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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

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第13話 面倒事はそれが好きそうな権力者に丸投げすると、だいたいイイ感じでまとめてくれるもんだって

 ユニタスと二人で廊下を歩くと、ルナが前方から突進してきた。アディのキュッと踏ん張った靴の音が辺りに響く。


「アディ! もう、置いていかないでよね」


「いや、そんなつもりないぞ?」


 減速なしで、ルナはアディの胸へと飛び込んできた。アディの剣も持って来てくれたらしい、片手に抱えていた。

 ただ、身体強化を掛けていてもその総重量が、アディにはちょっと重くて痛かった。

 けれどその可愛い仕草が微笑ましくて、ルナの頭を撫でてやる。


 ――弟が居たら、こんなのかなぁ。


 ルナを愛でていたら、やや遅れてカリスとフィデスも歩いてきた。アディと目が合うなり、カリスが低く問いかけてきた。


「アディ、ユニタス。君たちのその汚れはなにかな?」


「さあ、絵の具ですかね?」


 カリスに見つめられて、冷や汗をかくのはなぜだろうと思いながら、アディは条件反射で嘘をついていた。


 確かに、二人の白い体操服には、絵の具というには無理がある血の生々しい汚れがある。

 アディは、ユニタスを抱き上げた時についた赤が胸元に。

 ユニタスの方は、吐いた血を受け止めた手と首もとに赤がついていた。


 ――あれ? 別に、悪いことしてなくね?


 そしてふと、我に返る。アディにやましいことはないではないか。


「……絵の具だって?」


 普段と同じ物腰の柔らかい言い方ではあると思うのだが、カリスのその目が全く笑っていない。

 周囲の温度がぐっと冷えた気がして、アディは目を反らした。


 ――やべ、返事ミスったー!


 実技後の授業は、カリスの選別指示で免除だったが、ユニタスのことでは完全にアディの無断欠席である。

 そもそも、選別の報告もルナに任せっきりだった。カリスを怒らせる前に、素直に説明をするべきだったと後悔する。


「カリス、アディは俺の用に付き合ってくれただけだ、あまり苛めるなよ」


 そんなアディに、ユニタスが間に入ってくれた。思わず期待の眼差しで彼を見てしまった。


 ――救世主か!


 あまり関わりのない印象の二人だが、カリスへの気安い態度に、ユニタスは前期組なんだなぁとアディはしみじみと思う。

 後期入学のアディは未だ、カリス、ウェルムには、一方的に線を引いて接しているからだ。


「そうそう! カリス様、向こうで呆けている先輩方三人の介抱を、頼んでも良いですか?」


「……アディは、私をなんだと思ってるのかな?」


 アディが思い出して、リウィドゥスのことを告げ口して話題を変える。

 本来は放っておくつもりだった。せっかくカリスが通りかかったのなら、全力で押しつけてしまおう。


「え? カリス様と、あとウェル様も噛んでますよね。それに先生方にとっても良いお土産だと思いますよ。

 だって先輩、"模造剣を破損するような未熟者には、危険性を指導してやらねばならない"って言ってましたから」


「アディ。それ、受けたのか?」


 黙っていたフィデスがぐいっと距離を詰めて、興味津々で聞いてくる。

 こと物理の揉め事に関しては、好きそうだなとは思っていた。

 さすがにあからさまな反応過ぎて、アディは吹き出した。フィデスにもったいぶった返事をする。


「有意義だったかなぁ。技を試すために、胸をお借り出来たし」


「え、なに。なんだそれ、詳しく!」


「フィデス。先に、先輩方に聞きに行こうか。二人がお世話になったみたいだから、私からも丁重に、もてなす必要がありそうだ」


 フィデスは目をキラキラと輝かせていた。そのかなり食い気味のフィデスの肩を、カリスが掴む。

 それはそれは、とても悪い顔をカリスはしていた。口許に隠しきれない笑みが見える。


 ――リウィドゥス先輩方、御愁傷様。


 俺は心の中で合掌する。自業自得ではあるが、喧嘩を売る相手を間違えすぎだ。

 侯爵家次期当主なら乗り越えるべき壁だろうと、エールを送っておく。


「カリス、俺はアディに……!」


「アディは、寮でも聞けるからね。今はその先輩方とやらに、話を聞きに行くのが先だよ。フィデス、逃がしたらお仕置きだよ?」


 カリスがアディたちが来た方へと歩いていき、それにしぶしぶフィデスがついていった。


「はい、アディ。忘れ物だよ。また後でね」


 ルナが、剣をアディへと手渡してくれた。アディは意外でルナへと訊ねる。


「あれ、ルナはカリスについていくのか?」


「うん。僕もちょっと、用が出来たからね!」


 ルナは小悪魔的に人差し指を口に当て、あざとく笑ってウインクした。

 なぜだか分からないが、機嫌良くカリスの後を追っていった。


 ――なんか怖いけど、考えないようにしよ。


 アディは疑問をそっと胸にしまって、ユニタスとともにマーレのいる応接室へと向かった。

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