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抱え込みすぎて壊れる前に消えた私が、別の世界でやり直したら  作者: 絵宮 芳緒
第ニ章|選ばれるということ

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第七話|止まる場所

蛍光灯の光が、白く広がっている。


机の上に、紙が積まれている。

端は揃っていない。

わずかに、ずれている。


「……」


誰も、触れない。

手を出す理由が、見つからない。


「……これ」


小さな声が、落ちる。

若い声。


「どこまでやればいいんですか?」


「……」


返事は、ない。

視線だけが、動く。

紙の上をなぞるように。


「……」


誰も、判断しないし、できない。

線が、引かれていない。


「……あの人なら」


誰かが、言いかける。


すぐに止まる。

名前を出さない。

出せない。


「……」


静かになる。

空気が、落ちる。


「……入院、してるんだよね」


確かめるように、年上の女性が低い声で言う。


「……意識、まだ戻ってないって」


返る声は、小さい。

揺れている。


「……」


沈黙。

長くはない。

だが、重い。


「……どうする?」


若い方が、言う。

半歩だけ前に出る。


「……」


年上の女性は、答えない。

答えを探している。


机の上を見る。

紙を見る。


「……」


手を伸ばして、触れる。


だが——

止まる。


その先に進まない。


「……勝手に動いたらまずいよね」


小さく、呟く。

確認するように。


「……責任、取れないし」


「……」


誰も否定しない。

できない。


「……」


時計の針が、進む音だけが響く。

規則的に、変わらずに。


「……」


紙は、動かない。

そこにあるまま。


「……」


若い方が、視線を上げる。

周りを見る。

誰かが動くのを待つ。


「……」


誰も、動かない。


「……」


空気が、沈む。

押し込められるように。


「……」


年上の女性が、ゆっくりと

小さく息を吐く。


「……まずいね」


それだけ。


「……」


誰も、返さない。

その言葉が、答えだから。


「……」


机の上。

積まれた紙。

触れられないまま。

止まっている。


「……」


流れが、ない。

繋がらない。


「……」


同じ場所で。

全部が、止まっている。

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