠す必要もないとアンナは明確な殺気を纏っていた。天上のスロウともあろうものが、それを察知できないほど争いを知らないなんてことは、さすがに考えられない。

(気にせず殺る?)

 絶好のチャンスである事には変わりない。これでララエスタの協力を得る事が出来る。迷う必要などない。たとえどんな罠だとしても、普通に神子を殺すハードルよりは間違いなく低いのだから。

 でも、そう自分に言い聞かせてみても、気分はまったく乗らなかった。このもやもやを無視する事に、酷く嫌な感じを覚えていた。

(……直感には従ったほうがいい、か)

 殺気を解き、柄に乗せていた右手を離す。

 それは以前、感覚よりも頭で戦っていたアンナにウィンがくれた助言の一つだった。だから間違っていたらあとでウィンに苦情でも送ってやろうと心に決めつつ、スロウの元に歩み寄る。

「大丈夫ですか?」

「――」

 やはり喋れないようだ。

 だが、唇の動きで彼女が自分の名前を呼んだのはわかった。

 そこでまた激しく咳き込み、その場にへたりこんで、

「ね、むい」

 絞り出すように、苦しげに音を放った。

 瞬間、事態の真の異様さをアンナは理解する。

 無理をして口にした言葉がそれだったのだ。他のどんな言葉よりも、それは見事に今目の前にいる人物が誰なのかをアンナに示す一言だった。

 慌てて駆け寄り、傷の状態を正確にはかる。

(魔力による止血は……ちょっと無理そうね)

 傷口にこびりついている相手の魔力の濃度が濃すぎる。専門の治療が必要だ。

(やっぱり相手は神子。肩の方が傷は深刻だけど、喉の方がより魔力の濃度が濃い。というか魔法が込められてるのか、これ。喋らせない事だけが目的じゃないって事ね)

 ただ、どんな効果の魔法なのかは現状では不明だ。

 いずれにしても、まずは安全の確保。一刻も早くここから退散する必要がある。

 そのためにも出血はなんとかして抑えないと、このままだともって七、八分程度だろう。

(……乱暴な手だけど、傷口を焼くか)

 雷によって発生する高熱をもって、タンパク質の熱凝固作用を利用する。

 上手く行けば相手の魔力汚染を無視しつつ血を止める事が出来るだろう。まあ、どんな姿であれルナを傷つけるという行為には非常に抵抗があるが、この際仕方がない。

「肩の止血を行います。これを噛んでいてください」

 ハンカチを渡し、左手で傷口に塞ぎ、その手に発生させた雷が余計なところにまで伝播しないように傷口の周りに魔力の膜を張る。

 抵抗は殆どなかった。どうやら、この異常な状態に伴って抵抗機能が殆ど停止しているようだ。ある意味で不幸中の幸い。これなら余計な損傷なく応急処置できる。

 ならさっさと済ませようと、アンナは彼女の体に雷撃を流し込んだ。

「――」

 噴き出た脂汗が痛みの強さを物語っていたが、彼女は悲鳴をしっかりと噛み殺す。痛みに耐性がある証拠だ。これも不幸中の幸いというべきか、いずれにしても周囲に存在が感知されるリスクは最大限軽減されたと見ていいだろう。無事、出血を止める事にも成功した。

「背負います。左の方は力を入れられますか?」

「……」

 小さく彼女が頷いたのを確認して、背中を向けてしゃがみ込む。

 左腕がぶらんと胸元に落ちてきた。その手を右手で掴み、お尻を左手で支えて立ち上がる。

 もし戦闘になれば、どちらかの腕一本で彼女を掴みながら戦う事になるだろう。

 そうならない事を願いつつ、アンナは駆けだした。

 街中に漂う憎悪と恐怖の隙間を掻い潜って、クウォンタの元に向かう。

(この状況での目的の破棄を、どうやって納得させるか)

 さすがに彼女がルナだと言ってそれを鵜呑みにしてくれるほどお気楽ではないし、そもそも彼はあまりルナの事を知らない。証明するのはなかなか困難に思えた。

 でもまあ、勝手に死にかけている相手にトドメを刺すことを進んで行うタイプでもないので、保留というカタチにするのはそう難しくもないだろう。

「クウォンタさん、聞こえますか?」

 ネックレスにした通信石に魔力を通し、訪ねる。

『あぁ、聞こえているぞ。それにしても嫌な戦場だな。正直今すぐまっさらにしたい気分でもある。暴れていいか? どうぞ』

「飛龍を呼んでください。離脱します」

『なにかあったのか? どうぞ』

「それは合流したら説明します。合流する前に飛龍を用意してください。一刻を争うんで」

『もしかして、戦えない流れなのか? どうぞ』

「後日になっただけです。あと、どうぞってなんですか?」

『前に映画でそういうやりとりを見てな! なんだか格好いいなと思ったんだ。どうぞ!』

「まあ、別になんでもいいですけどね。それで、間に合いそうですか?……どうぞ」

『あと一分で戻ってくる。が、その前に一波乱ありそうだ』

 通信が切れた。

 そのタイミングで、アンナも複数の気配を察知する。

 首都の外からなにかが物凄い速度で接近してきたのだ。数は十二。最初は魔物かとも思ったが、おそらくは人間だ。飛行魔法をもった部隊。新たな乱入者である。

 ただ、クウォンタが感知したのは彼等ではないだろう。位置関係的に別の存在だ。

 それが何なのかを考える暇もなく、側面から矢が迫った。

 右手を細剣に伸ばし、弾き飛ばす。

 結構な威力だ。全身に衝撃が伝わり、それは背負っている彼女にも伝播する。

(受けるのはあんまり良くないな)

 かといってこれ以上速度を上げると、それはそれで後ろにかかる負担が増す。そして闇雲に魔法で遠距離の相手を処理すれば、たちまちにこちらの正確な位置がララエスタにバレるだろ。そうなったら終わりだ。アンナもクウォンタも残念ながら彼女には勝てない。

 魔力を散布して正確な位置を嗅ぎ取られないようにしながら、首都の外に向かって駆ける。

 問題が生じた際は、街の外に飛龍を待機させて離脱するという話にはなっているので、現状はそこが合流地点だ。

(射手は一人だけか)

 そいつの次の矢が放たれようとしてた。

 位置はもう把握しているので反応の猶予は先程よりも長いが、かなりの魔力が込められている。

(アルタ・イレスの看板の一人。たしか、こいつの魔法って――)

 思い出した。分裂だ。

 初手を防がれた事で脅威度を上げたのだろう。しっかり宿っている。

(それに合わせて撃てば、誤魔化せるかな?)

 果たして、上手く相手の魔力に紛れ込めるかどうか。

 多少は露見しそうだが、それでも正確な位置までは突き止められないはず。それに、この程度の輩に三度目を与えるのも癪だし、ここで殺す事にする。

 そう決めるなり、アンナは放たれ途中で百以上に分裂した殲滅の矢の間をすり抜けるように雷撃の道を作り、それを解き放った。

 敵の感知能力はそこまで悪くはなかったが、こちらの雷も分裂するというところまでは想定できなかったようだ。

(貴方の足じゃ無理だよ)

 きっちり攻撃後の硬直に合わせた面制圧。回避動作は絶対に間に合わない。

 その確信のままに、問題なく仕留める事にも成功した。黒焦げだ。

 骨すら炭化したのを確認しつつ、殲滅の矢の範囲外へと一気に踏み出す。その際、離さないように左手でルナの身体を強く押さえつけたが、それでも抑えられず彼女の身体が大きく仰け反った。左腕を掴んで落とすことは避けたが、傷口がまた少し開いてしまったようだ。

 受けるよりは被害は少なかったと思うが、もう少し速度を落としてギリギリで回避するべきだったか。……いや、結局は誤差でしかないので被害は変わらなかった気もする。少なくとも、そのクラスの相手ではあったわけだ。

 実際、奴の攻撃によって八十ほどの屋敷が消し飛んでいた。火力と規模だけならノイン・ゼタの看板下位にも匹敵している。まあ、それだけだが。

(ララエスタさんの攻撃は、なし、か)

 魔力の変化に最大限の注意を払って、それを確認する。

 彼女の魔法は、最高峰の感知能力がなければまったく認識できないレベルで微細だ。おかげで、少しでも視る事を怠れば知らない間に殺されるなんて事も普通にあり得た。あげく射程距離も首都全域を余裕でカバーできる程度にはあるので、本当に理不尽極まりない。

 もっとも、その距離まで攻撃をの手を伸ばすことは彼女にもリスクがありそうなので、そうそう安易にはしてこないと思うが――

「――っ」

 今度は頭上から銃弾が降りそそがれた。

 先程外からやってきた飛行戦力だ。もっているのは魔法銃の散弾タイプ。威力は込められる魔力の総量が圧倒的に多い弓矢に比べれば弱いが、対応力という点では遙かに勝っている。

(魔法銃か。弱い人が使う武器って印象なんだけど……)

 どうやら、手練れの集団がもつことでも大きな価値を持つようだと、彼等の統一された戦闘スタイルを前に目を細める。

 背中に妙な翼をつけているこの新手は、これ以上ないくらい画一化された戦力に見えた。誰が死んでも同じパフォーマンスを行えるというのは、それはそれで厄介だ。

 まともに相手はしていられない。ここはそのまま逃げ切る事を選び――


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