表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/102

第43話 ゲームに出てこない小隊長の強さが、ヤバすぎる

「そろそろ行こうか。得体の知れない触手ではあるけど、見た目からして要するに食虫植物の蔦の類いに見えないか?

 弟の尻拭いだと、先ずは火力をもって燃やし尽くしてみればいい。簡単なことだろう?

 効かなければ次を考えればいいし、次の階層への道標はすでにあるんだ。怯ませて、その隙に駆けるだけだよ」


「でも、これ。放置したらヤバイんじゃ?」


 ケレルは、カリスの言い分に待ったをかけた。

 帰りも含め、追いかけてくるフィデスたちのためにも、触手は厄介ではないのだろうか、と。


「そんなの、後でいくらでも出した本人に始末をつけさせればいい。言っただろう?

 優先順位はあくまでも、アディの確保だよ《イージス》」


 ビシビシと音が響いていた防壁に、カリスが再び重ね掛けをした。

 そこには、些か現状に対する理不尽を混ぜ込んでいるようにも思えた。

 だってカリスの碧眼が、キラリと獲物を定めた猛獣のような輝きを帯びている。


「こちらは二日も馬を飛ばして、休みなくダンジョンを進み、もう五階層だ。

 それでも、血の痕跡は赤黒く、アディに追いつけていないのだから。滑稽じゃないか。

 ここまで来て間に合いませんでしたの方が、私は笑えないと思うけどね?」


 道は示したから働けとばかりに、カリスはクストス兄弟へと発破をかけた。


「そうですね、そこは殿下に同意いたします」


 セレーヌスは、感情を抑えてそういった。けれど、その目はもう前しか見ていない。自由になった両手を、前へと構えてた。


「……せめて、カリス殿下の期待を裏切らないようベストを尽くしましょう」


 ロブルが頭を振って、思考を切り替えたようだ。何かを吹っ切ったのか、実にいい顔をしている。


「兄上、私はサポートに徹しますので《ウィークン》」


 セレーヌスが、触手全体に弱体化の支援魔法を掛けていた。その範囲は広く、触手のまわりが光って見える。その圧倒的実力を、ケレルは見せつけられた。


「ああ、年長者らしく、火力は任せてもらおうか。これでも、学生の頃から師団長に直々に鍛えられた身だからね。

 末弟には負けるが、オリジナルはそこそこあるよ」


 ロブルが、口元に笑みを浮かべた。漏れ出た魔力で、その瞳が怪しく光る。人差し指と中指を、前方の血痕の続く回廊へと向ける。


「ケレル、走り込みの用意をしておくといい」


 カリスは愉快そうに笑みを浮かべ、ケレルへと声をかけた。せめて遅れないように、ケレルも身構えた。


「《アブソリュート・コラプス》」


「《アクセラレーション》」


 クストス兄弟の力強い詠唱が、階層に響き渡った。

 ロブルの魔法を受けて、近くの触手から順に動きが鈍り、ボロボロと崩れていく。

 それでもまだ、触手はかなりの数が残っていた。防壁を崩そうと、仕掛けてくるものもあるほどだ。


「突破する。皆、遅れないように――《インフェルノ》」


 剣呑に目を細めたロブルが、腰の剣を抜き構えると刀身に蒼い焔を宿らせた。

 そのまま《イージス》の範囲外へ出ると、流れるような動きで触手を切り裂いていく。

 細かく切られたその断面は焼け焦げ、動きが鈍っていた。


 ――つよ。


「ケレル、行くよ」


 カリスに肩を叩かれ、ケレルはとっさに駆け出した。その一歩の軽さに驚き、目を見張る。

 セレーヌスが追加で詠唱した、速度上昇の支援魔法だった。


 ――これなら。


 進むべき道は、ロブルに切り開かれた。

 足が軽く、その速度に転けないようにケレルは一生懸命走った。


 ――あ、そっか。後先考えて、気を遣って、だからセーブしてたのか。


 けれど、カリスが言ったのだ。最後は籠城も辞さない、と。今――全力を出せるように。

 クストス兄弟は、それぞれにしがらみがあったのだろう。今までも強いと感じていたのに、目の前の光景はレベルが違った。

 特にロブルの緑の髪と、焔の蒼が花弁のように舞って色鮮やかだった。


 ――これが、クストスの才華。


 クストス家はこれまで堅実で数ある侯爵家の一つで、突出した何かがあったわけではないと聞いていた。

 神童が生まれその後、魔法師団で若き小隊長の座についたのが、学生の頃から才華と呼ばれ頭角を現していたロブルだ。

 ダンジョンで見つかる魔剣や魔法付与した魔道具の剣とは異なる――ただの剣に魔法を宿らせ戦う彼の姿は、その色から華に例えられていた。


 ――剣に魔法をまとわせたまま扱うなんて、誰も出来ない。


 話し合いを一切必要とせず、クストス兄弟は連携が取れていた。

 ロブルが邪魔な触手を斬り伏せ道を切り開き、セレーヌスがそれ以外を全て引き受けるといった形で。

 ケレルはただ、置いていかれないよう走れば良いだけだった。


 ――アディがあんなに自由なの。ちょっと分かった。


 こんなに頼もしい兄が二人もいたら、弟なら甘えてのびのびとしてしまうかも知れないと一人っ子のケレルは想像した。


 そうして走り抜けた五階層。火照った身体は、足を踏み入れた六階層でその全てが飲み込まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ