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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
三章 学園混沌編 ヒロイン登場ってマジなの!?

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第5話 皆さん事件です。転入生が現れました!

「レース・アマータです。よ、よろしくお願いします!」


 教壇の隣で勢いよく自己紹介をし、折り目正しくお辞儀をしたアッシュグレーの髪の少女。

 そのセミロングのふんわりとした緩い巻き髪が、動作に合わせて揺れていた。


 ――結局、遅らせることは出来なかったか。


 自席で頬杖をついて、カリスはその少女を観察する。レースはアディとはまた違う、紫とも黒ともとれる――パープライトのような特殊な光彩を瞳に持っていた。


 ――魔眼かはまだ分からないが、全属性の発現と同時に変化したらしいね。


 アマータという姓は、孤児院の名前だ。

 孤児の平民だというその少女は、全属性の適性が後発的に発覚し、大急ぎで学園の編入が決まった。

 無知は危険だと、早急に魔法制御を学ばせる必要があったのだ。


「では、カリス様。レース嬢をよろしくお願いしますね。

 レース嬢、貴女の席はそこよ。じゃあ、励みなさいね」


 平民の魔力持ちは通常、国の負担で前期入学をし、知識を学ばせる。

 家庭教師などが雇える貴族と違って、家庭だと学ぶ機会が無い為だ。


 ――こちらとて暇ではないのに、仕事ばかりを増やしてくれる。


 現時点でのAクラスは、夏休み前の騒動もあり安全とは言いがたい。Bクラスに編入をさせるように、カリスはウェルムと二人で働きかけていた。

 が、それならばカリスたちが周りを固めれば安全だという結論に、学園側が至ったのだ。

 二学期からの編入自体も学園では珍しく、孤児で平民という異例も重なっての対応だった。


「あ、あの。ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」


「ああ、レース嬢。カリスだ。敬称は要らないから、よろしくね」


 うわべだけの笑顔を作り、カリスは挨拶を済ませる。

 ぎこちない動きのまま、レースも席に座る。緊張のせいだろう、顔を真っ赤にさせてすっかり挙動不審だ。

 彼女の姿にアディとの初邂逅を思い出して、カリスは口許が緩んだ。状況が全く同じだ。


「あとで校内を案内しよう。他にも分からないことがあれば、遠慮なく聞いてくれて構わないからね」


「ありがとうございます。助かります!」


 取り繕うことなく、はにかんで笑う彼女は人当たりが良さそうだと、カリスは判断する。

 本人の意思ではなく、国の、学園側の意向での急な編入。教室での席も、カリスの後ろという特別が指示されている。

 不憫だと同情を誘う部分は十分にあった。割り振られた役割くらいは、カリスも受け入れるつもりだ。


 ――彼女と親しげにすることで、周囲の牽制が目的なのは分かるが……。


 気にくわないのは、二学期から新しく組み直す実技ペアに関しても、カリスがレースと組むことが、すでに決まってしまったことだ。

 身分もそうだが、全課程をすでに終えているためカリスが適任とされた。ウェルムだって同じ条件であるにも関わらず。


 ――学園での動きが制限されては、犯人捜しどころではないじゃないか。


 代わりに、アディのペアは戻ってきた時にフォロー出来るよう、ウェルムにすることを学園には条件にした。そうでないと、カリスが落ち着けない。


 ――実技で、アディがうっかり怪我をしたらどうする。


 そうでなくとも、アディは自分からトラブルに突っ込んでいくタイプなのだ。

 残るメンバーの中で魔力が読め、思慮深いのがウェルム。彼ならば、アディのストッパーとして役割をこなすだろう。

 ルナはまだ幼く、感情が先に立つ場面もあるため、アディのサポートが難しいだろうと踏んでのことだった。


 ――実際、ルナの制止くらいでアディは止まらないからな。


 Aクラスはレースの転入で奇数となり、ペアが一人余る。そこは実力も近いフィデス、ケレル、ルナの三人で組ませることにした。

 ユニタスたち後の四人は、前期と変わらずいつものペアだ。


「……うまく釣られてほしいね」


「大丈夫ですよ。備品も念入りに点検させましたから、向こうにとっても今頃、おもしろくないはずです」


 カリスの小さなぼやきに、ウェルムだけが返事を返した。

 夏休みを前倒しにした分、二学期をやや早めてスタートしたAクラス。現在、学園に登校しているのは、一年Aクラスとサークルの生徒だけだ。

 一学期の不穏な動きを、明確に釣り上げる措置でもあった。


 ――アディが戻る前に、彼女を一人立ちさせれば……。


 アディの復学は未定。クストス家からも、休学の申請が正式になされていた。

 それがカリスたちにとっての残された猶予だと知るのは、事態が拗れてからになるのだが、この時はまだ誰も気づいていなかった。

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