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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

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第24話 寝かしつけられる子供とは、大変不本意です

「まだ、熱が高そうだね。色々とあったから夏休みは前倒しで始まっただけだ。

 追試の結果、君の成績は学年三位のまま。授業も成績も気にしなくていい。

 ……よって、アディが今出来るのは、寝ることだけだよ」


 カリスが、アディに早口に説明をする。

 内容を理解させようではなく、話を流すことで、質問には答えたと、建前を保っているだけとも思えた。要約すれば――。


 ――お前はただ黙って寝てろ、って聞こえるぞ。


 アディが恨めしそうにカリスを睨むと、なぜか彼はフッと笑みを深くした。


「……それなら、私は寮に帰ります。寝るだけなら自室で。誰の邪魔にもなりませんし」


 アディが起き上がろうとすれば、カリスにグッと左肩を押さえつけられた。


「寝るだけなら、ここでも構わないだろう?」


「恐れ多くて寝れません」


 カリスの手をアディが右手で掴めば、室内の気温がグッと冷えた気がする。

 ふるっとアディは身震いした。チリッと刺さるような手の痛みに、はたとアディは気づく。


「あれ、包帯……?」


「……覚えてなかったか」


 カリスがため息とともにそう吐き出す。その声には呆れが混じり、なぜか部屋の空気も和らいだ。

 けれど、アディにゾクリと別の悪寒が走る。

 魔力の流れを感じて視線を向けたら――。


「アーディ。《スリープ》」


「――っ?」


 満面の笑みをしたルナが、アディを見つめていた。


「いい夢見てね!」


 ルナのその藍色の瞳からは光が失われ、口元は弧を描いて笑っていた。

 以前の感情的な怒りとは別の、相当やってはいけない怒らせ方をしたらしい――ということを、抗えない眠気と同時にアディは理解した。


 ――なんで、なんだよ……。 




 ◇◆◇◆◇◆◇




「自分を大事にするように、魔法でも掛けたらいいのかな?」


 魔法で眠らせたアディを見つめて、ルナが真剣に言う。


「非効率だ。それに……それで、解決するならセレーヌスが試していると思うよ」


 支援魔法特化の次兄セレーヌス、そして魔法師団所属の長兄ロブルが、過保護な弟を守るためにと試していないとはカリス思えない。


 ――ルナには、感情論よりはっきりと示しておくか。


 カリスは膝を折って、ルナと目を合わせた。


「暗示にしろ、洗脳にしろ、術の善悪以前に罰則対象だからね、ダメだよ」


 正確には、表向きはだ。けれど、まだ若いルナは知らなくて良いことだろうと、カリスは判断した。


「……分かった。アディの傷、マーレに手当て頼んで来てもいい?」


 ルナはカリスの言葉に頷いて、立ち上がる。アディの血が滲んだ包帯をずっと気にしていた。


「ああ、記録も取れているから、もう完治でもいいと伝えておいてくれるかい?」


 音を立てずに出ていくルナの代わりに、カリスが部屋に残った。


 魔法師団から、模造剣の解析結果が先ほどカリスの元へと届いていた。

 本来は、耐久性を上げただけの模造剣。

 備品庫には、所持者の魔力があらかじめ設定された値に合致した時だけ爆発する模造剣が混ざっていたらしい。


 知識があれば可能な、物質への術式付与は比較的簡単だ。

 けれど、書き換えや看破となれば難易度はそのはね上がる。


 ――アディが、感覚で行うことが異常だからな。


 専門家でもなければ、極めようとしないだろう。

 結果的に、書き込まれた術式を読める者は少ない。

 学園でも、術式の中身までは誰も確認をしていなかった。


「アディが気づかなければ、ただの事故になっていた」


 学園から模造剣の話を依頼する時に、魔法師団の窓口は最初、爆発騒ぎを真に受けずに突き返したそうだ。

 訓練中に爆発したのなら、使用者が未熟者かそれだけ訓練が白熱していただけだと主張したのだ。


 が、今回そうではないのを多くの者が見ていた。再度、公爵家のウェルムが窓口となって行われた話し合いでは、彼が相当に煽ったと聞く。


『こちらでの選別は、二十五本中十本の異物が混ざっているのが確認されました。

 そちらで何本混ざっているか、再度一本目からご確認されるとよろしいでしょうと伝えていますので、解析は早いかと』


 言葉そのままに、ウェルムから報告が来た時は、さすがのカリスも声に出して笑ってしまった。


 さらにウェルムはこの解析結果が来た時も、学園にある訓練用、考査用、サークルで扱う剣、さらには剣に限らず備品の至る全てを、魔法師団のみで検品をするように返答したそうだ。


 確かに裏取りが必要ではあるのだが、ウェルムは期日を夏休みに固定し、全数を魔法師団にチェックさせるらしい。


 こちらに関しては時間をかければ、模造剣を用意した者、術式をかけた者、持ち込んだ者全て判明するだろう。


 浅慮な手口は、今のところユニタスを狙った三人だけ。これは扱いやすい学生ということで片付く。

 問題は、裏で手を引いた者もしくは入れ知恵をした者だった。


「私も今日は少し、出なければ行けないからな……。

念のためだ。《イージス・セルワータ》」


 カリスは部屋全体に、防御結界を展開する。

 設置して終わりではなく、常時魔力を送る継続型。

 少なくとも不在の間、浅慮な悪意は退けられることだろう。


 執務室だけでは、どうしてもカリスの仕事が回らない。

 アディのためにも外部を招き入れるわけにもいかなかった。

 夏休みに入った今、ルナもケレルも暇さえあればこの部屋で過ごしている。カリスが居なくても、守りは十分のはずだった。

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