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【四章完結】乙女ゲームのサポキャラ転生、チュートリアルで消える強化素材のはずが――いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
五章 冬休み突入編。

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第9話 今の俺は、いったいなんなのだろうか

「――さて、今いる村からかなり距離があるようだけど、どうするかな。そもそも、なぜそんなところに人がいる?」


「ああ、ケモノにおわれて、にげてるうちにおくへ行ったみたいだねぇ。スへとゆうどうされてたんじゃないかな」


 カリスの一人言に、クロがあっちと方角を指して混ざった。

 クロと二人の留守番。周辺にゴブリンがいるかもしれない村。当然、カリスもイージスを掛け、索敵で周囲を警戒していた。

 が、カリスには襲われる村人が見えなかった。つまりクロはそれより広範囲で、また見ていたということだろう。


 ――叱るべきなのか悩ましいな。


 人命と常識の範囲を天秤にかけなければならないなど、どうかしている。普通なら、よくやったと褒める場面だろう。

 だが、クロにとっては簡単にロブルの約束とで秤にかけてしまうのだ。


『カリス、これ、わるいこと?』


 何と何を秤にかけたことへの問いなのか、聞くのが恐ろしいとさえカリスは思った。その前の会話の内容が内容だけに、だ。


「巣に誘導……。クロ、いつから気づいていた?」


「セレ兄さんがかこまれかけて、まほうでシとめはじめたのを見たとき。ついでに見えただけだよ?」


「……巣が近いのかい?」


「ほうがくがそうなだけ、あそこからでも歩きだと、まだきょりはあるよ」


 カリスが諦めて聞けば、クロはさらりと答えた。巣の位置まで、もう正確に把握しているらしい。


「ふぅ……なら、馬は的になるだけか。その村人の場所まで、クロを抱えても良いかな?」


「ぼく、はしれるけど?」


「単純に走るとなれば別だよ。クロはモンスターが見えても、茂みの虫や植物にまで気が回らないだろう? かぶれたり、爛れたりするといけないから、ほら」


 カリスは説明しながらクロを抱き上げると、村を囲うようにイージスを展開する。

 馬を守るついでだ。同時に、カリスたちが村から離れるという、クストス兄弟へのサインでもある。


「なんでさぁ、そんなにまわりくどいことするの?」


「回りくどい?」


「だって、このあたりのモンスターをぜんめつさせればいいだけ、だよねぇ?」


 カリスが駆け出したところで、抱えられたクロが不満気な声でぼやいた。


「……ニンゲンってほんとうに、こむずかしいことばっかり」


「クロ……?」


 ザワッと、クロの纏う空気が変わる。冷たく異常な魔力がカリスの肌を撫で上げ、鳥肌が立った。クロを凝視して、カリスは思わず足が止まる。


「《インフェルノ・ホーミングショット》」


 クロの口から、幼子とは思えない低い声が紡がれた。身体強化を掛けたカリスの耳に、多方面からの断末魔が幾つも聞こえ、そして途絶える。


 ――いったい、何が……。


 カリスはクロを驚愕の眼差しで見つめた。周囲では、数十の黒煙が立ち上っている。

 唐突に夏休みの光のダンジョンの光景が、脳裏に甦った。アディを追いかけた先で見た一層で、関節を毒で貫かれ、動かなくなったモンスターの大群。


 ――魔法の難易度に左右されない同時発動は、アディの得意とするところだ。


 一学期の追試で、アディが自らそう言っていたからだ。さらに先日の夜営時、ロブルは言った。過去に大量のモンスターの不審死があった――と、恐らくは神童がやったのだろうと、クロの遠隔による魔法行使を見て結論付けたのだ。 


 ――上級の火魔法を同時展開、しかも遠隔。実際に目の当たりにすると、異常どころじゃないな。


 見えもしない離れたモンスターに直接狙って撃ったと、状況を繋ぎ合わせて強引に理解し――クロを下ろすと、カリスは肩を掴んだ。


「クロ、それはやりすぎだ。身体に異常は!?」


「なんで? ちゃんとモンスターだけをツイビしたから、森へ火はうつらないし。セレ兄さんたちと兄上のほうには手をだしてない。モンスターも発火によるタンカ(炭化)で、シガイものこらなければ、フハイもエキビョウのしんぱいもいらないよ。ニンゲンへのヒガイも、これでおわりだよね?」


 カリスの形相に、心底分からないと驚いたクロが怪訝な顔をする。

 その様子から身体に負荷は無いのだなとカリスは、ホッとした。


「……だが、そうじゃない。そうじゃないんだ、クロ」


 アディはずっと、目立つことも人から外れることさえも恐れていた。

 神童でさえ、王都での乱闘騒ぎでは手加減をしていた。騒ぎにならなかっただけでなく、精神操作された生徒たちに打撲傷はあれど重傷者はおらず、建物なども破壊されていなかったからだ。


 ――だが、クロは……。


「もぉ。カリスもむずかしいこというの? 兄上たちがここに来たいって言わなかったら、村のニンゲン、モンスターのエジキだったよ? さっきだって、なにもしなかったらニンゲンが一人シんでたよね? なんでダメなの?」


「クロ。お前は、アディとも神童とも違うな。人であろうとはしていないのか……」


「カリス、へんなの。ぼくはそもそもニンゲンじゃないじゃないか。カリスたちとはちがうんだから」


 クロの平然と言いきる内容に、カリスは瞠目する。息を呑んで、肩を掴んだ手の震えを殺した。


「いいや、クロ。お前は、人なんだよ……」


 行いが正しい反面、紙一重でも違えれば、国が危惧した生物兵器そのものでしかなかった。


 ――まさか、アディウートル・クストスや神童の前世という個が無いだけで、クロは正しく自分の状態を理解しているのか?


 見た目に引きずられていたのは、周りだけだったのかとカリスは痛感した。

 言動の幼さに合わせた見た目に変えたのは、あくまでも神童で、クロは幼くはないのかもしれなかった。

いつもお読みくださりありがとうございます!

本作品50万字突破&なろう、カクヨムで合計200ブクマ突破記念にSSを書きたいです。

今回はブクマ記念も兼ねてなので、読者様の読んでみたいを形にしてみてぇ!と、ゆる募させてもらっても良いでしょうか!?


コメント欄で、ネタをお待ちしてます( *´艸`)

高校生とか大人になったとかの未来話に関して、本作と齟齬、ネタバレが出たらまずいので、そこだけは採用不可ですみません。


また、ブクマや評価、リアクションやコメント、いつも目を通して、にやにやとさせてもらってます。

本当にもう、ご馳走さまです!!(人´∀`*)

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