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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

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第14話 マーレの保健室出張所、みたいな看板を提げたらいいと思うんだよね

 アディが学園に復学してからも、昼休憩時のマーレによる健康チェックは恒例となって継続していた。


 ――もう、マーレ出張保健室で良くない?

 看板つけても良さそうだって。


 保健室は別にちゃんとあるのになと思いながら、部屋の前で立ち止まる。

 ガラリと開けた応接室で、アディは挨拶のように言った。


「マーレ。ユニタスを診てやって欲しいんだけどー?」


「……アディ君。次は何をやらかしたんですか」


 目ざとく二人の血痕へと視線を動かすと、呆れ顔でマーレは手招きをした。診てくれるそうだ。それにしても……。


 ――マーレ、いつも俺が何かをやらかした前提って酷くない?


 入るのを躊躇うユニタスの腕を掴み、ずかずかと進んで、マーレの向かいのソファへとアディは腰を下ろした。


「俺は、なにもしてないぞー」


「はいはい、アディ君の返事に期待はしてません。では、お二人とも手を出してくださいねー」


「え……?」


 マーレはアディを無視して、二人にそれぞれ手を差し出した。

 流されていたユニタスは、差し出された手にちょっと困惑気味だ。


「ユニタス、気にしなくていいぞ。マーレは回復魔法が使えるから、これで体調チェック出来るんだと」


「おおむねアディ君のいう通りです。元孤児、今は侯爵家の雇われの身で、気遣い無用ですよ~。怪しくないですよ~」


 それぞれがユニタスへの説明をすると、マーレは営業顔負けの笑顔で、自己紹介までしていた。


 ――マーレさん。悪徳商法ぽいよ、それ。


「あ、アディ君は今、失礼なこと考えましたね」


「気のせいです!」


 にょきっとその頭に角でも生えそうな圧をマーレから感じて、アディはバッと彼女の手を握る。


「はい。アディ君はアウトー」


「えー」


 全然懲りてないアディを放置し、にこりと微笑んだマーレは、ユニタスを見た。

 恐る恐るその手を握ったユニタスは、ちょっと顔が赤くなっている。


「あれ、お前ウブだな」


「……アディ、うるさいぞ!? お前はいつもこんなことしてんのかよ!」


 ニヤニヤとアディがユニタスをからかうと、青少年らしいツッコミをいただいた。


 ――そうだよなぁ。俺は慣れたからなぁ。


 遠慮したこともあるが、マーレがぐいぐい来るのだから仕方ないとアディにはいえる。深く考えては、いけないかもしれない。


「んー。彼、どこも悪くないですね? どうですか、調子は?」


「いや、それが俺にも何がなんだか……。

 アディがなんかする前は、倦怠感とかダルって、確かにあったんだけど……?」


 マーレとユニタスが、じいっと疑いの目でアディを見る。


 ――おかしい、良いことをしたはずだ。なんでそんな怪しい目で見てくる。


「アディ君。何してきたか、白状してくださいねぇ」


「ちょ、いた! 痛い! ちょっと、なにこの電気ビリビリは!?」


 アディは、握ったマーレの手から電気治療のような痛みを感じる。

 必死に離そうとするのだが、彼女の方は離す気がないようだ。


「ふ、ふ、ふ。私も成長するんですよ。懲りない人に、お仕置きが出来るくらいには!」


 ――それ、説明になってないから!


 二人握手をしたまま、バチバチと火花が散りそうな、にらみ合いになってしまった。


「アディ。ちゃんと説明してくれ? 俺は普通に、俺のことだから聞きたいんだけど」


「支援魔法の一種! 中級魔法が三つ、エネルギー量も豊富で、属性もバラバラでこっちに向かってきたの。

 ほら、うまそうだなって思ったらさ。有効活用したくなる、じゃん!

 回復魔法使えなくても、反転で応急措置くらい、ユニタスの回復に、使えるって思ってぇ!」


 アディが半ば大声で白状すれば、マーレのビリビリ攻撃からやっと介抱される。


 ――前世、ゲームと言えばドレインでSPもしくはHPの回復があるじゃんか!


 まだ違和感がありそうな手を、アディは涙目に見つめてさすった。


「あー。アディ君はまた、そんな常識外のことを。それだから、身体に負担がいってるんですよ。魔力の流れ、疲弊させてー」


「え。アディなんか無茶してたのか?」


「してない、してない。というか今日はもう使うこともない魔力、多めに使っても良いじゃないか」


 ――あ、噛んだ指も治ってる。


 さすった手が綺麗になり、電気ビリビリのお陰で腕回りも軽くなった。

 アディはそれに気付いて、マーレの技量に素直に感心する。


「で、その反転の支援魔法とやらは、何を想像してやりました?」


 調子が良くなったと肩を回して笑顔のアディに、マーレは呆れ顔で確認してきた。


「え? ユニタスが元気になりますようにって、当たり前だろ」


 魔法はイメージが大切なのだ。そこの結果を、アディは譲れなかった。

 迷いや躊躇いは、発動や効果を不十分にし、致命的な行為になるのだから。


「アディ君。反転させて、疲労込みで全回復って支援魔法とは言わないですよー?」


 呆れ顔から、さらに目が半目になって、マーレは棒読みになっていた。

 ユニタスは隣にいたはずなのに、ちょっとソファの端へと移動している、なぜ。


「俺の身体、無事?」


「あ、そこは多分心配いらないですよ。やり方がアレなだけで、結果はまともなので、アディ君て」


 ――俺の扱い、酷くない?


 ユニタスは、自分の身体をベタベタと触って何かを確認している。マーレがそれにフォローを入れているらしい。

 アディとしては、何か解せないと思った。


「アディ君。ほいほい負荷のかかる支援魔法なんか、使っちゃダメですよ?」


 止めとばかりに、マーレはアディに忠告してきた。


 ――俺、一応雇用主の子どもだぞ。


 耳半分で、アディはそれを聞き流した。

 やると決めたら、手段は選んでいられない。

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