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君>世界   作者: 雪ノ雪
第八章『死者の未来』
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プロローグ/白鳥のように在る事

 新たな身体の中で、スロウはゆっくりと目を覚ました。

 シシカ・ギコードの進化と変化によって拵えた保険の身体だ。見た目は以前のものと完全に同じなので、恙なくクリスエレスに戻る事も出来るだろう。

 第一天使を簡単に納められるほどの器。素晴らしいとしか言いようがないが、それを喜ぶ精神的な余裕はなかった。

(……なんて、化物)

 思い出すのは蒼。全てを滅ぼす蒼。外の世界を焼き尽くした、あの蒼。

 ルシェド・オルトロージュはあれと同じだ。同次元の全てを蹂躪する暴力の化身。

 儀式の勝者は、初めから決まっていたのだ。だが、認識阻害によって、誰もが自分が勝者になれる可能性を夢見て、奴のプランに乗っていた。これ以上ないほど万全な儀式場を生み出すために。

「……」

 息を吐き、絶望も静かに吐きだす。

 今、目の前にはダノラウトもいるのだ。彼女を目覚めさせた信徒がいる。唯一の希望がいる。彼等の前で無様を晒すわけにはいかない。醜悪とは常に、誰の目にも届かぬ裏側に留めておくべきものなのだから。

 努めて冷静に、この敗北を認めた上で、スロウは次に自らが取るべき道を模索する。

 そうして彼女は一つを選んだ。

「まずは、貴方が獲得した奇蹟を始めるとしましょうか。ダノラウト。やり遂げられますね?」

「はい、もちろんです」

 歓喜を隠しきれない声で、彼は頷いた。


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