表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
三章 学園混沌編 ヒロイン登場ってマジなの!?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/116

第13話 何やっても周りから浮くから、馴染むのはもう諦めるか

 アディの放った蒼炎は炎槍を喰らい、そのまま男の横を掠めて消えた。


「は……?」


 生み出した炎の熱が消え、不快感を隠さず眉間に皺を寄せたアディは男を睥睨(へいげい)する。

 左手に剣を、右手に魔法の発動をちらつかせ、呆然とする男へと歩を進めた。


「まだ、やりますか?」


 たらりと汗を伝わせ固まる男の目の前に立ち、アディは冷酷に口許を歪め嗤った。

 魔力が揺れ――その瞳が、眼鏡越しにキラリと光を纏っていた。


「あ……なっ……」


 近くで見れば髪が焦げ、男の頬に火傷が出来ていた。それを気にする様子はなく、みっともなくわなわなと震えている。

 戦意がないならと、男の横へと剣を突き立てて返し、アディはくるりと背を向けた。


「……うわぁ、ちょ、目が光ってる。やば、やっぱおかしいじゃん、アイツ」


 観衆の誰かが、何かを呟いた。アディが黙って目を向ければ、バッと視線を外された。


「見ろよ、アイツ。ちょっと強いからっていつも威張ってんのに、調子に乗って負けてやんの」


「でも、中級を上回ってたよな。なんだったんだ、あれ? 小さくて見えなかったんだけど」


 一人が呟けば、口々に言いつのる声が重なりあった。雑音でしかない、ただの音の集まりだった。

 アディは部屋に戻ろうと、人の輪から出て歩きだす。 


「啖呵切ったくせに、なにアレ。カッコ悪い」


「はぁ、最初のはなんだったんだよ。手抜きしやがって」


「それよりさ。見た目、暗いくせしてやるなぁ」


 ――魔法師団所属っても、人間か。くだらないな。


 ユースティス、ロブル、将来はルナも所属する魔法分野におけるエリート集団のはずなのに、学園と変わらない評価にアディは失望の念を抱いていた。


「つかあの眼さ、気持ち悪くね?」


 ドクンと、胸がざわついた。アディは拳をぎゅっと握りしめ、その場を歩き去った。

 ユーストゥスは知識だけで、魔眼だと言いきった。自身の目だとは言え、アディは鑑定で見てやっと自覚したのにもかかわらず、だ。対する彼らは魔法のエキスパートだが、その思考へ至らないらしい。


 ――まぁ、良いや。疲れた。


 サボりだと思ったのは、絡んできた一人だけなのか。それともこれ以上、関わらない方がいいと判断したのか。

 アディを呼び止める者も、また居なかった。

 目に手をかざして、アディは少しだけ思案する。魔力が漏れたことなど、数えるほどしかなかったはずだと。


「――っ」


 不意に、ぐにゃりとアディの視界が歪んだ。足元がおぼつかなくなり、立ち止まる。


 ビー。


【異常感知、規定値不足】


 ビー。


 エラー音と共に、アディの頭に直接電子音が流れた。

 一瞬、視界が暗転する。ぐらりと傾いた身体を、誰かが受け止めた。


 ビー。


【異常感知、状態優先】


「――う、るさ」


 言い終わる前に、アディの意識が落ちた。




 ◇◆◇◆◇◆◇




「病み上がりの自覚を、どうして持たないかな」


 ロブルは気を失ったアディを軽々と抱え、近くのベンチへと寝かせた。羽織っていた上着を、布団代わりにアディの上へ掛ける。

 しっかりと規則的な寝息に、ただ眠っているだけだとロブルは安堵の息つく。


「――さて、君たち知らないか? どうして一般人の彼がこんなに薄汚れているのか。そして、君たちの指導員はどこだ?」


 ロブルは演習場へ向かって歩き、たじろぐ集団に声を発した。冷え冷えとした響きがそのまま周囲に、動けないよう圧をかけている。

 男の一人が、おずおずと手を上げ口を開いた。


「……怪我人を、救護棟へ」


「なるほど。指導員が居ない僅かな時間さえ、統率が取れないか。今年の質は一段と悪いらしい。いや、若さ溢れる活力が満ちていると言うべきか?

 せっかくだ。一人、一人、丁寧に聞くことにしよう。話す気もなければ、余力が有り余っているようだからな」


「おい、さっき一般人って……」


「いや、それよりあの髪色。まさか」


「馬鹿、首の階級章見ろよ。あの人は――」


 濃紺の団服、その襟の階級証をコツンと指を指して、ロブルは残忍に笑う。

 それを見た何人かが、血の気の引いた顔で青ざめた。


「六番隊小隊長、ロブル・クストスだ。さっきの学園の生徒は、アディウートル・クストス、私の弟にあたる。

 魔法師団の団員ではない、まだ学生だ。調査中の案件で、師団長が直々に保護していてね」


 演習場全体を覆う結界を張り、一人も逃がさないとでもいうように、ロブルは腰の剣を引き抜いた。

 その静かな殺気に、誰もそれ以上口を開くことが出来なかった。


「今後も姿を見かけることがあるだろう。よろしく頼む――と言いたいが、また、こんなことがあってはいけないな。

 一学生にも遅れを取る、貴君らの実力では、この先の任務は到底こなせないな。恥ずべき己を嘆き励みなさい。その為の手ほどきはしてあげよう――その後全員、始末書だ」


 戻ってきた指導員含め、ロブルが全員を地面に這いつくばらすのに、そう時間はかからなかった。

 翌日にはアディの元に、ユーストゥス個人の物とは別、ロブルが用意した正式な身分証が届いた。


 また新入団員達へは、しばらく魔法師団内で冷めた目が突き刺さることとなり、訓練の風当たりが強くなったそうだ。


 いずれにしろ、それはアディの預かり知らぬ話だったが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ