私の夢
よろしくお願いします!
私はあれから何度か、キナコちゃんや、別のクラスにいるミルクちゃん達にも話しかけに行った。
キナコちゃんは相変わらず事務的な会話しかしてくれず、ココアちゃんはミルクちゃんにべったり、そのミルクちゃんはココアちゃんの対応に追われて、私にまで構っている暇はないという様子だった。いつも通りなのは、クレアさんだけだ。
というのも、モモちゃんもいつも通りではなく、悪夢の話とはまた別の何か考え事をしているようで、私が話しかけてもすぐには気づかないという状況が多々あったのだ。
そうこうしているうちに、時は放課後となってしまい、部活に行く人や帰る人で、教室は閑散としていた。
今残っているのは、今日、日直であった私。それと、未だに何かを考えているモモちゃんだけである。
日直の仕事は、あと日誌に今日の感想を書いて職員室にいる先生に届けるだけであり、少し時間に余裕がある。
そこで、モモちゃんの悩みを聞いてみることにした。
「モモちゃん、最近、何か悩んでるみたいだけど......何かあったの?私でよければ相談にのるよ?」
「……」
「モーモちゃん?」
「え、あ!ごめんね、気づかなかったよー。どうしたのー?」
「どうしたのはこっちのセリフだよー?ボーっとしてどしたの?」
「あっはは……わかるー?」
モモちゃんは悩みがあることを隠そうとはしないが、何とかはぐらかそうとしているようで、私に悩みを打ち明けようとはしなかった。
何とか、しつこすぎない範囲で聞き出そうともしたが、
「あ、ごめんねー!私、ピアノ行かなくちゃ!」
と、言ってモモちゃんは立ち去ってしまった。
*
放課後、私は独りになる。
モモちゃんは、以前聴かせてもらったことがあるが、体が震えるほど感動したのは初めての経験であったほどにピアノが上手であり、その練習のために大体の場合、すぐに帰ってしまう。ピアノの教室自体は週に二回ほどらしいが、自分が好きで練習しているそうである。今日はピアノ教室があるみたいだ。
ミルクちゃんは、ココアちゃんと共にすぐに帰ってしまう。というより、ココアちゃんに連れ帰られている。ココアちゃん曰く二人きりの時間を長くとるためだそうだ。いったい何がそこまでココアちゃんを突き動かすのだろうか。愛か。愛なのだろうか。愛なんだろうなぁ。
クレアさんは、剣道部に入っている。もともと、小学校の体育館で行われていた剣道の教室に通っていたらしく、それが小学生向けのものであるため、現在は部活として頑張っているらしい。モモちゃんの話によると、いっぱい食べるのに太らないのはこれが理由の一つとのことだ。それだけ、ハードなのだろう。
キナコちゃんは、吹奏楽部に所属している。去年、モモちゃんに誘われてコンクールを見に行った時は、指揮者をしていた。だからといって演奏ができないわけでなく、現在もモモちゃんと一緒のピアノ教室に通っているらしい。それに加えて、一年生の頃はフルートも担当していたことで、その実力から、また、本人の学級委員をするような気質や責任感から選ばれたのだと、モモちゃんが誇らしげに語っていた。
では、私は何をしているのか。帰宅部をしている。
もちろんこれには、理由がある。
まず、モモちゃん達との休みを合わせることが困難であるからだ。ただでさえ、一緒に遊ぶ機会が少ないのに、部活をしていて遊びに行けないなんてことになったら目も当てられないと、私は思う。実際、このおかげで二年生までは月に三回くらい遊ぶことができた。だからこれは、最優先事項なのだ。
次に、これに関しては少し後悔しているが、三年生まで続けられる保証がなかったからだ。部活は基本的に、今まで頑張ってきた集大成が三年生にあると思う。それに参加できないかもしれないと考えたとき、途端に寂しくなってしまった。その考えは杞憂に終わったが。
私は、独り、帰り道を行く。明日は、明日こそは、前みたいに、二年生の時みたいに皆と話せると信じて。
*
「私、どうしたら……」
モモは悩んでいた。キナコに持ち掛けられた話によって。
この悩みからか、その声は涙ぐんだものだった。
持ち掛けられた話は、モモの性格からして、到底、承諾できるものでなかった。
しかし、この話には、ココアにクレア、ミルクまでもが同意し、協力していた。
キナコ自身は、二年間だけと思って我慢していたとすら言っているほどで、それを聞いたとき、モモは、悲しくなってしまった。
だからと言って、それほど辛いことでもキナコ達との仲に亀裂が入るのは嫌であるし、なにしろ、その提案が魅力的であるのも確かであるが故に悩んでいる。
モモは、悩んでいること自体に自己嫌悪に陥っている。これに加え、ユユへの申し訳なさということを理由にすぐに会話を終わらせて立ち去ることで、さらに自己嫌悪するといった負の連鎖が起こっていた。
モモは、現在、どっちつかずの立場をとっているようだった。
「皆と、ずっと仲良く……」
モモは、そうつぶやき、このことを忘れて没頭できる大好きなピアノの練習へと帰路を急いだ。
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