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EP 7

氷の魔王による絶対的承認トップダウン論理ロジック権力パワーが交差する、完璧なる悪徳商人の公開処刑です

 ――ピキィィィィィィィィィンッ!!!!

 ポポロ村の広場に、文字通り『絶対零度』の冷気が吹き荒れた。

 私に向かって剣を振り上げようとした数十人のギルド私兵たちは、足元から急速に這い上がる分厚い氷に下半身を拘束され、ただの一歩も踏み出すことができずに悲鳴を上げている。

「ひ、ひぃぃぃっ!?」

「あ、アレクセイ・フォン・ヴァルトブルク公爵閣下……ッ! な、なぜ王都にいるはずの魔王がここに……!」

 腰を抜かし、ガタガタと歯の根を鳴らして震えるゴルド。

 彼らの視線の先、絶望のドームの中心へと悠然と歩み出てきたのは、漆黒の外套を翻す我が社の過保護CEO、アレクセイ様だった。

 その背後には、彼の『マッハの出張帰還』に必死についてきたであろう公爵軍の精鋭騎士たちが、息を切らしながらも完全に広場を包囲している。

「しゃ、社長……」

 私が小さく呟くと、アレクセイ様は私兵たちに向けていた絶対零度の視線を一瞬で甘く溶かし、私の隣へと並び立った。

「……遅れてすまなかった、私の愛しい共同経営者パートナー。君の素晴らしいプレゼンテーションを特等席で拝聴していたのだが……どうやら、野生の猿どもが君の神聖な舞台を荒らそうとしたものでな。少々、物理的な指導マネジメントに入らせてもらった」

 アレクセイ様はそう言って、私の肩を優しく抱き寄せた。

 彼の大きな手から伝わる安心感と、周囲を圧倒する魔力プレッシャー

 私は小さく頷き、再びゴルドへと冷徹な視線を向けた。

「ありがとうございます、社長。ですが、ご心配には及びません。彼らの息の根を止めるための『論理ロジック』は、すでに完璧に組み上がっていますから」

 私は手元の『監査報告書(裏帳簿のコピー)』を手に取り、それをパラパラと捲った。

「ゴルド殿。貴方は先ほど、私を『公爵の愛人風情』と呼び、私の事業を『違法操業』だと断じましたね。……では、ギルドの規定コンプライアンスに照らし合わせてみましょうか」

 私は集まった南部の貴族や大商人たち――ゴルドの取り巻きとして来ていた者たちも含めて――に向かって、凛とした声で響かせた。

「皆様! 今、キャルルさんとコハクが皆様にお配りしている資料ペーパーをご覧ください!」

「えっ……こ、これは……」

「な、なんだって!? 『ダミー商会』への架空発注による、ギルド資金の引き出し……!」

「ここ数年の我々の納めた組合費が、ごっそりと消えているじゃないか! それに、この王都の別荘の購入資金は……!」

 商人たちの顔色が一斉に変わった。

 キャルルさんの超高速マッハ移動と、コハクの空間魔法を駆使して、あっという間に会場全員に配布された『ゴルドの不正の決定的な証拠エビデンス』。

 数字は嘘をつかない。緻密にまとめられた私の監査報告書は、誰が見ても一目でゴルドの横領を理解できる、完璧な『死刑宣告書』だった。

「ち、違う! それは捏造だ! その女が俺を陥れるために作った偽造書類だぁぁっ!」

 ゴルドが顔を真っ赤にして叫ぶ。

「捏造?」

 そこで、アレクセイ様が低く、地を這うような声で口を開いた。

「我がヴァルトブルク公爵家の共同経営者であり、私の唯一の婚約者である彼女が……自らの誇りにかけて作成した『監査報告』を、貴様は捏造だとほざくのか?」

 ゴゴゴゴゴ……ッ!!

 アレクセイ様から漏れ出した殺気が、物理的な重圧となって広場を押し潰した。

 ゴルドは呼吸すら満足にできなくなり、蛙のように地面に這いつくばる。

「……っ、あ……が……っ」

「彼女が提示した数字ロジックは完璧だ。我が公爵家の精鋭からなる財務部でも、これほどまでに美しく、冷酷に悪を暴くことはできまい」

 アレクセイ様は私を深く見つめ、絶対的な敬意を込めてそう断言した。

 ただ権力で私を守るのではない。私の『仕事ビジネス』の価値を、南部のトップである公爵自身の言葉で、完全に承認オーソライズしてくれたのだ。

「ゴルド副ギルドマスター。貴様がギルドのプール金を私的流用し、その穴埋めのために彼女の新規事業から『利益の7割』という理不尽なマージンを要求したこと。……もはや言い逃れは不可能だ」

「お、お許しを……! 公爵閣下、どうか、どうか慈悲を……っ!」

 ゴルドは涙と鼻水を流しながら、アレクセイ様のブーツにすがりつこうとした。

 だが、アレクセイ様は汚物でも見るかのように冷酷に彼を見下ろした。

「慈悲? 私の婚約者に刃を向けた時点で、貴様の存在価値は完全にゼロ(損金)だ」

 アレクセイ様は、無慈悲なトップダウン命令を下す。

「ゴルドの全財産――王都の隠し別荘から隠し金庫の宝石に至るまで、全てを差し押さえ、ギルドの負債(横領分)の返済に充てよ! それでも足りぬ分は、北部の魔石鉱山での強制労働(無期懲役)をもって支払わせる! 連行しろ!」

「ははっ!!」

 包囲していた公爵軍の騎士たちが一斉に動き、氷漬けにされた私兵たちと、絶望に白目を剥いて気絶したゴルドを、まるでゴミでも片付けるかのようにマッハで引きずっていく。

 ものの数分。

 南部の物流を牛耳り、私に下劣なオファーを出してきた悪徳商人は、文字通り『市場から完全に退場リタイア』した。

 圧倒的なカタルシス。

 論理(私)で逃げ道を塞ぎ、権力(彼)で息の根を止める。

 これぞまさに、ヴァルトブルク公爵家が誇る最強の『ロジカル・ざまぁ』の完成であった。

 ***

 ゴルドが連行され、静まり返った広場。

 商人や貴族令嬢たちは、あまりの劇的な展開と公爵閣下の圧倒的な威圧感に、言葉を失って立ち尽くしていた。

(……いけません。このままでは、せっかくの新商品発表会ローンチ・パーティーがお通夜モードになってしまいます)

 私はコンサルタントとしての営業スマイルを瞬時に再起動リブートさせ、ステージの中央へと進み出た。

「皆様! お騒がせいたしました。少々見苦しい害虫バグが発生いたしましたが、我が社の強固なセキュリティ(社長)によって、すでに排除トラブルシューティングは完了いたしました!」

 私の明るい声に、キャルルさんとコハクもすかさず同調する。

「はいはーい! みんな安心してね! ヒカリちゃんのお化粧水は、あんなクズが絡む余地のない、最高のクオリティだから!」

「きゅいーっ! ボクも浄化魔法で保証するのですよー!」

 私が再び『星雫の美容液』の小瓶を高く掲げると、アレクセイ様がスッと私の隣に立ち、人々の前で、私の手を取った。

 そして、私の手の甲に、まるで神に祈りを捧げるかのような、深く、甘いキスを落とした。

「っ……しゃ、社長……?」

「我が愛しき婚約者ヒカリが開発したこの製品は、私自身がその『効能』を昨夜、一晩かけて直々に検証クオリティ・コントロールした。……彼女の美しさをさらに引き立てる、極上の品であると、公爵の名にかけて保証しよう」

「きゃあぁぁぁぁぁっ!!」

「こ、公爵閣下が、一晩かけて直々に……ッ!?」

「あんなに冷酷な氷の魔王様が、ヒカリ様にはあんなに甘く……!」

 アレクセイ様の言葉(爆弾発言)と、限界突破した糖度MAXの眼差しに、会場の貴族令嬢たちのテンションが一気に最高潮(ストップ高)に達した。

 ただでさえ効果絶大の美容液に、『氷の魔王を骨抜きにするほどの魅力(媚薬効果?)がある』という、とんでもない付加価値バリューが乗ってしまったのだ。

「わ、私にも! 私にもその美容液を売ってくださいませ!」

「私なんて十本……いえ、百本予約しますわ!!」

「ウチの商会でも独占契約を結ばせてくれぇっ!!」

 堰を切ったように、広場の展示台に人が殺到する。

 キャルルさんとコハクが「マッハで並んでー!」と悲鳴を上げるほどの、超絶的な大盛況オーバーブッキングである。

 私はその熱狂的な光景を見下ろしながら、ホッと胸を撫で下ろした。

 既存の権力ギルドに屈することなく、自らの頭脳と仲間たちの力で市場を開拓し、最後に最高のパートナーの承認を得る。

 新規事業立ち上げプロジェクトは、これ以上ないほどの完璧な大成功(大団円)を収めたのだ。

「……素晴らしい手腕だったぞ、ヒカリ」

 喧騒の中、アレクセイ様が私の腰に手を回し、耳元で熱く囁いた。

「一人で無茶をしたことには後でお説教が必要だが……君が私の力を借りず、自らの知略だけであの悪党を追い詰めた姿は、本当に美しかった」

「……ふふっ。社長の教え(マネジメント)が良かったからです。それに、最後の『美味しいところ(権力による制圧)』は、ちゃんと社長に残しておいたでしょう?」

 私が少しだけ悪戯っぽく微笑んでウインクすると、アレクセイ様は青い瞳をわずかに見開き――やがて、たまらないといった様子で額に手を当て、深くため息をついた。

「……本当に、君には敵わない。私の独占欲と庇護欲を、こうも易々と『尊敬リスペクト』へと変換してしまうのだから」

 彼はそのまま私の体を強く抱き寄せ、衆人環視のステージの上であるにもかかわらず、甘く、深く、私の唇を塞いだ。

「んっ……」

「……愛している、私のヒカリ。君は、世界で一番有能で、愛おしい女性だ」

 唇が離れた後、熱に浮かされたように囁かれる極上の愛の言葉。

 広場からは割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こり、私は顔を真っ赤にしながら、それでも彼の広い胸の中で、心からの幸せ(報酬)を噛み締めていた。

 過保護でヤンデレ気味なCEOと、彼に溺愛されながらも自らの足で立つコンサルタント(私)。

 私たちのビジネス(恋愛)は、まだまだ右肩上がりで成長を続けていくのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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