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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

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第15話 食堂の席が空いててラッキー。なんて簡単にはいかないのか

「アディ」


 制服へと着替えたアディとユニタスが食堂で席を探していると、大好きな声が聞こえてきた。


「あれ? セレ兄さん?」


 アディが声のする方を嬉しそうに見ると、セレーヌスが四人掛けテーブルに一人、座っていた。

 すでに食事は終わっているのか、テーブルにはティーカップしかない。


「食堂で会うなんて珍しいですね?」


「アディの顔が見たくてね。ユニタス君、弟がいつも世話になってる。ありがとう」


 席を勧められ、アディは普通に座る。ユニタスの方を見ると、背筋を伸ばして立ったままだ。明らかに緊張をしている。


「いえ、生徒会長。私がいつもよくしていただいてますので」


「ユニタス。お前、敬語話せたのか」


 アディはユニタスに感心して、そう述べた。王子にもため口をだったから、無理だと思い込んでいたのかもしれない。


「アディは、俺をなんだと思ってるんだ!? 

 ……生徒会長だぞ! 敬意を払って当たり前だろうがっ」


 素で反論したユニタスは一度咳払いをして、コソリとアディに耳打ちしてきた。

 けれど、とても語調が強い。そんなに意気込まなくても聞こえている。


「いや、俺にとっても偉大で尊敬する兄さんだぞ?」


 アディはその緊張の意味が分からず、普通に返し、まぁ座れと席も勧めた。


「……アディは、なかなかに図太いな」


「褒めてないよな、それ」


 しぶしぶ、隣の椅子に座るユニタス。アディは応接室の一件から、雑に扱われているのを確信し半目になった。不本意過ぎる。


「アディが学園に馴染めているようでなによりだよ。さてメニューは決まったかな?

 取ってこさせるから、料理が来るまで君たちの話でも聞かせてほしい」


 人当たりの良い笑みを浮かべて、セレーヌスがメニュー表を広げた。


「セレ兄さん。俺、日替わりで」


「早っ! ……え、と。俺は……。俺も日替わりでお願いします!」


 即決のアディに驚き、ユニタスはそのまま選ぶのを諦め、アディと同じ日替わりを頼んだ。


「ユニタス。日替わりにハズレはないから安心しろ」


「いや、なんでお前が誇らしげなんだよ!」


「食堂のご飯が上手い、は大事だろ?」


 ――というか、前世並みに食事情が充実してホントに助かった。よくあるメシマズパターンだったら、正直キツイ。


 一応米文化もある上に、簡単な和食なら存在していた。

 食のホームシックにならずに済んで、アディが助かってるところである。

 ないと言えば、大豆の発酵や生魚を食す文化の方面。


「……いつか、刺身とかすき焼き食いたいよなぁ。探す、作る? いや、俺には似合わないなぁ」


 異世界ものの中では探したり、作ったりが定番だが、さてアディはどうするべきかと顎に手をやり、真剣に悩み始めた。


 ――わさびと醤油も欲しい。納豆も捨てがたい。


 物思いにふけり、小さくブツブツとアディは呟いている。その心の声が駄々漏れであった。


「アディ。さしみ、すきや? ……って、なにブツブツ言ってんの?」


 ユニタスは思わず問い返してみるが、アディから返事がない。

 セレーヌスは、そんなアディを愛おしげに見つめていた。


「……アディは本当に、食べることが好きだね」


「それはもう。一日三回は不可避な事象ですからね!」


 兄弟のいつものやり取りを、初めて目にしてユニタスはたじろいでいた。


「あー。これ確かにブラ――」


「で、アディ。授業を受けずに何をしていたのかな?」


 ユニタスの台詞に被せて、セレーヌスが口を開いた。

 ユニタスと目が合うと、セレーヌスはにこりと笑っている。

 ユニタスは背中にヒヤリとしたものを感じて、手で口を抑え黙って頷いた。


「……セレ兄さんは、どうしてそれを知ってるんですか?」


 リウィドゥスとのやり取りは、周囲に人がいなかった。授業中ということは、備品庫のチェックのことか、いつのことを指すにしても午前中のことだ。耳が早すぎる。


「親切な人が教えてくれてね。生徒会長として磐石な地位を築いているから、これも人徳かな?」


 ソーサーとティーカップを優雅に持ち、セレーヌスはコーヒーを飲んだ。

 セレーヌスが明言をしない時、何か裏がある証拠だった。

 貴族として食えない兄だと、アディはうすら寒くなる。


「……俺に、なんかついてます?」


「ん? 何かついているのかい?」


 アディが恐る恐る聞くと、セレーヌスはとぼけて見せた。親切心で詳細を教えるつもりは無いらしい。


 ――ま、護衛とか監視とかついてても、俺には分からないしな。


 身の回りの品は学園の支給品。クストス家関連は、眼鏡くらいだ。GPSなんて今世にないだろうし、とアディは考えてそれ以上の詮索を諦めた。

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