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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
三章 学園混沌編 ヒロイン登場ってマジなの!?

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第7話 ダンジョンコアは、玉手箱の一種なのかどうかについて

「……アディ君、ちょっと話とか出来そうですか?」


 軽く触診と問診をしたマーレが、アディに話を切り出した。


「え? 今、普通に話してるよな?」


 まだどこかおかしいかと、アディは身の回りを振り返る。視界がおかしいのは、言っても仕方ないので置いておこう。

 ちなみにもう大丈夫だとアディがいくら言っても、マーレは動くなの一点張りでベッドに固定されていた。


「……今が何日か分かってないですよね、アディ君。ダンジョン帰りの馬車で一週間、ここの部屋に来て一週間、ずっと寝てましたからね?」


 ぷくうとむくれて話をしながら、マーレは部屋の外へと何かを行った。

 アディはそれを壁越しに、魔力視の方で認識した。


「え? あれから二週間経ったの?」


 それは確かによく寝たなと、きょとんとしてアディは聞き返す。


「さ、ら、に、寝てるのか起きてるのか分からない状態を二週間、の合計四週間ですよ!

 すんごく、すんごく心配したんですからね!」


 アディの様子に呆れはて、くわっと牙を剥きマーレはやけくそ気味に叫んでいる。


 ――約一ヶ月、寝たきりのわりには、身体は特になんともないような?


 何かの冗談か、浦島太郎なのかと言いたいところをぐっとアディは堪える。

 涙目になるのを必死で隠しているマーレの様子からして、そんなことを言えば、アディに雷どころではなさそうだ。


「それはまぁなんというか、心配をおかけしました……?」


 アディは手で目を押さえて揉んで、視線を外した。

 余計なものが見えすぎるせいで、口まで余計なことを言いそうだった。


 ――目が痛い。


「アディくーん?」


 剣呑な雰囲気を出して、スッと目を細めたマーレ。その目が据わっている。

 今日はもう何をしても怒られる未来しか、アディにはなさそうだ。


「……そういえばマーレ、クストス家に雇われた回復魔法師じゃあなかったの?」


 彼女が着ている服は、魔法師団の非戦闘員が着る白を基調とした団服だった。ゲームには出てこないが、ロブルが所属しているので、今世の知識としてアディは知っていた。

 鑑定眼でこの場所が魔法師団棟と表示される辺り、何か関係があるのだろう。


「……なんで今聞くのかはおいといて、アディ君が小さい頃に、孤児院からクストス家に引き取られたのは本当ですよ?

 その後、回復魔法に適性があったので、魔法師団に籍を置いてます。要するに今は派遣の形ですね」


 あからさまに話題を変えたアディの質問に、マーレはため息を吐きながら答えてくれる。


 ――うーん? いや、分からん。


 派遣と言っても、マーレはアディの側にずっといた。魔法師団所属と言われても、仕事をしている風には見えなかった。


「おや、元気そうだね。マーレの言うことは本当だよー。

 彼女の魔法師団としての仕事は、君の専属魔法師だからねぇ」


 部屋の向こう、廊下から声がして姿を現したのは長身の男性。どことなくルナに似ていた。


【ユーストゥス・ヴェネラティオ】ヴェネラティオ家、当主。魔法師団所属、団長。男。□□歳。得意属性、□□□。□□□。


 ――文字化け、つか非表示が、多い?


 見えたステータスに、なんの意図があるのか未だ不明点は多かった。アディはユースティスを見て、瞬きを繰り返した。


「……」


 じっと見ているとやはり目が痛くなり、アディは目元を押さえてまた揉んだ。それでどうなるということもないが、気持ちの問題である。

 そして、いくら見たところでその表示は変わらなかった。


 ――表示の基準はなんだ?


 ユースティスはアディを入れて、二人目の非表示の扱いだった。


「マーレ、呼ぶまで席外してくれる? 長くなると思うから、食事でもゆっくりしてきて良いよ~」


 入口で二人、アディの様子を見ながら立ち話をしていた。内緒話をするでもなく、ユーストゥスの声は大きい。


「居たらダメ、でしょうか?」


「女性はダメー。男同士の積もる話だよ、野暮言わないの」


 おどけてみせたユーストゥスに、マーレは困ったようにため息を吐いた。

 礼を取ると、アディへ手を振ってから部屋を出ていった。


「あ、そのままで良いから」


 アディがベッドから降りて挨拶をしようとすると、ユーストゥスがやんわりと制する。


「このような格好ですみません。初めましてヴェネラティオ公爵様」


「んー、堅いなぁ。堅苦しいの無しでさ、僕に遠慮はしないでほしいんだけど《サイレント》」


 ユーストゥスが防音の結界を張ったのを、アディは確認する。

 これから何が起こるのか、アディは身構えて警戒する。目の前のユーストゥスは、親しげに笑うばかりだった。


「僕と君との仲じゃないか。ねぇ、まだここは君の世界ではない?」


『……ここは、君にとって生きづらい?』


 椅子を引いて、なんでもない世間話を始めるようにユーストゥスは近くに座る。

 真正面から見る彼の紫の瞳、そう見覚えがあった。


 ――『子どもに目線を合わせるなんて、この人はきっと良い大人』


 いつだったか、そう思ったことがある。頭の角で、新たな頭痛にアディは顔をしかめた。


『もし誰もいないと言うのなら、ユーストゥス・ヴェネラティオが、いつでも君を引き取ろう』


 温かいまどろみの中で聞こえた、優しい声がする。

 それはつい先日アディが、ダンジョンで思い出した不思議な記憶。覚えていない遠い日の記憶だった。


「……ルナの、お父さん?」


「久しぶりだね。大きくなったじゃないか、アディウートル・クストス君」


 あの時と同じようにアディが呼べば、あの頃と変わらない優しい態度のユースティスがそこに居た。

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