表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/102

第31話 ちょっとそこ、俺のこと酷く言い過ぎじゃない?

 思いのまま叫んだケレルに、ヴェネラティオ公爵は満足げに微笑んだ。


「うんうん。公爵相手に良い啖呵だね。それは是非とも、神童君に直接言うと良いよ。君みたいな子が、あの子には必要だからね」


「……え?」


 肩で息をするケレルの頭を、ヴェネラティオ公爵は優しく撫でた。


「師団長、若人で遊んでないで仕事してくれますかね。せっかく来られたんだから」


 テーブルに地図を広げ書き込みをしながら、ロブルが口を開いた。


「えー、ロブル君。これも大事なことだと思うよ。ふるいはあってしかるべきじゃない、道を踏み外さないために。

 神童君に、思い知ってもらってさぁ、殿下の魅力だけじゃ、足りないみたいだし」


「……全く、先ほどからヴェネラティオ公爵は、口が減らないね。不敬罪を適応するべきかな?」


 ロブルの書き込みを見ながら、カリスが棘を含ませて冗談を言う。


「ヴェネラティオ師団長、予測対策はどこまでされてたんですか? 隊の編成の方は?」


「ここは毎年、警戒してたからね。ロブル小隊長の班は、通例通り自由にして良いよ。

 実際に被害が出れば追加で、騎士団と魔法師団とで、混成を整える手はずになってるから。まぁ、後ろは任せていいよ」


 気づけば、皆がテーブルへと向かっていた。セレーヌスの質問に、ヴェネラティオ公爵は賑やかに答えている。

 話に置いていかれたのは、ケレル一人だけ。輪にも入れず、ポカンとしてしまう。


「ちなみに殿下、あとの二人は?」


 普段、カリスと共にいる二人が居ないと、ヴェネラティオ公爵が辺りを見渡していた。


「ウェルムは魔法師団に伝令を出してからは、そのまま馬の手配に出てる。

 フィデスはアルドール公爵家。装備を取りに、家に戻っているよ」


 書き込まれていく地図を注視しながら、カリスは答えた。


「そうだね。アルドールが王都に居ればいいし、僕も――」


「師団長も学園に居残りで。模造剣と水難の方を、調査してくださいよ。

 末弟が、学園に安心して戻れないでしょう?」


「ああ、下っ端の教育がなっていなかったね。ウェルムが抗議していたけど、届いているかな?」


 ヴェネラティオ公爵は、フィデスの父、アルドール騎士団団長を引き合いに出し、意気揚々と話に加わろうとした。

 ロブルがすかさず釘を刺した。カリスも、それに追い討ちをかけている。


「ロブル君は、ホントに痛いところ突くよね。

 あと殿下、そこは僕の管轄じゃないからさ。副団長に直接言ってくれない?」


 途端に面白くなさそうに、ヴェネラティオ公爵は口を尖らせた。


「え、え?」


 ますます困惑するケレルを余所に、皆は同じ方向を向いているようだ。

 目まぐるしい展開に、ケレルは話についていけない。


 ――どういうことだ?


「……ヴェネラティオ師団長は食えない人だろう?

 とはいえ、アディの眼鏡を作ったりして、あれで面倒見は良いんだよ。ちょっとからかい癖があるけど。

 ここの誰一人として、諦めていないんだ。君も安心して」


「……でも、時間とか」


 ケレルの側へと来たセレーヌスが、そう説明をしてくれる。けれど、先ほどのヴェネラティオ公爵の言い分を思い出して、ケレルは言葉に詰まる。


「セレーヌス、アディの行動パターンって前と変わらないか?」


「基本は変わりませんよ、兄上。アディは衝動的ですが、下層までは必ず何をしてでも降りるはずです。

 こうと決めたら、目的を違えるはずがない子ですから」


「そっか。途中で合流出来れば御の字、最悪でも、ボス辺りで保護をしたいところだ。帰りを考慮して無さそうだしな」


 ――そうか、ダンジョンに入る前に、止めるんじゃなくて。


 移動では追いつけなくとも、確かにソロ攻略でなら、スピードが落ちるのは当然と言えた。

 ダンジョンの攻略。本来はパーティーを組んで、野営をし時間をかけて行うものだ。

 皆はそこで、アディに追いつくつもりだったらしいと、ケレルはようやく気がついた。


「帰りもそうですが。普通は出来ないと判断した時点で、どこかで身を潜めたり、救援を待つものではないかと。アディは変なところで考え無しですから」


「ああ、ろくな装備も無しだものな。冒険者登録を禁じ遠ざけたのに、ダンジョン行くのを止められなかった。予見があってもうまくいかないものだな」


「眼鏡に追跡付与もしていたのに、置いていきましたからね」


 クストス兄弟が、アディについてあれこれと意見を交わす。弟に振り回され慣れてる様子だ。


「ああ、ヴェネラティオ公爵、話が終わったらルナも起こしておいてくれるかい?」


「チラッと見たけど、有事なのに、うちの息子は寝過ぎじゃない? 殿下、ホントに連れてくの?」


「子どもは寝るものだよ。とはいえ置いていくと後が厄介だし、そこらの兵より火力はあるんだから頼んだよ」


 カリスとヴェネラティオ公爵のやり取りも、ケレルの耳に入ってくる。


 ――本当に、誰も。


 全体を見て、ケレルはようやく力が抜けた。気を張っていたらしい。


「ケレル。家に手紙を書いてくれるかな?」


「カリス、俺はなにをしたらいい?」


 カリスが声をかけたのと、ケレルが声を出したのは同時だった。

 カリスが紙の束を持って、ケレルへと指示を投げた。その表情は、いつもの余裕のある笑顔だ。


「ロブルが新規ダンジョンの位置と被害予想、今季の各ハザードマップを作った。

 それに一言、君からも添えて欲しい。後発部隊に持たせ、ウォレンティア侯爵へと運ばせる」


「後発隊?」


 家に届けるのなら、ケレルもそこへ同行するのだろうか。それなら、手紙は必要ないはずでは。


「そう。魔法師団のロブル小隊のメンバーが後発。あとは実際に見てからだろう。求められるのは速さだからね。

 先発は、アディを迎えに行くんだよ。クストス兄弟、ウェルム、フィデス、ルナ、私。そしてケレル、君もだろう?」


 ケレルの不安を読んで、カリスが改めて編成メンバーを告げた。

 どこかで、足手まといだと外されると思っていた。だからこそ言われたことに、ぐっと込み上げてくるものがあった。


「ああ、俺も行く!」


 まだ何も終わっていない。だから、ここでは泣かない。ケレルは自身を鼓舞するように、声高く宣言した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ