幼なじみ達と置き去りな3人
俺達が居たのは、
1日の出来事を語らいつつ、今からの時間をどうしようか?などと他愛ない会話で盛り上がっていた、
放課後の学食。
そして、
今、俺達が居るのは、
整然と並んでいたはずのテーブルやイスが一切消えて、壁や窓も特殊なシャッターにより補装されている、
簡易闘技場と化し殺伐とした、
放課後の学食だ。
その中央で、
恐竜トリケラトプスの頭を模した、盾型のエヴォギアを構える少女…クシナダと、
穂先がヒビだらけの、今にも壊れてしまいそうな巨大なランスを握りしめた金髪ヤンチャ娘…ルナが、
相対して立っている。
「さぁて!急に始まりましたよ!流石に間に合わないかとも思いましたが、間に合いました!
私、ノゾミ・トリスティンが本日も皆々様の為にしっかりと実況させて頂きます!!」
黄緑髪の先輩が、完全に趣味を反映した様な、マイクとスピーカーを模したエヴォギアを使って、声を張り上げた。
急に始まったのはアンタの実況タイムだよ、とツッコミたい…。
「今回のルールはモノバトル!
対戦相手の降参や気絶、エヴォギアのダメージ蓄積による顕現解除で勝敗が決します!
さぁ果たして!どちらが勝利するのでしょうか!?」
もう、あの先輩はBGMかなんかだと思おう。
俺は少し離れた所で、ターニャ、ニャルと共に中央でにらみ合う2人へ意識を集中した。
ちなみにターニャは、ニャルが撮影するハンディカムのモニターを凝視している。
うん。
勉強するつもりは確かにあるらしい。
「ルーちゃん。今日ばかりは引かないよ」
「言うじゃねぇか。
いつか、クッシーとこうなる日が来るとは思ってたさ…」
「…え?」
「もともと、オレとクッシーの性格じゃ合うはずがねぇんだよ。
新しい学校で、新しい人と関わるんだ。
ここらでオレとは決別しといた方がいいんだ!」
ルナは、ボロボロのランスを一層強く握りしめ、クシナダに向けて構えた。
「オレの<星砕槍>の最期がテメェの<トライセラトプス>だなんて、コイツも喜ぶだろうなぁ!!」
強烈な刺突がクシナダに放たれる。
クシナダは盾を器用に使いそれを受け流し、再度ルナと距離を置いた。
「そんな…ルーちゃんはずっとそんな事考えてたっ言うの!?」
「当たり前だろぉがッ!!」
ルナは先程よりも鋭い一撃を打ち込むが、やはり盾で受け流される。
クシナダは、その盾<トライセラトプス>の全体をなす曲面を上手く利用し、ランスの刺突を正面からではなく、下方や側面から緩やかに照準を外してかわしており、
それがもともとの戦い方なのか、
ルナのランスを庇っての事なのか…。
「なんでこんな面倒な戦い方してるのかな?クシナダさん」
「あの一撃を、正面から防げば、恐らくランスの先端が砕け散るからです。
そうならないために、全て受け流して、避けて、パワーを逃す戦い方をしてます。
さっきの会話と雰囲気でそれくらい気付け、戦闘バカ」
「ニャーちゃんヒドイ!」
ニャルも気付いていた様だ。
まぁターニャは分からなかったらしいが…。
それにしても、
あの2人。俺達の事なんて眼中に無いな。
意見と意地が、お互いにぶつかってるのは良いが、
完全に俺達は巻き込まれてるだけである。
〜〜〜
戦闘は苛烈を極めた。
幼なじみと言うだけあり、
クシナダは、ルナの攻撃パターンを全て把握しているかの様に、ことごとくその必殺級の一撃を綺麗に受け流し続けている。
戦い始めて、早くも10分が経過しようとしていた。
体力的な部分で言うと、見た目からしてクシナダの方が不利そうだが、実際確かに不利な様で、
未だに声を荒げているルナと違い、攻撃を受け流すのでいっぱい、と言った感じだ。
「あの金髪、バカデカいランスを使ってるだけありますね。体力バカなんでしょうか?いや、体力オバケでしょうか?」
ハンディカムを構えるロリっ子も呟いている。
「あんなに大きい槍、持つだけでも大変そうなのに、連続突きになぎ払いまで、忙しなく動いてるよ…」
さすがのターニャもその異常とも言えるルナの体力には驚嘆していた。
体力については確かに凄いが、それ以外の部分も俺は2人に伝えた。
「あのランスの…ルナって子、戦闘センスがかなり良いみたいだな。
体力や筋力は確かに凄いが、それ以外に動きに無駄がない。
動きの基本は「突き」そして「なぎ払い」だが、そのパターンを綺麗に繋げてる。
ただでさえ体力バカだろうが、あの無駄のない動きで更に低燃費且つ効率的な攻撃を繰り出してる…」
「厄介な敵ですね…」
ニャルが率直な意見をこぼした。
「だが…味方なら心強いな、ありゃ」
対して俺も率直な意見を述べた。
「味方…って確かにそうですが、あの見るからにヤンチャなカタブツが、そう簡単に味方になると思うんですか、アラタ」
ニャルの横でターニャも首を縦にふる。
「そうだな…とりあえずは、クシナダさんに勝って貰って、あのルナってヤツとしっかり話をしないとな」
そう言って俺は数歩前に出た。
「クシナダさん!攻撃に徹して下さい!ルナの連鎖的な攻撃を止めないとジリ貧ですよ!!」
俺のアドバイスに、ルナが顔をしかめた。
クシナダさんはこちらを見なかったが、確実に何かを決したような眼差しに変わったのは分かる。
「黙ってろよ!外野がッ!!」
ルナがこちらへの罵倒に集中を削いだ瞬間、クシナダは力強い掌底をルナの脇腹に打ち込んだ。
「ぐ!?」
バランスを崩したルナに、クシナダはすかさず<トライセラトプス>の突きを放つ。
突いて、なぎ払って、蹴って、また突いて。
先ほどまでのルナが行っていた攻撃の連鎖を、今度はクシナダが始めた。
異常に巨大なランスは、面積的にガードにも使える事は予想していた。
だが、その巨体を持つだけで、更には相手の攻撃に合わせて防ぐための動きは、攻撃を連続して行うよりも遥かに体力を使う様で、
明らかに先程よりも疲弊する速度が上がっているのが、ルナの表情からは読み取れた。
対してクシナダの表情は、俺達と話していた時のオドオドキョロキョロした様子は一切無く、
幼なじみの金髪少女のみを真っ直ぐに見つめる力強いものだった。
そして訪れた数秒の隙。
ランスを弾かれ、ガラ空きになったルナの胴体に、
クシナダは渾身の掌底打ちを決めた。
ターニャとマカロン先輩の戦闘の様に派手な吹き飛び方はしないものの、
ルナは2〜3歩後ずさり、眉間にシワをよせ、引きつった様な笑顔をクシナダに向けて、
静かに、天を仰ぎ、大の字に倒れた。




