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抱え込みすぎて壊れる前に消えた私が、別の世界でやり直したら  作者: 絵宮 芳緒
第ニ章|選ばれるということ

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第十一話|刺さる言葉

現場の空気は、重かった。


動いてはいる。

だが、揃っていない。


「……これ、どこまで進めてます?」


若い方が、紙を手に取る。

早く、迷いなく。


「今、確認中です」


現場の担当が答える。

声は落ち着いている。


「確認って、止まってるってことですよね?」


すぐに、返す。


「それじゃ意味ないですよ」


「……」


空気が、少しだけ止まる。


「順番、決めてください」


続ける。


「このままだと全部遅れます」


言っていることは、正しい。


「……」


だが、返事が遅れる。


「……それは、わかっています」


静かに返る。


「……」


若い方は、頷く。


「だったら——」


続けようとした時。


「でも」


やわらかく、被せられる。


「……」


視線が、上がる。


「今までは」


続く。


「そこ、ちゃんと整えてから流してくれてたので」


「……」


言葉が、止まる。


「急がせるのはいいんですけど」


声は荒くない。


「この順番だと、あとで全部戻ります」


「……」


紙を見る。


確かに、速い。

だが、荒い。


「……」


「前の方は……」


続く。


「ちゃんと見てから、流してくれてました」


「……」


名前は出ない。

だが、わかる。


「……それだと遅くないですか?」


少し強く、返す。


「今はスピードも必要で——」


「必要です」


すぐに、返る。


「でも……」


「……繋がらなければ、意味がないです」


「……」


言葉が、重なる。


逃げ場のない形で、そのまま落ちる。


「……」


若い方は、何も言えない。


言い返そうとして、言葉が見つからない。


「……」


視線を外す。

紙を、持ち直す。


指先に、少しだけ力が入る。


「……一度、戻ります」


短く言う。

それ以上、続けない。


「……」


背を向ける。

早く、いつも通りに。


だが——

足音が、わずかに乱れる。


「……」


本社へ戻る。


「……」


少しだけ強く、ドアを開ける。


「……」


机の前に、年上の女性がいる。

変わらず。


「……どうだった?」


静かに聞く。


「……」


若い方は、少し強く息を吐く。


「言われました」


短く。


「……何て?」


「繋がらないって」


吐き出すように。


「丁寧に見てから流してたって」


「……」


年上の女性は、何も言わない。


「私、やってますよね?」


言葉が、少し強くなる。


「ちゃんと回してますよね?」


「……」


返事は、すぐに来ない。


「……速いよ」


静かに、落ちる。


「動いてる」


それだけ。


「……でも?」


若い方が聞く。


「……」


少しだけ、間が空く。


「荒い」


短く、それだけ。


「……」


言葉が、刺さる。


「……ちゃんとやってます」


思わず、返す。


「全部、自分で回してます」


「……」


年上の女性は、視線を上げる。

まっすぐに。


「全部?」


静かに。


「……」


言葉が、詰まる。


「……」


その時、ふと浮かぶ。


——抱えすぎじゃない?


「……」


息が、止まる。


「……」


——ちゃんと見てる?


——その順番でいいの?


「……」


頭の中で、重なる。

あの声で、あの言い方で。


「……」


喉の奥が、詰まる。


「……」


——あなたって、結局は自分軸なんですね


その言葉まで、浮かぶ。


「……」


胸の奥が、ざわつく。


「……」


違うと、思いたい。


だが——

さっきの現場の言葉が、重なる。


繋がらない。

戻る。

意味がない。


「……」


自分は、速いだけだった。


「……」


あの人は、違った。


「……」


言葉が、出ない。


「……」


年上の女性は、何も言わない。


ただ、そのまま見ている。

逃がさないように。


「……」


若い方は、視線を落とす。

指先に力が残る。


「……なんで」


小さく、零れる。


「……今、思い出すんだろう」


それだけ。

答えは、ない。


だが——

もう、無視はできなかった。

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