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抱え込みすぎて壊れる前に消えた私が、別の世界でやり直したら  作者: 絵宮 芳緒
第四章|動き出した歯車

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第七話|決まった位置

靴音が、石の床に静かに響く。


高い天井の回廊は、夜でも完全には暗くならない。


等間隔に灯された燭台の灯りが、足元をやわらかく照らしている。


「……」


アリシアは、歩いている。


背筋を伸ばし、視線はまっすぐ前へ、迷いのない足取りで。


「……」


背後から、もう一つの足音が重なる。


同じ速さで、同じリズムで。


「……」


追いつく。

何も言わずに、隣に並ぶ。


それが自然であるかのように。


「領地に戻るのか?」


低い声が、隣から落ちる。


「ええ」


アリシアは視線を前に向けたまま答える。


「一度、整理するわ」


短く、それで十分だった。


「……」


それ以上は問われない。


必要がないと、互いにわかっているから。


「……」


並んだまま歩く。

意識せずとも、歩幅が揃う。


「……」


昼間の光景が、ふと脳裏をかすめる。


視線の集まり。

押し殺されたざわめき。

言葉にされない評価。


「……」


だが、足は止まらない。


「どう見る?」


隣から、静かに問われる。


「……」


ほんのわずかに、考える。

長くはない。


「問題は残るわ」


はっきりと。


「でも」


一歩、踏み出す。


「位置は決まった」


迷いなく言い切る。


「……」


隣で、わずかに息が抜ける気配がする。


「その通りだ」


短く返る。


「……」


それで終わる。

議論にはならない。

結論は、もう出ているから。


「……」


回廊の先に、外へ続く扉が見える。


隙間から夜気が流れ込み、わずかに空気が揺れる。


「……」


扉を抜ける。

ひんやりとした空気が頬に触れる。


昼間とは違う、澄んだ静けさ。


「……」


二人同時に、足を止める。


打ち合わせたわけでもなく、自然に。


「……」


アリシアは振り返らない。


もう、見る必要がないと知っているから。


「……」


前へ進もうとした、その時——

肩に、わずかに触れる感触。

引き止めるほどではない。


ただ、そこにいることを確かめるように。


「……」


「行け!」


低く、迷いのない声で短く言う。


「……」


アリシアは、小さく頷く。


言葉は返さない。

それで足りる。


「……」


触れていた気配が、すぐに離れる。


引きずらない。

残さない。


「……」


再び、歩き出す。

今度は、外へ。

前へ。


「……」


変わらず、隣にいる。


だが——

もう、確かめる必要はない。


「……」


決まっている。

自分の立つ位置も、その隣も。


「……」


夜は静かだ。

だが、止まってはいない。


「……」


ゆっくりと、流れている。

確実に、前へ。


「……」


もう、戻ることはない。



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