悪夢は引きずる
よろしくお願いします!
私の寝覚めは、体調を崩していない限り、基本的にすっきりとしたものである。しかし、今朝は一風変わってすこぶる悪い。頭痛や腹痛といったこともなければ、熱が出て体温が高くなっていることもなく、体調には一切の影響がないにも関わらずだ。
何か恐ろしい夢を見たような気がする。内容は覚えておらず、思い出そうとしても何も思い出せないが、おそらく、それが理由なのだと考えた。
明らかに気怠そうな私の様子に、両親は心配してくれたが、食欲はあり、しっかりと朝ご飯を食べた私を見て、そして、私が何か怖い夢を見たというと、無理はしないでと、一声かけるにとどまった。
ご飯を食べ終わり、歯磨きや洗顔のために洗面台の方へ向かった。
その際に、リビングのテレビがつけられていることに気づき、なんとなく横目に見る。そこでは地元のニュース番組が放送されており、記憶が何たら言っていたが、老人向けのコーナーかなんかだろうと気にも留めなかった。
朝の支度も一通り終わり、さて、学校に行こうと玄関に赴き、靴を履いていると両親が近くにやってきた。そしてお母さんが、
「本当に大丈夫?学校で何か嫌なことがあったの?何か悩み事が……」
と、いろいろと心配をしてきた。しかし、私は何か自覚できるようなこともないので、
「ううん、本当になにもないよ?いってきまーす!」
と、少し元気な声を出して学校に向かった。
*
「あなた、ユユはあんなこと言ってるけど……最近、ずっと浮かない顔で帰ってきてるのよ。私、もう本当に心配で……」
「わかってる。最近のユユは笑顔が少なくなってる。僕はあまりかまってあげられないけど、それでもわかるよ……帰ってきたら、よく声をかけてあげてほしい」
*
「モモちゃん、おはよー!」
私は、教室に着くとすぐにモモちゃんを見つけて挨拶をした。そして、そのそばにいた人物にも挨拶をする。
「キナコちゃんも、おはよう!」
私の挨拶に反応して、二人がこちらを向く。
「あ、ユユちゃん。おはよー」
「おはよう。モモ、私……」
モモちゃんは挨拶を返してくれたが、キナコちゃんは軽く挨拶をしてどこかに行ってしまった。モモちゃんにはどこに行くか伝えていたようである。
「キナコちゃん、どうしたんだろう?ねぇ、モモちゃん……ってどうしたの、モモちゃん?」
私がモモちゃんの顔を見ると、この二年の間で一度も見たことのないような苦々しい表情をしていた。
「……あ、え、どうしたのって?」
「いや、なんか微妙な表情してたから……」
「あぁ、うん。えっとー……実はね、なんか怖い夢見ちゃって。けど、肝心の内容はおぼえてないんだよねー」
モモちゃんは、そう言って肩を落とし、ため息をついた。そして、夢なんだからそんなに気にする必要もないはずなのに、やけに気になるんだよねー、と続けた。
「え!モモちゃんも!?」
「ということは、やっぱりユユちゃんも見たんだねー……」
「え、私もって……」
「キーちゃんも見たってー。ミーちゃん達はまだ聞いてないけど、クーちゃんも見たってキーちゃんが言ってた。だから、もしかしたらーって話してたのー」
私は、モモちゃんの言葉に顔を青くした。その様子を見たモモちゃんも、青くなった顔をますます深めていった。二人でくっついてぶるぶる震えながら、キナコちゃんが帰ってくるまで、きゃいきゃいと話をした。
*
一方その頃、キナコはクレアのいる教室にいた。
もちろんのこと、クレアと同じクラスであるミルクとココアもその場にいた。
「キナコ、モモは相変わらず?」
「うん……」
「あんたが言い出したんだし、なんとかしなさいよ。同じクラスなのはキナコだけなんだから。まぁ、でも?話くらいは聞いてあげるし、できることなら協力もするけど。キナコの言うことは私もわかるし。ね?ミルク」
ココアは、傍から聞けば責めてるような口調でキナコを問いただした。しかし、話の内容は、キナコに対してかなり協力的であり、事実、協力している。しかし、ココア自身にできることは限られており、キナコの力になれない歯がゆさも感じていた。
ココアに同意を求められたミルクは、ココアとは違いあまり乗り気ではない様子で口をつぐんでいるが、キナコとココアに言われた通りのとあることは実行しているため、少なからず意思を共にしていると考えられる。
「クレアは、いつも通りでいいよ。このことを、モモ達に話さなきゃ」
「むぅ?もともと、接点少ないし、自分から話しかけたこともない。私には皆だけでいい」
クレアは言いたいことは言ったとばかりに、ポーっとしだした。
そこに、ちょこちょことミルクが寄っていき、椅子の向きごと体の向きを変え、無理やり会話に参加させる。
クレアは近くに来たミルクの腰に手を巻き付かせ、抱き寄せて膝の上に乗せた。なされるがままにしていたミルクだったが、クレアの様子がおかしいことに気づいた。そもそも、ココアならともかくクレアがミルクを抱き寄せることなどないに等しいのである。
「クーちゃん、震えて、どうしたの……?」
クレアはびくっと体をはねさせ、ミルクだけでなくココアにまで手を伸ばした。
「ちょっ、クレア!?ほんとにどうしたのよ、大丈夫なの!?」
クレアの尋常じゃない様子にキナコがその回答をもたらした。
「私もなんだけど、クレア、なんか怖い夢を見たんだって」
その言葉に、ミルクがぎょっとした表情でクレアを見て、ミルク自身もクレアに抱きついた。
「なっ……あんたたちも!?てことは、もしかしてモモもみたの?」
「そう言ってたよ」
「何よそれ……ミルクも見たって言ってて嫌な予感はしてたけど、さすがにこれはないわよ」
こうしてユユとモモの二人と時を同じくして、キナコ達、四人も顔を青くしながら会話をしていたのだった。
ありがとうございました!
評価、感想、ブックマークなど、お待ちしております!




