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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

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第12話 知的好奇心が勝りました。そうなるともう試すしかない。

「《プロヴォーク》」


 カチリ。欠けたピースが埋まるように、それは当然として起こった。


「――ご期待にそえようかぁ!」


 三人の形相が瞬く間に憤怒へと変わる。アディが不意を突いたとはいえ、術のかかりやすさや反応が、そこらの子どもと同じではないかと冷静に思う。


「……ユニタス、悪い」


 ユニタスへ謝りつつ、身体強化で横抱きにさせてもらった。

 以前、ルナにしたように肩に担ぐのは、背も体格も劣るためアディには無理だ。

 これで万が一の場合、回避も逃走もしやすいと前をじっと見た。


「《ボルト》」


「《ゲイル》」


「《フレイム!》」


 ――へえ。全員、詠唱短縮の中級か。


 感情的に放たれた魔法は、一応形を保っていた。

 仮にも上級生ということだろう。それが発動が遅くて、無駄が多く精度が低いとしても。脳筋のフィデスの初級より、目の前の魔法が劣るとしても、だ。


 ――せっかくだ、利用させてもらおうか。


 支援魔法でヘイトをアディへと向けたわけだが、あまりのチョロさに毒気が抜かれる。

 攻撃魔法をエネルギーとして捉えて、アディはイメージを固める。


「《コンバート・ヴァイタライズ》」


 アディは、相手に掛けたヘイトごと、三種の攻撃魔法を目の前で吸収し、そのままユニタスへと魔法を変換し注いだ。


「「「……は?」」」


 放った魔法が無かったことになって、彼らは驚いたことだろう。

 アディの詠唱に対して、三者異口同音の間抜けな台詞が聞こえた。


 ユニタスの魔力の流れにおかしなところがないか、アディはじっと見て確認する。


 ――うまくいったみたいだな。


 視線を前へと戻せば、全員が地面にへたり込んでいた。

 三人とも綺麗にポカンと口まで開いて、ただ呆然としていた。

 まさに滑稽の一言に尽きる光景だろう。


「先輩方、校舎内での攻撃魔法は危険ですよ。これ以上は、問題になってしまいます。指導は適切な場所が望ましいかと。

 私なら、いつでもお引き受けしますので。今後は、お相手を間違えませんようにお願いいたします」


 余裕の微笑みでアディが告げれば、顔を真っ赤にしてリウィドゥスたちは、アディを見上げてくる。怒りか、羞恥か、あるいはどちらもか。

 

 ――これで上級生とはなぁ。ま、支援魔法。コイツらは習いそうにないし。何されたか、分からねぇだろ?


 アディにとっては低コストで、相性の良い支援魔法。前世のゲーム感覚で言うなら、あって当然のカテゴリーだ。

 しかも詠唱とイメージ力さえあれば、他ゲームの魔法も転用出来たりした。

 乙女ゲームをよく覚えてなくても、アディが過ごせる理由の一つだった。


 けれど、この世界では他者に影響を与える魔法は、それなりに慎重かつ厳正に扱われている。

 支援魔法を習うのは、高学年の上位クラスだけという徹底ぷりだった。


 ――まぁ、薬も過ぎたれば毒だしなぁ。


 人体の害にならないよう、支援魔法は精密な魔法コントロールが必要なのだ。


 攻略対象の支援魔法の使い手、兄セレーヌス。チュートリアルのサポートキャラのアディウートル。

 総じてクストス家は、これに長けている傾向があった。

 初期強化に使われる消費キャラにだって、ちゃんと由来があるのだった。


「アディ、お前……」


 ユニタスも、自身の変化に驚いているらしい。その様子からちゃんと成功して何よりだと、アディは満足そうににんまりと笑う。

 《コンバート》や《ドレイン》などは、相手がいて初めて使える魔法。アディは実は初使用だった。


 ――セレ兄さんには、授業範囲でって言われたけど。ここ、非公式だから良いよな?


 相手も、わざわざ言いふらしたりはしないだろう。さらに自身の格を下げるだけなのだから。


 バタバタと遠くから駆けつけてくる気配も感じて、アディはリウィドゥスたちへと挨拶をする。


「では、昼休憩が始まってしまうので失礼しますね」


 アディは今度は下級生らしく、申し訳なさそうな笑顔を向けた。挑発的な態度を止めて、思考を切り替える。

 リウィドゥスたちの横を通り抜け、マーレが待つ応接室へとアディは向かった。


 ――成長期の男児。お昼は抜けないって。


 三人が見えなくなって、ユニタスがアディの腕から飛び降りた。


「アディ! 俺はもう良いから、いつまで抱いてんだよ。恥ずかしいわ!」


「お、元気そうでよかったな」


「お、じゃねぇよ! 一人で何しに来てんだよ!」


 アディがユニタスを見て、何もなかったように言う。それに、彼はギャンと吠えてきた。耳まで赤くなっていて逆に面白い。


「いやだって、授業始まってるのに教室にいないからさー。そりゃ気になるって」


 アディは廊下を歩きながら、ユニタスへもっともらしいことを言った。


「だからって、相手は上級生の侯爵家長男だぞ! それをアディ、お前は!」


「ユニタス、俺も侯爵家三男だぞ。元気そうだけど、俺の主治医に見てもらうから、ついてこいな?」


 晴れやかに権力をちらつかせ笑ったアディに、ユニタスはぐっと押し黙って隣を歩いた。


「……サンキューな」


「クラスメイトだろ、当然じゃん」


 そっぽを向いて礼を言うユニタスに、アディはただ笑うのだった。

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