第10話 おかしいなぁ、攻略キャラより強いとか言われてる気がする
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さて、ユーストゥス回完です。周りが過保護しか居ないな……(笑)
「そっかぁ。君の方で解決出来ないのなら、魔法が効かないことを念頭に行動しなきゃいけないよ。怪我、治せないんだからね?
今後は、単身突っ込む前に連絡がほしいかなぁ。――ってことで、はい。コレ」
そういってユーストゥスは、懐からカードのようなものを出してアディに渡す。
硬質な素材で出来たそれは、紺に白のラインが斜めに入り、角に魔法師団のマークが入っていた。
「……これは?」
「魔法師団棟内なら、仮の身分証になるよ。
で、これ改造してあってね。国内どこでも僕への直通のパス。
近ければ双方向。長距離だとそうだなぁ、一方通行にはなるけど短い文なら他国だろうと音声を送れるね。まぁ、呼び出し機能として使ってよ」
――いやそれ、ひょいって出すもんじゃないだろ、絶対!
半ば強引に持たされたカードに、アディは顔をひきつらせた。
魔術師団長を個別に呼び出しなど、平凡思想のアディは使いたくないの一択である。
その空気を察してか、ユースティスが追い討ちをかけた。
「君に関しては表立って功績をあげない決まりだから、これくらいは受け取ってほしいかなぁ。
先日のダンジョン発見以外にも、以前から国内のダンジョン総数把握、管理に多大な貢献を上げてるんだよ?
細々としたものはキリがないし。クストス家、特に君はすでに、国の四大公爵家全てに恩を売っている状態だもん。あれ、自覚なし?」
嫌な予感がして、アディは冷や汗をかく。
先日のダンジョン、追いかけてきたメンツを改めて思い出した。
攻略対象キャラは分かるが、あの中にそれと無関係な長兄ロブルがいた。魔術師団所属の小隊長で忙しいはずの人が、だ。
そして、目の前にいるのは公爵家当主であり、魔術師団長。国のトップ勢である。
「……俺、何もしてませんよね?」
今になって神童と呼ばれた時期にゲームの詳細を覚えていて、何かをやらかしていたと知ることになるとは、それはまるで……。
――なんだよ、もう完全に黒歴史じゃねえか。
ここがゲームだとハッキリ自覚したのは、アディが眼鏡をかけた七歳の時だったはず。
そこは変わらないと信じたかったのに、希望が空しく砕けていくのをアディは感じていた。
「入学前の君は、確かに大人しかったねぇ。でも、ロブル君が幼い君との会話を記録してるみたいで、今も役立ってるよ?
ヴェネラティオ公爵家を例に上げるなら、僕の妻は息災だからさ」
――そして、兄よ。弟との会話を記録しないでほしい。
ユーストゥスの妻と言われ、アディは一瞬考えた。
どういうことだろうかと小首を捻るも、アディの中ではピンとくるものがない。
「忘れちゃった? ルナを出産する際、僕が妻の元に居れば助けられると助言しただろう。まぁそれを妻に伝えに来たのは、クストス夫人だけどね。
パスはその時作った副産物だよ。連絡を受けて、転移したから間に合ったんだ」
そう説明を受けて、アディはようやくゲーム設定を思い出した。設定上のルナは、一人っ子で父子家庭。
出産予定日が大幅に早まったその日、ユーストゥスは緊急の討伐任務の指揮で運悪く出掛けていた。
国一番の魔法の使い手の彼が居れば、母子二人とも助かったかもしれない。
けれど実際は不在で、ルナだけが助かったという経緯だ。
――不運が重なったんだけど、ユースティスとルナの魔力量の多さが、そもそもの早産の原因だったはず。
後の乙女ゲームで、それが攻略ルートとなっていた。ルナとユーストゥスのすれ違いを、ヒロインが助けるのだ。
周りとのコンプレックスも父との確執も乗り越えて、ルナは魔法剣士として成功を遂げる。
――ルナ、クールキャラというか、元は闇堕ちキャラだったんだよな。
アディの助言なんていう不確定要素だけで、身重の妻に常に寄り添えるほどユースティスの地位は高くも低くもなかったのだろう。信じたことにも驚きだ。
そして彼がいくら強かろうと、相手もそうとは限らない。だからこそ、相手の不足を補える連絡用の魔道具を作るに至ったはず。
――副産物って、ちゃちゃっとヤベェ魔道具作る時点で天才だっつの。
ゲームには、便利な通信機器など出てきていなかった。ユースティス自身が設定を超えて運命を変えた証拠だった。
なぜなら息災ということは、生きているということだから。
「君に借りもあるから、その後の誘拐事件で初動から僕が動いていた。
ふふ、君の前世や予知がどう働いてるのか、実に興味深いよね。
普通は自分の身を守るため、誘拐を予知するものだろうに、君は他者の未来を見るばかりだからさ」
――それは俺が、ただのサポキャラ、消費キャラで、ルナやケレルは攻略対象だから。
予知ではなくゲーム知識だ、と言いかけてアディはすぐに止める。まるで誘導尋問のようだと感じていた。
「……小さい時のことは、よく覚えてません」
アディは代わりにそう答えておく。ユーストゥスは面白そうに笑うばかりだ。
――でも、そうか。ルナの母は生きてるのか。
その事に実感が沸いてきて、アディはちょっと嬉しくなった。自然と目元が緩む。誰かの大切な人が亡くなるのは、悲しいことだ。
「固有魔法は癖が強いからね、それも仕方ないさ。
で、回復魔法も無効の君に怪我を負わせたくないと、殿下がピアスにイージスを込めてるんだけど、要る?」
「はい?」
――カリス様がなんだって?
「国宝レベルだし、くれるならもらっとけばいいと思うよ。危なっかしい君には心許ないけど」
「俺、別に……」
先ほどとは明らかに違った意味の危なっかしいという表現の仕方に、アディは否定を述べる。
他者の魔力を弾くだけなら、アディ自身で自己防衛すれば良いだけだ。
「今、ダンジョンを単騎で潰せるとしたら、規模にもよるけど。
僕と騎士団長、宰相、国王、王弟辺りかな。ああ、君も肩、並べてるからね?」
「俺、後先考えずの片道だけですから、並べないで下さい」
国家的にヤバイ人たちと並べないでほしい。そう切実に、アディは願った。
捨て身で行くのと、行って帰ってくるのとでは雲泥の差があるではないか。
「片道なら、各副団長クラスと……ああ、ロブル君も入るかな。じゃあ今度は僕を呼べるから、君の場合は片道でも帰ってこれるね、僕と同列で良いんじゃない?」
にこりと笑って優しくいうユーストゥスだが、目は全く笑っていない。
呼べと、無言の圧がそこにあるような気がした。
――全然、良くねぇ。




