告げられる真実
よろしくお願いします!
朝、登校して教室に向かうと、そこにキナコちゃんはいなかった。私がこっちにきてからの友達。特別、仲が良いわけではないが、私はどこかキナコちゃんのことを意識していた。
彼女は、学級委員を率先して務め、吹奏楽部の部長でもある。つまり、リーダー的な立場に就くことが多く、それが私の目を引いたのだろう。
それにしても、修学旅行の班をどうしようか。そこまで話すわけではないが、当てがキナコちゃんしかいない。私の記憶が正しければ、今日の放課後に班を決定するはずだ。朝のうちに誘ってしまおうと考えていたが、最近のキナコちゃんは調子が悪いのか、学校に来るのが遅い。仕方ないので朝の時間はゆっくりと自分の机で過ごすことにした。
朝のホームルーム開始の、ギリギリの時間になってキナコちゃんは来た。さすがにそんな短い時間で話しかけられるわけもなく、仕方なくホームルームと一時間目の間に話しかけることにした。
ようやく終わったホームルームでは、今日の放課後に班決めをするために教室に残るように伝えられた。話の流れとしてはとても良いので、このまま話しかければうまくいくのでは、と期待する。
「キナコちゃん。キナコちゃんは、もう班決まった?もし、決まってなかったら入れて欲しいなぁって」
「……決まってない」
「ほんと!?それなら……」
「けど、他の人を当たって。私は、あなたとは嫌だから」
私は思わず固まってしまった。今まで、やんわりと断られることはあったが、ここまで直接的に断るのは初めてだったからだ。
「えっと……え?り、理由は?なんで?」
「ごめん、何となくとしか言えない。強いて言うなら……高校では皆と離れ離れになるから、小学校からの知り合いと行きたい……気がする」
「そ、そっか……ごめんね、無理言っちゃって」
「それじゃ……次、移動教室だよ」
キナコちゃんは理由を説明してくれたが、自分でもわかっていないような言い草だった。
そのまま、特に会話もなく放課後へと時間は流れた。
キナコちゃんは、教室にいる同じ部活の子と班を組んでいるようだ。人数も定員いっぱいでこれ以上、人の入る余地はない。他の班も同様で、以前見かけたモモちゃんも楽しそうに班の人と話していた。
……私は、余ってしまったようだ。
幸い、クラスの人とは大体話をしたことがあるし、悪い印象は持たれていない。基本的に挨拶をすれば、笑いながら顔を向いて挨拶を返してくれる。
そのおかげで少し人数が空いている班に入れてもらえた。
私たちはここで一度、完全に離別したのだった。
*
夢の世界が始まる。この感覚は、どうにもなれない。なぜかと言えば忘れていた記憶が頭に甦ってくる感覚が一気にくるため、少しクラクラするのと若干の恐怖を感じるからだ。
今回は私が一番で、順番をどうやって決めているのかは不思議に思うが、そんなことを考えている合間にキナコちゃんがやってきた。
キナコちゃんはこちらを一瞥すると、感情を感じさせない顔のまま周囲を確認し始めた。それから、一分ほど立ち尽くしていると歩き始めた。
「まだ〜、スタートしてないよ?」
相変わらず突然現れるエミによって、キナコちゃんは突っ込まれると、少し苛立ちを見せながら、
「早くして」
と、一言だけ述べる。
「まったく、仕方ないなぁ〜……それじゃあ、すたーとー!」
意外にも素直に要求を呑んだエミはすぐに開始の合図をした。
そして、キナコちゃんは迷いなく歩き出す。
私も、はぐれないようにして、それについて行く。
しばらくの間、無言が続いていたが、キナコちゃんから話しかけてきた。
「あんた、どうして私を誘ったの?」
「……え?」
「……修学旅行の話。あんたも、本当は気づいてたんじゃないの?」
「何のこと?」
「……この世界で強く印象に残ったことはぼんやりと覚えてる。何かに対する感情とかが特に。私はあんたに対する怒りがあった。だから断った。あんたは私に何も感じてないの?」
「何もって……それは、モモちゃんの友達だから仲良くしたいとか……」
「……やっぱり、あんた嫌い」
「えぇ!?そんなこと言わないでよー……」
「だから、全部話す」
キナコちゃんはそう言うと、歩きながら説明を始めた。
まず、キナコちゃんはもともと、五人の間に誰か人が入ってくることが嫌だったらしい。それでも、長くても二年と聞いて我慢していたそうだ。しかし、突然三年目も一緒となってしまった。
また、高校では皆が離れ離れになってしまうため、中学のうちに五人での思い出をたくさん作っておきたかったこともあった。これは、現実での発言から本当のことだろうとわかる。
これにより、キナコちゃんの不満は爆発した。全員で話を合わせ、私をハブることを計画したらしい。修学旅行で一緒の班にならないこともその計画の一端であった。実際は、モモちゃんが全く言うことを聞かずに私と話しており、修学旅行の班に関しても結局、答えを聞けなかったそうだ。
「まぁ、何も意味なかったけどね。もう、皆バラバラになっちゃった……あんたには、悪いとは思ってる。けど、それでも、私は皆とだけの思い出が欲しかった」
そこからは無言が続く。キナコちゃんは話すことはもう話したとばかりに黙っている。私は、ただひたすらキナコちゃんについて行く。
「あんた……いつまでついてくるの?もう、モモ達はいない。ついてくる理由ないでしょ?」
「けど、一人は……」
「……好きにして」
キナコちゃんはまだ歩みを止めない。この間、敵とは全く遭遇しなかった。これは、キナコちゃんのおかげもあるが、昨日に二人もいなくなったのが要因だろう。
キナコちゃんは、足を止めた。
たどり着いた場所は……ユニコーンのいる場所だった。
ユニコーンは寝ており、私には気配を感じることができず、ここまで来てしまった。
私が、どうして、と疑問を突きつける暇もなく、キナコちゃんはユニコーンへと近寄って行く。
そして、拳を振り上げ、叩きつけた。
血相を変えて、先程まで話していた雰囲気とは全く異なる。
「モモを……!ミルクを……!ココアを……!クレアを……!返して!!返してよ!!!」
何回も、両手の拳を叩きつける。その攻撃は慣れないもので、子供が怒ってポコポコと叩いてくるようであった。しかし、そこに込められた思いと力はその比ではなく、側から見ている私も責められているような気持ちになる。
そんなキナコちゃんを、さすがのユニコーンも無視できなかったようだ。立ち上がり、前足で軽く押し退ける。
それでも、キナコちゃんは何度も拳を叩きつけた。
そして、その時はきた。
ユニコーンは、口を開けてキナコちゃんの頭へと近づけていく。あと少しのところで、キナコちゃんは私の方を向いた。
「じゃあね、ユユ」
直後、キナコちゃんの頭は噛み砕かれて、光となって消えた。
残された体も急速に光へと変わっていく。
モモちゃん、ミルクちゃん、ココアちゃん、クレアさん、キナコちゃん。この五人の幼馴染は全滅した。
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