きっかけ
よろしくお願いします!
私たちの出会いから、およそ二年の月日が経った。
私たちは二年生も終わりをむかえ、最高学年である三年生になろうとしていた。
二年生である現在、私と同じクラスであるのは、一年に引き続き、モモちゃんとミルクちゃんである。
その他の三人、ココアちゃん、クレアさん、キナコちゃんは同じクラスとなっていた。
朝食を終え、学校へと向かう準備をする私は浮かれていた。今までにない朗報を、先程、父親に伝えられたからだ。そして、これをモモちゃん達に、早く伝えたいという気持ちを逸らせていた。
「お父さん、お母さん!行ってきまーす!」
*
「モモちゃん、おはよー!あれ、ミルクちゃんは?」
「おはよー。ミーちゃんは、まだ来てないよー。どーしたの?テンション高いねー」
「えへへ、わかるー?」
「誰が見たってわかるよー!」
モモちゃんはそう言って笑っていた。
「それにー、もう会ってから二年経つんだよー?分からなかったら友達じゃない……」
モモちゃんの言葉尻が弱くなり、黙りこくてしまった。それどころか、こちらを見て悲しそうな表情を浮かべている。
急に様子が変わったモモちゃんが心配になり、私はすぐに声をかけた。
「モモちゃん……?急に黙ってどうしちゃったの?」
私に話しかけられたモモちゃんは、おそるおそる口を開いた。
「......もう、二年が経つんだよね?」
「うん......?」
「だから、あと一ヶ月もないのかなーって」
モモちゃんは、そう言って少し潤んだ目で私のことを見てきた。そんな表情もかわいいなぁ。
じゃなくて!
モモちゃんは、私の言ったことを覚えていたのだ。私が転勤族であり、同じところに居られた時間はは長くて二年までだったということを。
私は嬉しかった。二年も前に言ったことを覚えていてくれたこと。そして、そのことで悲しんでくれたこと。
私は、満面の笑みを浮かべながら、モモちゃんに抱きついた。
「えへへ、ありがとー!それと、心配しないで」
急に抱きつかれたモモちゃんは戸惑ってキョトンとしていた。
「実はね、来年も一緒にいれるの!」
「......え!?ほんとー!?」
「ほんとだよ!私も朝聞いてびっくりしちゃった!モモちゃんがよければ、来年も仲良くしてほしいな......?」
「もちろんだよ!一緒のクラスだといいね!」
私たちは互いに喜びあい、キャイキャイと騒いでいた。
その途中、扉の方からガタンと音がしたのは気のせいだろう。
*
時はさらに少し流れ、私は、初めて、同じ学校で三年目の新学期をむかえた。
この日をむかえたことに、私の胸は高鳴り、とても新鮮で、爽やかな気持ちだった。
始業式では、別の場所に待機する必要もなく、二年生のクラスメイトと共に列に並び、最高学年としての自覚を説かれた。
校長先生の長い話も終わり、一度、二年生のときの教室へと戻る。
これから始まるのは、今のクラスとのお別れ、そして、新しいクラスの発表である。
「モモちゃん、ミルクちゃん!次も同じクラスだといいね!」
私はそう言って二人に同意を求めた。
これにモモちゃんはすぐにこたえてくれる。
「そうだねー!次も同じなら三年連続だよー!」
ミルクちゃんもいつも通り、少し間を置いて、こたえてくれる。
「......そう、だね。けど、もしそうだったら、 お姉ちゃんとは、同じクラスに、なれないと、思うよ」
「はっ!そっか、みんな一緒は無理だよね......」
「一人だけほかのクラス、とかにならなきゃいいねー」
私たちは、期待と不安、そのどちらもを胸に抱えながら、先生が来るまで話を続けた。
先生が来ると、いよいよだ、と心拍数が上がったのを感じた。
私たち三人の出席番号は一番から三番で連続している。というのも、出席番号の順番は五十音順だからだ。
先生のお別れの挨拶が終わり、クラス分けを発表する、と先生の一言があった。
これに、クラスの皆は様々な声をあげる。当然、静かにするようにと先生の注意が入り、教室は静寂につつまれた。
「それでは、出席番号順に発表します」
「一番、愛洲美瑠玖。A組」
「二番、和泉友夢。B組」
「三番、苺谷もも。B組」
「四番......」
まず、モモちゃんがこちらを見る。私もモモちゃんの方を向き、顔だけで最大限の喜びを伝える。
次に、モモちゃんの視線はミルクちゃんへと向かった。私もつられてそちらを向く。ミルクちゃんは私たちの方へ顔を向けることはなく、前を見続けていた。
こちらからミルクちゃんの表情を伺い見ることは出来なかった。
「まだ新しいクラスが発表されていない方はいますか?......いないようなので、これから新しい教室へ移動してもらいます。それでは速やかに行動に移ってください」
全員のクラスが発表され、教室からは様々な声が聞こえるが、喜びの声の方が多いように感じた。
私は、すぐにモモちゃんのもとへと向かおうとするが、モモちゃんはミルクちゃんのもとへすっ飛んで行ってしまった。
「ミーちゃん!きっと他の三人の誰かが同じクラスだよー!元気だしてー!!」
ミルクちゃんの表情は曇っていたのだろうか。モモちゃんの席からも見るのは難しいだろうが、モモちゃんはミルクちゃんが悲しんでいると思っているようだ。
私も急いでミルクちゃんのもとへとむかったが、その表情はすんっとしていた。思っていたよりも悲しんでいないようだった。むしろ、モモちゃんの方が悲しんでいるくらいである。
「ミルクちゃん、大丈夫?」
「別に、へいき。どうせ、お姉ちゃんが、とんでくる」
「これは......重症だねぇ。ミーちゃんが、コーちゃんを求めだしてる」
「モモちゃんと、別々に......」
ミルクちゃんはとうとう、ふぐぅっと弱音をはいた。どうやら、同じクラスに会話できる人がおらず不安らしい。私とモモちゃんでなんとか慰めながら教室を移動する。
階段をのぼって、すぐの所にA組の教室がある。そのため、そこで、ミルクちゃんとはお別れだ。
「あれ、クーちゃん。もしかしてA組ー?」
「むぅ?あぁ、モモ。そうだよ、もしかしてモモも?」
「ううん、私はB組ー。けど......」
「クレアちゃん......!」
ミルクちゃんが、クレアさんにひしっと抱きついた。その表情はかなり安心しているように思える。
「むぅ!?ミルク、どうしたの。え?同じクラス?それは、よかった。それより、離れて欲しいな。こんな所をココアに見られたら......」
クレアさんのその懸念は見事に当たる。
「あー!!!!!クレア、なにしてるの!?離れな......私もー!!!」
ココアちゃんはミルクちゃんとクレアさんを引き離すと予想していたが、そうではなく自分もそこへ飛び込んで行った。相変わらず、ミルクちゃんが絡むと予想の斜め上をいくようだ。
「あれ?ということは、二人、同じクラス?」
クレアさんは、自身に抱きついてくる二人を見下ろしながらそう言った。
その言葉を聞いたココアちゃんはミルクちゃんへと抱きついた。
そして、そのまま、A組の教室へと引っ張っていった。もちろん、ミルクちゃんに抱きつかれているため、必然的に、クレアさんも引きずられていく。
「モモ!それじゃ!ミルクは預かったわ!」
「お姉ちゃん......!ひっぱら、ないで!」
「ミルク、くるしい」
そうして、騒がしい三人組はA組の教室へと入っていった。
「騒がしいのは一人だよー」
「それはたしかに」
私とモモちゃんはそう言って笑いあった。
笑いながら、B組の教室に向かった。
笑いながら、B組の教室に入った。
そこには……キナコちゃんがいた。
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