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ミルクちゃんとココアちゃん

よろしくお願いします!

 私とモモちゃんが二人で会話をしていると、話しかけてきた人物がいた。



「モモ、ちゃん……?」



 その人物はおとなしそうな子で、何となく「白」を感じさせる雰囲気だった。目元は優し気で、どこかおっとりとしており、見ただけで控えめな子だとわかった。その子を見たモモちゃんは、ぱあっと顔をほころばせた。



「ミーちゃんもこのクラスだったのー!?やったー!!」


「う、うん。それでね……」


「あれ、コーちゃんは?いつも一緒にいるのにー……」


「えっと、クーちゃん、に連れられて、行ったよ。同じクラス、だったみたい」


「あはは!そっかー、ついにわかれたかー。ミーちゃんはどー?コーちゃんいなくても大丈夫そー?」


「むぅ!別に、大丈夫だよ……お姉ちゃんが、ついてきてる、だけだもん」


「あー……それは否定できないなー」


「……」


「……!」



 私!蚊帳の外!!


 あれ?モモちゃん、紹介してくれてもいいんですよー?そのかわいい子だれですかー?ミーちゃん……は、愛称かな?


 ……気まずい。


 私、どうするのが正解かなぁ。と思いながら未だに会話を続けているミーちゃん?の方をちらっと見てみると。


 その子はびくっと反応し、ふいっと目をそらしてしまった。反応がおっかなびっくりな子だなぁ……さすがに初対面で嫌われることはないだろうし、人見知りなのかな?


 モモちゃんは、その子の様子に気が付いたようで、ハッとしてこちらに振り向いた。



「ご、ごめんねー!ほったらかしにしちゃったー!幼馴染が同じクラスだったから、つい……本当にごめんねー!」



 モモちゃんの本当に申し訳なさそうな様子に、私はとっさに気にしないで、と返した。そして、私はその幼馴染の子に目線を移して紹介してほしそうな雰囲気を醸し出した。


 モモちゃんはその様子にすぐに気づいてくれて、その子の紹介をしだした。


「ミーちゃん、この子にミーちゃんのこと、紹介してもいーい?」


「……別に、いいけど」


「ありがとー!ユユちゃん、ミーちゃんはね、愛洲美瑠玖っていう名前のー!可愛らしい名前だよねー……私の幼馴染で、よく一緒に遊ぶんだー!」



 そう言ってモモちゃんはミルクちゃんのことを紹介してくれた。私は、ミルクちゃんの方を向いて、



「私は、和泉友夢。良ければユユって呼んで!よろしくね!ミルクちゃん!」



と、言って挨拶をした。


 これに対して、ミルクちゃんは、またびくっとして、ささっとモモちゃんに隠れた。


 私、本当に嫌われてる……?そう不安になってると、ミルクちゃんがモモちゃんの陰からひょこっと顔を出して目線をそらしながらであったが、



「……よろしく、お願い、します、ユユ……さん」



と、返事をしてくれた。



*



 私は、また蚊帳の外にならないように、こちらから話題を振った。



「そういえば、さっき言ってたコーちゃんってどちらさま?」



 この質問に対してミルクちゃんはあまり話したくなさそうにしていたが、モモちゃんが答えてくれた。



「えっとねー、ココアっていって、ミーちゃんの双子のお姉ちゃんだよー。しっかりしてて頼りになるんだけどー……」


「なるんだけど?」



 モモちゃんは、ここで口を閉じてミルクちゃんの方を振り返った。



「ミーちゃん、どうするー……?言っていーい?」


「だめ……ユユ、さんは、知らなくて、いい」



 モモちゃんの質問に対して、ミルクちゃんは私を突き放すような言い方をした。……あれ?何かしちゃったかな。と、またまた不安になっていると。


 教室の扉が勢いよく開き、ミルクちゃんに向かって飛んでくる人物がいた。



「ミルク~!!お姉ちゃんが、会いに来たよ~!!!」



 その人物にミルクちゃんはむぎゅっと抱きしめられ、そのまま涙目を浮かべてつぶやいた。



「知られたく、なかったのにぃ……」



 なるほど、これか。



*



 ミルクちゃんに向かって飛んできた人物はおそらく、その姉であるココアという人であろう。


 だって、本人がお姉ちゃんって言ってたし。


 モモちゃんの話によるとミルクちゃんとは双子らしい。その容姿は瓜二つで、色の印象がチョコレートみたいな黒めの茶色を想像させる。髪の毛が茶色がかっているからだろうか。


 チョコレートの甘さはミルクちゃんに対する態度、ほろ苦さはその目元からうかがえる。その目元は、つり上がっており、強気な印象を受ける……かもしれない。だって、今、甘々なんだもん。


 さて、ミルクちゃんが話したくなかった理由は何となくわかった。ただ、これは……



「ミーちゃん、これは隠し通せなかったと思うよー。さすがに」


「でもぉ……」



 私も、そう思う。しかし、ミルクちゃんはどうにかなると思っていたようで、何かを言いかけるが、ココアさんに遮られてしまった。



「ミルク、何か私に隠してるの!?」



 そう言ってココアさんは、モモちゃんになだめられるミルクちゃんに心配した顔を向ける。心配してるのは本当だろうが、見当違いな気がする。そのココアさんに、ミルクちゃんはおどおどと困った表情を向けていたが、



「ココア」



と、モモちゃんに声をかけられると、ココアさんの雰囲気がスッと変わった。



「わかってるわよ。けど、皆知り合いじゃない。隠すも何もないでしょ?」



 ココアさんはそう言って、何をいまさらと、そうモモちゃんに伝えた。それを伝えられたモモちゃんは呆れた顔をしながら、



「後ろ、後ろ」



と言って、私の方を指さした。


 ココアさんはゆっくりとこちらに振り返ると、きょとんとした表情を向けた。


 その表情と私の気まずい表情が交錯する中、沈黙だけがその時間を流れた。


 そして、ゆっくりとモモちゃんの方に視線を戻した。



「そういえば、クレアと……」


「ココア」


「……」


「……」



 モモちゃんとココアさんの間で無言が続く。


 私も含めて三人の沈黙を破ったのはミルクちゃんであった。



「約束したのに……」



 ミルクちゃんがボソッとつぶやいた言葉が耳に入った。その言葉から推測すると、ココアさんとミルクちゃんは何らかの約束をしていたようだった。私は、そのことについて詳しく聞こうと話しかけた。



「ミルクちゃ」


「ミーちゃん、約束って?」



 ……モモちゃんに遮られた。さっきから私、空気過ぎないだろうか。今思えば、まだ、ココアさんに自己紹介してないし、されていない。しかし、話の流れが違うため、様子見するしかなかった。まだ知り合ったばかりなのも理由だ。


 ミルクちゃんは、しょんぼりした様子のまま話し始めた。



「お姉ちゃんは、いつも、私と一緒だから、学校では、あまり、近づきすぎないでって、言ったの……けど、お姉ちゃんが、嫌だって、言うから、じゃあ、せめて、私の教室と、私たち五人以外の人がいるときは、やめてって」



 その話を聞いたモモちゃんはココアさんの方に向き直り、一言、



「ほんとう?」



と尋ねた。さて、その質問をされているココアさんだが……顔を青くして少し震えていた。


 何となく力関係が見えた気がする。


 私は、いまだ空気。三人の会話は続く。



「ち、違うのよ?さっきまでは、ちゃんと約束を守るつもりだったの。けど、お手洗いに向かう途中でミルクが見えて、近くにいたのもモモだけだって思って……」


「ミーちゃんの教室でもくっつかない約束なんでしょ?」


「うぐっ……」



 ぐうの音も出ないとはこのことだろうか。まあ、話を聞いた限りだとココアさんにしか非がないようだし、当然ではあるだろう。



「……ミルク、私が悪かったわ。次からは気を付ける」


「……もう、いい」


「……」



 なんだか、気まずいなあ、と私は居心地が悪くなる。私は、まだまだ空……



「そうだ!あなた、自己紹介がまだだったわね!私は、ミルクの姉のココアよ!ミルクがお世話になる……ミルクは渡さないわ!」



 えぇ!?突然、私!?さっきまで空気だったのに!!?


 私が驚いている中、モモちゃんと、ミルクちゃんは、



「モモちゃん、……ありがとね。」


「……もういいのー?」


「うん」


「そっかー」



 ……さっきのでよかったみたいで、二人で仲良く話をしていた。


 ど、ど、どうしようと、私は、突然の展開に戸惑い、慌てた。正直、自分はココアさんの眼中にないと思って油断していたのだ。


 こちらを見てくるココアさんの表情がきょとんとしたものになってきた。それこそ、あれ、どうしたの?とでも言わんばかりだ。


 ……私、さっきまで放置されてたんですけど。


 助けを求めるように、モモちゃんに視線を移す。


 モモちゃんは、微笑んだ。


 モモちゃん、かわいい。


 ミルクちゃんにも、視線を移す。


 ビクッと、飛び跳ねるミルクちゃん。助けは期待できそうにない。


 私がそうしていると、ココアさんがばつが悪そうな顔で話しかけてきた。



「……冗談よ。さっきは気付かなくてごめんなさい。それと、変なところを見せちゃって。ミルクとも、仲良くしてくれると嬉しいわ」



 私は、愕然とした。


 ……この人は誰ですか?


 会ったばかりで失礼だが、そう口に出しそうになった。先ほどの、ミルクちゃんとの約束を破り、モモちゃんに詰め寄られていた人と同一人物とは思えない。そう考えたが、ここで私はモモちゃんの言葉を思い出した。



『しっかりしてて、頼りになるんだけど……』



 確かにそう言っていた。それに、ココアさんがミルクちゃんに抱きついてた時にモモちゃんが呼び掛けただけで、スッと人が変わったようになっていた。これは、つまり、



「ごめんなさい。私、実はミルクのことになるとつい我を忘れちゃうのよ。さっきは、ミルクと別のクラスだったことにショックを受けてたから尚更ね……」



ということらしい。これを聞くと、先ほどまでのココアさんの行動が理解できるだろう。いや、理解できる……か?


 私は、ようやくのことで落ちつき、返答することができた。



「えっと、そうだったんだね?突然だったから驚いて声も出なかったよ。私は、和泉友夢。よかったらユユって呼んで?よろしくね、ココアさん」


「ん?同い年なんだし、さんは別に要らないわよ?よろしく、ユユ」


「……よろしく、ココアちゃん!」


「ちゃんって……まあいいわ」



 こうして、私はミルクちゃんとココアちゃんと出会ったのだった。

ありがとうございました!

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