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君>世界   作者: 雪ノ雪
第七章『遠い半身』
86/114

01/或る真実

 サラヴェディカの中に複数用意されている庭園は、転移の中継点としての役割を主としているのだが、それが理由なのかは定かではないが、その全てがまったく同じつくりをしている。空を映した天上の雲の位置も、木々の枝葉の長さや数も、何もかもが寸分の違いもないのだ。

 その中の一つである七番庭園を、数字が気に入ったという理由で会議室にしたクーレの意志によって、今庭園にはサラヴェディカの主要メンバーが揃っていた。

 一応の旗頭であるシャルロットに、半身である魔神マヌラカルタ。

 実質的なリーダーであるクーレに、本来の管理者であるノスティワ。

 ノイン・ゼタの看板であるウィン。

 ヴラドの協力者も継続している平和主義者のリーダーであるリグチラに、最高位の冒険者であるプレタ。

 最高峰の傭兵養成機関の教官であるマルテシアに、解の天使を宿したククル。

 そして、天使たちの代表として参加する事になったらしい四枚翼のファリン。

「全員揃ったね。……ふむ、それにしても、此処もなかなかユニークな感じになったもんだ。面白い」

 無作為に置かれた白い椅子にみんなが腰を下ろしたところで、全てを始めたクーレが言った。

「役に立たない天使もずいぶんと減った事だしな」

 それが一番喜ばしいとばかりに、マヌラカルタが嗤う。もちろん、その視線の先にいるのは、この場で初めて会ったファリンという天使だ。

 眉間にずっと皺を寄せている、金色のボブカットに碧眼が印象的な綺麗な顔立ちの女性。

 今の一言で眉間の皺をより深く刻んで、刺すような眼差しをマヌラカルタに向けながら、右手に魔力を滲ませている。

 あと一言でも余計な事を言えば、即座に戦闘に発展しそうな気配。まだ会議も始まっていないのに空気が悪い。

(お願いだから、波風立てるようなことは言わないで)

 半身である魔神に苦言を呈すると、彼は鼻を鳴らして言い返してきた。

(惰弱者が。最初に喧嘩を売って来たのは向こうだぞ? 私はそれを返したに過ぎない。それとも、先ほど言われたことをもう忘れたのか? だとしたら幸せな頭だな。羨ましい限りだ)

(別に、忘れてません)

 ここに来て早々に、ファリンはこちらを見るなり舌打ちをついて「薄汚い不死にお飾りの小娘か」とはっきりと聞こえる声でそう吐き捨ててきたのだ。だから、マヌラカルタの気持ちも判らなくはなかった。もちろん、こういう場面でやって欲しくはなかったけれど。

 まあ、なんにしても、こちらに対して彼女が悪感情を持っているのは確かだろう。理由はおそらく自分が悪魔付きだから、ではなく、サラヴェディカをこんな状況にした者の関係者だから、だと思う。それを物語るように、彼女の視線はクーレにこそ最も激しい憎しみを宿していた。

 そういった相手と、どうやって付き合っていくのが良いのか……考え事をしているうちに、会議が始まった。

 議題は今後の動きについてだ。

 ひとまずクリスエレスの弱みを握ることに成功し、こちら主導で彼らを動かす事が出来る立場になったわけだが、依然星舟は不気味な沈黙を保っているし、他の勢力も色々と動いている。そんな中で、こちらは何を優先して動くべきなのか。出てきた意見は様々だった。ただ、満場一致になりそうな案は一つもなく、妥協する気配もない。

「――見つけた」

 煮詰まった状況の中で、その声は突然庭園に響いた。

 まったく予期せぬ第三者の声に驚きを覚えながら視線を向けると、そこにはルナがいた。以前と同じワンピース姿だ。特に攻撃的な気配を纏っているわけでもなく、相変わらず眠そうだった。

 しかし、本来人間が簡単に足を踏み入れる事などできない場所に、突然現れたルナという存在は、ファリンはとっては脅威以外の何物でもなかったのだろう。即座に敵とみなして、右手に光の剣を顕現させ――そのまま懐に踏み込まんと腰を落とした瞬間、身体を一回転させて地面にたたきつけられた。

「あまり恐ろしい事をしないでくれ。この世界が破綻してしまう」

 瞬き一つの間も許さない速さでファリンを拘束したウィンが、咎めるような口調で言う。

「――っ、は、離せっ! 人間風情が、私に触れるな!」

 自分が何をされて組み伏せられたのか、すぐには理解できなかったのだろう、少し呆然としてからファリンは声を荒げたが、完全に決まっているためか、全く身動きは取れないようだった。

 そんな彼女の事など気にも留めず、ルナはこちらに向かってゆったりとした足取りで近づいてきて、

「貴女、ええと、ちょっと待ってね…………そう、シャルロットに会いに来たの。貴女の顔が浮かんだから」

 と、朗らかに微笑んだ。

 その様を見て、

「起きたばかりのようだな」

 と、ウィンが呟く。

 呟きながら、微かに目を細めて周囲へ視線を走らせた。

 おそらく、ルシェドの来訪を警戒しての事だろう。もっとも、それは杞憂で済んでくれたようで、数十秒後ウィンは警戒を解き、ついでにファリンの事も解放した。

 そのタイミングで、ぱん、と両手を軽くたたいてクーレが言う。

「ちょうどいいや。少し確かめたい事があったんだよね。ルナさんだっけ? 君、検査を受けてみる気はない?」

「けんさ?」

 初めて聞く言葉を前にしたみたいに、ルナは首をかしげる。

「記憶障害なんでしょう? それがどの程度深刻なレベルなのかを知っておきたいんだ。幸い、このサラヴェディカにはそういう事が出来る場所もあるみたいだしね。もしかしたら、治す事だって可能かもしれない。儀式なんて用いずとも」

「治す? どうして?」

 本当に不思議そうに、ルナは言う。

「どうして、か。……ふむ、そうだね、忘れたら困る事とか、悲しい事があるから、とかかな」

「困る事……困る事……そういえば、お父様の名前って、なんだったっけ?」

「ルシェド・オルトロージュだ。今の保護者という意味でなら、だが」

 淡々とした口調で、ウィンが答えた。

「ルシェド? ルシェド……うん、お父様はたしかにそんな名前だった。でも、それって覚えていないといけない事?」

 こちらに視線を向けて、ルナが訪ねてくる。

 あまり興味はなさそうだ。それが記憶障害の所為なのか、そもそも距離がある関係性の所為なのかはシャルロットには判らないが……なんだろう、もやもやする。

 クーレは「困る事」よりも「悲しい事」という言葉の方をはっきりと強調していた。にも拘らず、彼女は前者だけを気にしたのだ。この違和感は、無視してはいけない気がする。

「……あの子の事は、忘れても悲しくないんですか?」

 相当に踏み込んだ事を自覚しつつ、シャルロットは訪ねた。

 すると、ルナはまたきょとんとした顔をして、

「あの子には逢えるもの。夢の中でいつだって」

 と、答えた。

 それは本心のように聞こえる声で、だけど次の瞬間彼女の目から涙がこぼれた。

「……あれ? 私、泣いてる? どこも痛くないのに、変なの」

 目尻を拭いながら、ルナはそう呟く。

 それから、

「いいよ、痛くなければ」

 と、ぼんやりとした口調でそう答えた。


                §


 会議が終わったところで、シャルロットは検査室へと足早に向かう。

 検査室には一人の天使といくつもの計器、そしてガラスで隔たれた奥の一室に検査台が二台ほど設置されていた。

 その奥の方の審査台で、ルナがすやすやと眠っている。

「検査は?」

「たった今終わりました」

「結果はどうだったんですか?」

「我々には修復不可能ですね」

 あっさりと、担当の天使は答えた。

「具体的には、どのような状態なんですか?」

「脳に損傷はありません。ただ、記憶を司るいくつかの回路を塞ぐように魔力が駆け廻っています。原因はおそらく強い精神的ショックによるものでしょう。人間は精神状態に身体がずいぶんと引っ張られる生き物のようですし」

「そう、ですか……」

 彼女が酷い環境の中で生きて来たのは、ヴラドの過去からも容易に想像出来る事だった。

 ただ、逆に言えばそんな中で生きてきた人間が、心を決定的に壊すほどの痛みとなれば、それは非常に限られるものである筈で……

「なるほど。つまりこいつは勘違いをしたわけか」

 ぽつりと、影から顔を出したマヌラカルタが呟いた。

「勘違い?」

「莫迦なオウム返しは止めろ。貴様も判っているだろう?」

 そう指摘されて、ついつい俯いてしまう。

 ……ルナは多分、ヴラドが殺されたように見える場面に遭遇したのだ。そして、その記憶を消した。彼が死んだという現実をなかった事にするために。

「おそらく、そこで本格的に目覚めたんだろうな。神子としての力に。だが、そいつらを殺すという選択は取れなかった。殺す事が出来ていれば或いは、まだ生きているという真実に辿りつく事も出来ただろうに。私にはまったく理解できない愚だよ。……だが、貴様はそうでもなさそうだ」

 悪魔がせせら笑う。

 その通りだった。シャルロットには、ルナがそれを行えなかった理由が容易に想像出来た。

 日々の矯正、支配の賜物だ。

 全ての苦痛は罰なのだと、他者への憎しみを取り上げられていたから、彼女はそれを選べなかったのである。

 初めからそうだった彼女は、きっとシャルロットの比ではないくらいに、その傾向も強かった事だろう。

「さて、そんな娘に真実を与える事はどのような結果を齎すのか。いや、その結果をはたしてルシェド・オルトロージュは容認するのか。重要な点はそこだな」

「……そうだね」

 頷いたところで背後から響いた足音に振り返ると、そこにはウィンの姿があった。

 彼が来ているのは気配で判っていたので驚きはない。元々自分が所属していた傭兵団のお姫様なのだから、理由も明白と言えば明白だった。

「てっきり団長が行った事だと思っていたが、どうやら違ったようだな」

 と、そのウィンが呟いた。

 それはシャルロットも当初抱いていたものだったし、多分彼女が記憶障害だと知っている多くの人がそうだと憶測していた筈だ。

(ヴラドさんは、どうなんだろう……?)

 ……いや、この場合は、リリスはそれをどう伝えたのか、という風に考えるべきなのか。

「今、団長はおそらく『揺り籠』の中に居る。干渉するのなら、今しかないだろうな」

 これ以上の思考を遮るように、ウィンが言った。

「揺り籠とはなんだ? まさか言葉通りの意味というわけでもあるまい」

 と、全身を表に出したマヌラカルタが問う。

「だとしたら、それはそれで悍ましい話だが……実際にそれがなんなのかは、私も把握してはいない。ただ、完全に隔絶された場所である事は間違いない。定期的に彼はそこに赴く。期間は三日。おそらく好き勝手に出入りできない領域なのだろう。今まで二日になったことも四日になった事もない」

「魔法の特性による代償と見ても良さそうだな。私の不死の強度にそれがあるように、偏った魔法というものには色々と制約が発生する事がある。無論、ただの留守という可能性もなくはないが、もしそうだと仮定するなら、この三日日が勝負にはなりそうか。……で、どうするんだ? 我が主よ」

 彼女に真実を伝えるべきか否か。

 伝えた先に、どのような変化が待っているのか。

 悪い真実ではないとはいえ、悪い変化にならない保証もないのだ。記憶を取り戻してくれるとは限らない。そして彼女は神子。その力は絶大だ。慎重になって然るべきなのだろう……けれど、シャルロットはもう踏み出した身だ。あらゆる可能性に手を伸ばす覚悟は出来ていた。

(でも、どんな風に真実を伝えるのが正解なんだろう?)

 どうすれば彼女は自身に課した呪縛を解いてくれるようになるのか。

 真っ先に思いつくのは、ヴラドに会わせるという選択だ。

 会議が終わるなり諜報活動に戻ると言って真っ先に庭園を出て行ってしまったが、リグチラに訊けば今どこにいるのかは判るだろうし、実行する事自体はそれほど難しくない。もっとも、ヴラドの方がそれを望んでいないという問題は残っているので、安易に選んでいい手段というわけでもなかった。

 そういう意味では、これは最後に取っておいた方が良さそうだ。

 その旨を伝えると、マヌラカルタは不満そうに眉を顰めながらも、ため息交じりに頷いた。

「まあ、それでいいだろう。色々と探りたいこともあるしな」

「それは推奨しないな。貴方は話さない方が良い」

 静かな声で、ウィンが口を挟んだ。

「何故だ?」

「彼女は貴方にあまりいい印象を抱いていないからだ。一切、貴方の方を見なかったからな。彼女の『夜』は、彼女の些細な嫌悪や敵意に過剰に反応する事がある。彼女の意志に関係なく」

「色々と面倒な娘だことだな。あぁ、だからこその、姫、か?」

 くく、とマヌラカルタは嫌らしい笑みを浮かべるが、

「試す事も奨めない。彼女は殺すのではなく落とす存在だからな。まあ、そこが此処よりも希望があると考えているのなら止めはしないが」

 という返し刃に、鼻を鳴らす羽目となった。

「ずいぶんと詳しそうじゃないか。是非ともその『夜』とやらの魔法の詳細を聞かせて欲しいものだな」

「私が知っているのは今ので全てだ。それも団長の受け入りでしかない。知りたいのなら、彼に聞くしかないな。もっとも、彼もどこまで理解しているかわからないが」

「判らない事だらけだな。そしてそれを良しとしている。まるで腫物だ。たしかに、私のように誠実な悪魔の言葉は、毒にしかならなそうだよ」

 非常に突っ込みどころのある捨て台詞を吐いて、悪魔は影の中へと消えてしまった。

 そのタイミングで、ルナが目を覚ます。

 彼女はぼんやりと周囲を見渡し、ガラス越しにシャルロットを捉えて、

「アンナ……じゃない。シャルロット。でも、どうしてここにいるの?」

「今日は、本当に調子が良さそうだな」憂いを帯びた微笑を浮かべてから、ウィンが呟く。「私も下がるとしよう。彼女の状態がはっきりしてよかった」

 それに合わせて天使も席を立ち、検査室はシャルロットのルナの二人きりとなった。

 ドアを開けて、奥の一室に入る。

「ここは、どこ?」

「ここは記憶の状態とかを確かめる場所です」

「……あぁ、私、物忘れが酷いものね。さっき隣に居た人も、どこかで会った気がするし。気のせいかな?」

「彼はウィンさんです」

「ウィン? ウィン…………あぁ、思い出した。アンナのお師匠様だ。でも、ここはノイン・ゼタじゃないよね?」

「はい、ここは、サラヴェディカという場所です」。

「サラヴェディカ。秩序の楽園。ノスティワの抉った右目から生まれた世界だね。でも、カリンクラの史書ではノスティワの糞尿から生まれた世界って書かれてて、グナー神話では子宮に世界を作ったとも言われているの。時代によって違ってるんだ。新しい解釈の方がやっぱり正しいのかな?」 

「……」

「どうかした?」

「い、いえ、ずいぶんと詳しいんだなって」

 戸惑いを覚えつつなんとかそう返すと、ルナは嬉しそうに微笑んで、

「本は好きなの。昔はあんまり読めなかったけど、今は一杯読めるから」

 と、答えた。

(期せず機会を得たようだな)

 影からシャルロットにだけ聞こえる聲が届く。

 昔、というワードは確かに切り込むには良いきっかけだった。

「……昔は、どんな本を読んでいたんですか?」

「どんな本? ……どんな本だったっけ?」

「やっぱり、勇者とお姫様の物語とか、ですか?」

 ヴラドから聞いていた、名前の由来を連想させる内容を投げかける。

「そういうのは読んだことないな。うん、多分ないと思う」

 多分と言いながらも、ずいぶんときっぱりとした回答だった。

 常に曖昧な感じで喋る記憶障害の彼女がするには、やや不自然。だからこそ、ヴラドが死んだと思った事が起因だというマヌラカルタの憶測を裏付けていると言ってもいいのかもしれない。

 彼女の記憶障害は、ただの情報には適応されていないからだ。実際、言葉は自由に引き出せているし、知識も遺憾なく発揮できている。

 問題が生じるには、思い出だけ。凄惨な過去に関係ないアンナやウィンの事さえ度々忘れるくらいなのだから、直結する情報に関してはおそらく深刻なほどに機能しているのだろう。

 とはいえ、彼女自身はそれを意識して行えていない。だから昔などというワードも口にしてしまう。そのうえで、

「昔話は嫌い。話せるようなことないし。つまらない」

 と、不貞腐れるように拒絶を示した。

 それでも踏み込むべきか、少し躊躇いを覚えつつも、

「……でも、あの子の話はあるんじゃないですか?」

 と、食い下がる。

 するとルナはきょとんとした顔を浮かべてから、

「あの子は昔話じゃないもの。現在進行形だから。えへへ」

 と、嬉しそうに微笑んだ。

 やたらと無邪気な笑顔だった。あまりに完成された美貌ゆえに、それは危うさを覚えるほどアンバランスに映る。

「ルナさんにとっては、あの子って、どういう人なんですか?」

「あの子はね、いつも血生臭くて、温かくて、気持ちがいいの。ギュっとされても嫌じゃないんだ。ベタベタしても、中に入られても気持ち悪くないの。胸が冷えないの。あの子だけ違ったの」

「そ、そうなんですか」

 なんだか生々しい内容に、少しだけ気持ちが引いてしまった。

 それが十年以上前の事だという事実に目を向けると、今度は胃が重たくなってくる。

 旅の中でリリスが教えてくれたヴラドの年齢は二十二歳、ルナも同い年との事で、つまり下手をすれば十にも満たない歳から彼女は性的な虐待を受けてきたという事を物語っていたからだ。

「夢の中以外では、いつ会ったんですか?」

 苦々しい感情を呑みこみつつ、質問を続ける。

「……いつだろう? でも、いつでも会えるし」

「でも、それは本人じゃない。本人に会いたいとは思わないんですか?」

「……なんで、そんな事言うの?」

「会う事が出来るから。あの子は生きているからです」

「生き、てる……?」

 ぽかんとしたような表情。

 やや遅れて、動揺のような反応を昏い瞳が見せた。

「あの子の名前を、貴女は言えますか?」

「あの子は、あの子だよ」

「顔は思い出せますか?」

「……」

「それでも、大切なんですか?」

「当たり前だよ! だってあの子は、あの子が居たから! ……居たから」

 そこで、不意に表情が消えた。

 瞳の昏さも増して、人形じみた歪さが滲みでてくる。

 そして、

「……ここ、どこ? 貴女、誰?」

 キョロキョロと周囲を見渡して、ルナは言った。

 今まであった関係値が完全にリセットされたのが判る、無感情な淡白さだった。

「私は、シャルロットです」

「……シャルロット? ……アンナじゃないんだ。そっか、じゃあ、心配してるかな?」

 瞬間、ルナの姿が掻き消えた。

 まるで幻を相手にしていたかのように、瞬き一つの間に消え去ってしまったのだ。


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