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TS令嬢、悪役ムーブで人生を謳歌したい  作者: 真嶋 青
第二章

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19. 奴隷賛成派閥

 VIPルームに入ると、俺とダールトンは椅子に座って向かい合う。


 ダールトンの秘書っぽいエロいドレスの女が紅茶を差し出した。


 ふむ。

 推定Fカップ。

 良いものをお持ちですなぁ。

 ワンタッチよろしいですか?


「ベルベット様、それは私の娘です。申し訳ありませんが、いくらベルベット様と言えど、連れ帰らせるわけにはいきませんぞ」

 

 秘書さんをエロい目で見ていたら、

 ダールトンがちょっと困った顔でそんなことを言った。


「……え?」


 もう一回、ドレスの女性を見る。

 

 どう見ても、めっちゃ美人だ。

 目元の黒子が似合うタイプの妖艶な美女。

 俺と目が合うとニッコリと微笑んだ。


「いつも父がお世話になっております。娘のレジーナと申します」

「これは……ご丁寧に」


 つられてペコリと頭を下げる。

 

 これがダールトンの娘、だと?


「パパ活か?」

「はい? なんですかな、それは?」

「いや、すまん。なんでもない」


 どうやらこの世界にはパパ活という言葉はないらしい。

 

 しかし、遺伝子というのは時としてこのような超常現象を引き起こすものなのか。

 どこをどう取ったらダールトンから美女が生まれてくるんだよ。

 

 もしかして、コイツ痩せたらイケメンになるタイプか?

 あるいは、嫁の方が超絶美人で、奇跡的にそっちにだけ似たか。

 そっちのパターンな気がしてきたな。

 ダールトンが、実はイケメンとかムカつくし。


 それに冷静に考えてみれば、ダールトンは億万長者。

 嫁さんがどこぞの商社の箱入り娘ということも考えられる。

 会社をデカくするための政略結婚的な。


 なんだろうなぁ。

 どうしてかダールトンが、今の嫁を元カレからNTRして結婚したイメージが自然と頭を過ってしまったよ。


『お願いします! あの人とは別れるから、平穏な生活をさせてあげて!』

『ぐひゃひゃ、わかっているなら大人しく股を開け』

『うぅぅ……』


 みたいな。

 前世の薄い本でそんなんを沢山見てきたから詳しいんだ、俺。

 

 なんて、そんな話はどうでもいい。

 今はそれより聞きたい話があるんだった。

 

「で、ポートマンの方はどうなった?」

「えぇ。それが、どうやら彼は第二王子派から、第一王子派へ鞍替えを考えているみたいですぞ」

「やっぱりか」

「さすがベルベット様。予想されていましたか」

 

 よく考えてみれば簡単な事だ。

 カースナー公爵家は、ここ数年間で奴隷売買の税率を大きく改正させた実績がある。

 もともと、王国最大規模である奴隷商・ダールトン商会の総本店を領地に置いていたこともあって、奴隷制度賛成派ではあった。

 そして、今となってはその筆頭になったと言って良い。

 裏で奴隷売買に関わっているポートマン伯爵家は、そんな我が家と、どうにか繋がりを持ちたいわけだ。

 もっと言うなら、カースナー公爵家の膝元にある、王国最大となったダールトン商会との関係を強固にしたい。

 ポートマン伯爵はそう考えているに違いあるまい。


 しかし、ポートマンにとって誤算だったのは、俺が第一王子であるラインと婚約してしまったことだろう。

 それは、これまで王位継承権の派閥争いに明確な参入意思を示していなかった我が家が、明確に第一王子派として声明を出したに等しい。

 そしてこれは、第一王子派閥が奴隷制度賛成派を容認したとも捉えられる。

 それらを総合して考えれば、ポートマンが第一王子派への鞍替えを決意することはなんら不思議ではない。


 ちなみに、奴隷賛成派閥があるということは、対となる奴隷制度反対派閥もある。

 そういう貴族の領地には奴隷商館がないし、過激な所だと奴隷を領内で雇うことを禁止していたりする。


 奴隷は非人道的。

 早々に廃するべき制度である。


 彼ら彼女らは、そんなことを謳っている。


 なんて誠実な貴族様!

 素晴らしい!

 惚れちゃ~~~う!

 

 なんて、それは綺麗ごとが大好きな人間の評価でしかない。

 

 奴隷反対派閥で、領内での奴隷保有を禁止しているような領地には、産業も商業も栄えない。

 当たり前だ。

 大手の商売人はどこも奴隷を雇って事業を拡大しているのだから。


 奴隷反対を声を大にして主張する貴族は、商売人から嫌われる。

 そして、商人が寄り付かない領地など、発展するはずがない。

 

 奴隷反対派の貴族というのは、領地を持たない世間知らずな宮廷貴族か、もしくは領地の発展とは程遠い環境にある田舎貴族と相場が決まっている。


 さて、そんな話は置いといて。


「ってなると、レアーナを差し向けたのはパドリック子爵家が最有力候補か」


 アリスター侯爵はウチのギルドを頼っているらしいから、別でレアーナを雇うとは考えにくい。

 他の貴族ということも考えられるが、まあ婚約発表の社交界で俺と話した人間に絞って考えれば、パドリックが一番怪しい。

 ほぼ確定とみていいはずだ。

 

「既にパドリック子爵家の方にはギルドの諜報員を向かわせています。何かしらの結果は早いうちに出るでしょう」

「仕事が速くて助かるよ」

「お褒めにあずかり光栄です。して、ポートマン伯爵家との接触は如何します?」


 そのことについても考えてある。


「ポートマンが元締めしてる裏奴隷市に、俺の奴隷を出品する名目で接触を(はか)る」

「ベルベット様の奴隷を、出品?」


 ダールトンは一度、チラリとシルヴィアを見た。

 だが、まさかそんなわけがないと首を振って自分の考えを否定する。


「ウチの奴隷を使うということですかな?」

「いいや。実は最近、面白い奴を拾ってな」


 はて? とダールトンは怪訝(けげん)な顔をする。

 

「身元不明、自称スラムの孤児だ。裏市に連れて行くには最適だと思わないか?」


 つまり、そういうことである。


 言ったよなぁ。

 しっかりとお前を利用させてもらうぞ、レアーナ♡

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