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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
三章 学園混沌編 ヒロイン登場ってマジなの!?

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第6話 何よりも驚いたのは、そのステータスの文字化け具合

 いい匂いがする。ふわりと香った花の香りに、アディは目を開けた。

 なんだか、かなり長く寝ていた気がする。


【魔術師団棟の天井】

 防御魔法が付与された天井。石造り。


「……魔術、師団?」


 視界に見えた文字を見て、アディは呆然と瞬きを繰り返した。この表示はなんだろう。なぜ、こんなところに居るのかと戸惑った。

 訝しげに眉を寄せて注視するも、目に映るその表示は変わらなかった。


 ――俺、関係ないよな?


 確か、長兄ロブルの勤め先ではあるがそれだけだ。

 アディはそもそも、何をしていたのだったかと我が身を振り返る。起き上がろうとするも全身が重たく、なんとか片手を上げた。


【アディウートル・クストス】

 クストス家、三男。男。十四歳。得意属性、□□□。固有魔法、魔眼(魔力視、鑑定)。ダンジョンコア保有(ダンジョン同期中)。□□□。□□□□。□□□□。


「……固有、魔法?」


 掠れた声が口から漏れて、アディはステータスを見つめた。見える文字は鑑定結果だと理解は出来たが、その表示に思わず首を捻る。


 ――文字化けが多すぎないか?


 さらに乙女ゲームのキャラ特性で単に目が良いと思っていたら、アディの目は固有魔法の扱いなのかと知って驚いた。


「帰って、きたんだな……」


 ダンジョンコアという単語を皮切りに、おぼろ気だった記憶が甦る。あれは夢じゃないと思い出した。

 そう、最初は夢を見たのが始まりだった。今までアディとして生きて、そんなことはなかったはずなのに、突然ゲームを連想させる内容だった。


 タイミングは違えど、夏休みの分岐ルート、ケレルのバッドエンドだと気がついて、アディは飛び出した。

 未発見のダンジョンのモンスターを殲滅せず無力化を目的に淡々とこなし、六階層から先の記憶がなく、気づいたら八階層だった。


 ――ボスとか、誰が倒したんだ?


 誰かが、後を追いかけてくるとは思っていた。ダンジョン発見と事後処理を頼みたかったから、それはいい。けれど、気づいたら隣にケレルが居た。


 ――結構、好きに荒らしてた気がするから、それで下層まで辿り着けるって、さすが攻略対象キャラだよなぁ。


 出口を探そうとして、ダンジョンコアがアディの中へと入ってきた。その過程で、ケレルだけではなく、アディのよく知る面々が来ていることを知った。

 アディはコアを受け入れて、意識が途切れる前にセレーヌスと合流したのだ。


「……うん。覚えてる」


 身体が動かしにくいと身体強化をかけて、アディはなんとか起き上がる。

 部屋には荷物置きだろうか、クローゼットと椅子が二脚とテーブル。

 ベッドのすぐ横にもサイドテーブルと椅子があった。そこそこ広い部屋だ。


「マジで、どこだよ……」


 良い香りと寝起きに思ったのは、サイドテーブルに飾られた花だった。隣に水差しとコップがあったので、ありがたく頂戴して喉を潤した。


 ――あー。目が、チカチカする。


 とりあえず視界が文字でごちゃごちゃしていて、非常に見づらい。

 魔法ならオンオフ出来ても良いはずなのに、こうも視界がうるさいとはどういうことだろうか。

 ステータスもどきの文字化けといい、アディの制御下になさそうだった。


「あー……」


 アディは両手で目を覆って、視界を暗転させる。落ち着かない、どうしたものか。

 アディの魔眼にあったのは、魔力視と鑑定表だ。元々あったのが魔力視だろう。

 その視界よりも、今がはるかにうるさい状態だ。


 ――まさか、慣れなのか!? これ、慣れるのか!?


 アディは普段から魔力の流れは見えていたが、意識して視る場合はさらに、サーモグラフィのように詳細に見えていた。

 その魔力視のように、強弱くらいはつけれるように今後なれるのだろうか。


「アディ君!? どうしたんですか!」


「……え、マーレ?」


 アディが背を丸め唸っていたら、マーレの慌てた声が聞こえた。

 アディが手を離して、マーレの方を見る。


【マーレ】

 魔術師団所属、回復魔法師。女。十八歳。


「え、魔法師団所属? はぁ、十八歳!?」


 見えた文字を読み上げ、アディは驚愕する。突っ込みどころが満載の情報しかなかった。マーレは孤児で、クストス家の雇用ではなかったのか。しかも――。


 ――四歳も年上!?


 なんとなく、アディより年上だろうと思っていた。けれど、セレーヌスより年上とは予想外である。


「マー……むぐぅ!」


「アディ君? 熱が下がって良かったですぅ。ずいぶんと、お、元、気、そう、で?」


 ――そうだ、年齢に触れたら怒るんだった。


 頬をピクピクと痙攣させて、怒り心頭といった具合の笑顔が怖いマーレに、アディは口を塞がれる。


「ふぐ、むむぅ!」


 ――はな、鼻! 呼吸も止まるから!!


 酸欠になるとばかりに、アディはバシバシと手を叩いて抗議を試みる。

 うるうると涙目でアディが見つめれば、マーレがようやく解放してくれた。


「はぁ。アディ君、周りの気も知らないで。状況、分かってるんですか?」


「あの。マ――」


 ぶすぅと頬を膨らませ、呆れた口調でマーレは言う。けれど語尾が震え、慈しむように彼女は顔を崩すとアディをそっと抱き寄せた。


「本当に、もう。心配したんですよ? ……お帰りなさい、アーちゃん」


「……うん、ただいま。マーレお姉ちゃん」


 いつもなら驚いて、アディが拒否を示すその行為。

 声だけでなく、マーレの抱き寄せる腕も微かに震えているのに気づいて、アディは抱擁を快く受け入れた。

 過去の遊び相手だった頃の呼び名で呼んだ方が、今は良いとアディは目を閉じて思った。

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