キナコちゃん
よろしくお願いします!
クレアさんがココアさんを連れて教室に戻ってから、少し経過して担任の先生があらわれた。そして、いくつかの配布物や生徒手帳の読み合わせ、自己紹介などを行い、その後は下校となった。
モモちゃんとミルクちゃんはすぐには帰らず、少し会話をしていたので、私はそこに混ぜてもらうことにした。
「モモちゃん、まだ帰らないの?」
「うん、他のクラスはもう少しかかるみたいだから待ってようと思って」
「そうなんだ。もしよかったらその他の子が来るまででいいから少し話さない?」
「うん、もちろん!」
「ミルクちゃんもいいかな?」
「……べつにいいよ」
「ありがとー!!」
そうして私たちは少しの間、三人で会話をした。
そこでの会話は中学校のことをはじめ、私の以前までのことなど様々なことを話した。例えば、どんな部活に入りたいか、どこから引っ越してきたのか、今までの友達とはどうしているのかなどである。
その際に、私の家族が父親の転勤によって、よく引越しをしており、今までに一か所にとどまったことは長くても二年であることも話した。
「……!」
「あれー?ということは、卒業まで一緒にいれないのー!?うそー!?せっかく出会えたのにー……」
「あはは、そんな大げさだよ。もしかしたら、最後までいれる可能性が……ないわけじゃないし。気にしないで?」
「けどー、今までに一回もなかったんでしょ?残念だよー……」
モモちゃんはそう言って肩をがっくりとさせた。
今日、出会ったばかりの私に対してここまで残念そうにしてくれるのは少し驚いた。出会ってから初日で、こんなに感情をあらわにしてくる人は初めてだったからだ。
*
「あ、そういえば、結局筆箱使わなかったね」
「……筆箱?」
「実は、私が筆箱を忘れて困ってたところにモモちゃんが話しかけてくれて」
「けど、私も筆箱忘れてて!びっくりしたよぉ~」
そう言って、私とモモちゃんは笑いあった。
「……モモちゃんが、忘れものなんて、珍しいね?それくらいなら、私に言ってくれても、よかったんだよ……?」
「そう?それじゃあ、今度はお願いするよ!明日とか!」
「……ふふっ、忘れないでっ」
ミルクちゃんはそう言って、ふわっと笑顔を見せた。かわいい。そう思いながらミルクちゃんをじっと見ていると、私の視線に気づいたのかこっちを見て、ハッとしてモモちゃんの陰に隠れた。
「……じっと、見ないで」
ミルクちゃんは顔を赤くし、ボソッとつぶやいた。
やっぱりかわいいなあ。
「ミルクー!ふふっ、おまたせ、待った?」
「……待ってない」
「ココア。それグレーゾーンじゃない?」
「え、これも!?モモ、厳しすぎるわよ!他に人がいるわけじゃないしこれくらい……」
「反省の色くらいみせなよ……」
「うぐっ。気を付けるわ……」
突然のココアちゃんの登場により、教室はさらにわちゃわちゃとしてきた。本当にさわがしい人であると思うが、それと同時に面白いとも感じる。
それよりも、ココアちゃんが来たということは今日はもうお別れだ。
「モモちゃん、ミルクちゃん。ココアちゃん来たし、そろそろ帰るね!ココアちゃんもまたね!」
私はそう言って三人に手を振り教室を出ようと扉の方に向かった。
そこには、少し前にココアちゃんを連れ帰ったクレアさんと、もう一人、眼鏡をかけたおさげの少し身長の低い子がいた。
私は、二人に対してぺこりと軽く頭を下げてすれ違った。
*
「ねぇ、クレア。あれ、だれ?」
「むぅ?知らないよ。多分、モモの知り合いじゃない?見ない顔だし、転校生かなんかだと思うけど」
ユユが帰ったあと、教室の扉のそばに居た二人はそう会話をしながら三人のもとへ向かった。
「あ、キーちゃん!どうしたのー?遅かったねー、ずいぶん待ったよ!」
「そうね。キナコ、三十分は待ったわよ?」
キナコと呼ばれた人物は、二人に長時間待たされた文句を言われ、ミルクにはじとっとした目線を向けられていた。
キナコなそんな三人の様子に少し申し訳なさそうにしながら、謝罪をした。
「う、.........ごめん。初日で色々と知らないことが多かったから、先生に質問してたら少し時間がかかっちゃって」
「あ、そんなに気にしなくていいよー。キーちゃんは、頑張り屋さんだからなー。もう少し色々と気軽に考えてもいいと思うんだけど」
モモはそう言って、キナコのことを評した。これには他の三人も同意なようで、うんうんと首を縦に振っていた。
「まぁ、そこがキナコの長所であって短所よね」
「だから、悪かったって!次は気をつけるよ」
ココアは傍から聞けばさらに責め立ててるようであったが、その表情は柔らかく、キナコもそれが分かっているようだった。
「そういえば、モモ。さっき帰った子、だれ?入学式後にも少しみたけど」
クレアは、キナコに聞かれて自分でも気になっていたのか、モモにユユのことをたずねた。
「.........そうだね、モモ。あの子、だれ?」
それを聞いたキナコは、少し表情を冷たくし、教室の扉の方をチラッと見ると、モモを問いただした。
しかし、モモはそんなキナコの変化を気にした様子はなく、のほほんとした笑顔のまま質問に答えた。
「あ!ユユちゃんのことー?可愛いよねー!」
「かわいいって、あんた.........」
モモの言葉に、ココアは思わずツッコミを入れていた。
「.........転校生で、転勤が多いご家庭らしい、よ。だから、だい.........」
「そう、そうなのー!今までも長くて二年くらいしか同じ学校に居れなかったんだってー!せっかく会えたのに、本当に残念.........」
モモの説明になっていない説明に、先程まで話していたことをミルクがつけくわえると、それを遮るように引き継ぐようにモモが話した。
ミルクはモモにじとっとした目線を向ける。
それに気づいたモモはさすがに自身が興奮し過ぎていたと感じ、「あははー……ごめんね」と反省し、モモのことを説明しようとしたが、今度は逆にミルクに遮られた。
「.........モモちゃん。そういえば、お母さん、待ってなかった?」
「あ」
モモの顔はみるみる青ざめていった。そして机をがたっと鳴らしながら慌てた様子で立ち上がった。
「やばっ、忘れてたぁー!?ごめんね、先に帰るー!!」
「.........また、明日ね」
「人のこと言えないわね。じゃ」
「ばいばい」
「ちょっと!話はまだ.........」
「ごめんねー。ミーちゃん、あとは頼んだー!」
「.........ふぇ?」
そうして、モモは飛び出すように教室を出ていった。
「あ、モモ!廊下は歩きなさい!!」
「そうだったー!キーちゃん、ありがとぉー!またね!」
「注意されて、ありがとうって.........まぁ、モモらしいわね」
教室に残った四人は、慌ただしいモモに対し、軽くため息をつき、一息ついた。
「私達も、そろそろ帰らないと」
クレアが自分たちも早く帰らないといけないときりだす。
しかし、その言葉に頷く者はおらず、
「.........けど」
「そうね、その前にキナコ。気になってるんでしょ」
ミルクとココアはそう言ってキナコの方を向いた。それにつられてクレアもキナコの顔を見た。
「.........うん。さっきの娘のこと、もう少し聞いてもいい?」
キナコはユユのことを気にしているようだった。この質問に対しては、ミルクが、
「モモちゃんに、頼まれたから、私が話す」
と言って、モモが話しきれていないことを説明した。
*
「.........そう。二年間か、長いな」
「少なくとも、今年はあまり関係ないだろうし、
気にしすぎよ。ミルク、あなたは大丈夫なの?」
「私は、友達できて、うれしい.........かな。基本的に、クラス内に留めるし、キナコちゃんは、気にしないで」
ミルクの話を聞いて、キナコは浮かない顔をしていた。これに、ミルクとココアは気にしないでいいと声をかける。
その後、少し会話が続き、話がある程度まとまっていった。
その様子を見て、ずっと静観を保っていたクレアが口を開いた。
「お腹空いた。帰りたい」
この場にいた全員の気が抜けたのは言うまでもないだろう。
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