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【二章完結】乙女ゲーのチュートリアルで消える強化素材のはずが、攻略対象に執着されて退場できません。いや、俺、男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
学園混沌編

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第4話 独占欲は留まることを知りません、え、やば

 ――いや、学園では未だ水難の犯人を掴めていない。安全とは言えないか。


 アディの熱が、握った手から伝わって余計な邪念を払った。今、気にかけるべきは学園のことではない。

 カリスは目を伏せて、思考を切り替える。


「まぁ、魔力の流れ的に見て、何かを行使してる可能性は低いけどね。本人に聞こうにも眠り姫だからさぁ。

 起きた僅かな間に、水分を取らせるので今は精一杯だね。すぐ寝ちゃうから。でも熱は徐々に下がってきてるよ、そのうちちゃんと起きるんじゃないかな」


 ユーストゥスの軽い口調が、カリスにはちっとも朗報に聞こえず、小さく息を吐く。


「熱が下がれば、本当に起きると思うかい?」


「さあね。ともかく起きて話が出来ないと、これ以上の好転は期待できないよ。

 まだしばらくは、こっちで面倒を見るしかないだろうね。起きたら、これを機に魔眼のコントロールでも……と言いたいけど」


 ユーストゥスは話を区切って唸る。アディを見て、苦々しく続きを口にした。

 

「実技考査での魔法の精密操作から考えて、本人が魔眼のオンオフを未だ切り替えれないのだから、無理と考えた方がいいねぇ。

 別の策を講じた方が早い。眼鏡が早いんだけど、外したら意味ないからぁ……。

 身につけて、外せない物で固めるのが無難かなぁ」


 アディ自身が気にしている魔力量の少なさ、それは常時発動の魔眼のせいだと、以前ユーストゥスは言っていた。

 先天的な固有魔法は、総じて癖が強いものが多いとは、カリスもこの夏休みで文献を調べて知った。

 代償だけで言えば、命に関わるものから、心身の機能を一部害するものまで様々だ。


「――ピアスか。それに、イージスを組み込めるか?」


 魔道具を身につけさせるなら、と一瞬思案してカリスは問う。


「え、殿下。それ本気?」


「イージスなら、あらゆる害意を一度は完全に弾くからな。回復魔法を受け付けないなら、傷をつけなければいい」


 実際のところ、カリスに扱えるイージスは三種類。一度限りの絶対防御を始め、回数無効の上限付き、負担は大きいが他の二種のデメリットをカバーする常駐型だ。

 カリスは常に自身を対象に、一度だけのイージスを掛けて外出をしている。王子の身分で、フラフラと各所に出歩けるのも絶体防御の成せる技だった。


「あー。出来ても魔道具が一回使い捨てだよ。他の術式ならともかく、イージスは魔石の方が先に壊れるね。

 一回じゃ、術式を込める殿下の労力が見合わないと思うけど?」


「守ると誓ったからな。剣の返却を直接受けてはいない。なら、私がアディを庇護をするのは当然だ」


「……それ、陛下知ってます?」


 ユーストゥスが、疑いの目をカリスへ向ける。一学生に、肩入れし過ぎだと言いたいのだろうか。


「告げ口不要だ、ヴェネラティオ公爵。

 それにアディの才覚を、貴殿も知っているのだろう?

 国に有益な存在を保護して、何が悪いんだい?」


 カリスは疎ましそうに、少し邪険に返す。

 王子として国の政務を振ってくるくせに、こういう時だけ子供扱いなどしないでほしい。


「殿下のそれは、個人のように思いわれますが。まぁ踏み入れるなら、覚悟を持ってなさってください。

 あの子は、貴方より年上ですから。気軽に踏み込むと大変ですよ?」


 一音、声を低く口調を変えたユーストゥスが、わざと含みを持たせてカリスへと告げた。

 その挑発するような態度を見て、カリスも静かに見返した。

 ユーストゥスの貴族らしい笑みは、その奥の真意を探ることが出来ない。


「……」


 ――公爵は、何を知っている?


 アディは同じクラスだ、ならば同じ年齢のはず。けれど口振りからすれば、それよりもかなり年上という言い方だ。

 特例のウェルムとルナとは、年齢に数年の誤差があるが、今までユーストゥスがそれに触れたことはない。


 ――隠し事ばかり、面白くないな。


 アディに関していえば、クストス兄弟もそうだ。小出しに、はぐらかしと何かと秘匿しがちな面がある。

 彼らの意図を掴みきれないのが、カリスには憎らしいとさえ思う。


 ――子ども扱いなのか、王子だからか。それとも単に……。


 アディと接する資格がないと思われているのか。どちらにしても、彼らが不敬を働けるのは、カリスより上の存在がそうすること黙認しているからだ。


「……そうそう、殿下!

 学園、殿下のクラスに全属性の平民が入るのでしょう? 準備に戻られてはどうです?」


 ユーストゥスは突然ポンと両手を叩き、明るく話題を変えた。

 乗るのは癪だがカリスもため息を吐くと、アディから手を離して立ち上がる。

 顔を見るだけのつもりが、長居をしてしまったのは事実だった。カリスはカリスで、出来ることをしなければならない。


 ――欲しいと思ったことに、今も変わりはない。譲るつもりもない。


 大人の思惑がどうであれ、学園の安全さえ確保できてアディが帰ってこれば、カリスと同じクラスで同じ階の寮なのだ。

 そうなれば、相手が誰であろうと分が悪いなんてことはない。


「公爵の言う通り、私はそろそろ戻るとしよう。魔道具の件、用意を頼んだからね」


 父王が絡むほど、アディは大人の興味を惹くのがうまいらしい。本人にその気は全く無いのだろう。

 カリスとしては、ルナたち以外にもライバルが居ると知れただけで、今日立ち寄って正解だった。


 ――王子の身分より、よほど興味をそそられるよ。


 穏やかな寝顔のアディをひと撫でして、カリスはその場を後にした。

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