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夢見るロンリーガール 〜Dreaming Lonely Girl〜  作者: 樹唯
第一章 ロンリーガール
28/31

崩壊

よろしくお願いします!

 私は本当にいないものとして扱われていた。試しに皆に何度か話しかけたが、そんな暇はないとばかりに三人で会話を続けられて無視された。


 今、私にできることはなく、ただ少し離れ所を歩いて後ろからついて行っている。


 皆は、敵をどうしても回避できない時は、キナコちゃんの指示により、即撃破。その戦闘により全く音が出ないということはなく、徐々に周囲に敵が集まっていく。


 そして、クレアさんが前に出ている隙を敵が狙い、キナコちゃんへと向かっていく。これには、仕方なくココアちゃんの爆発が使わされ、さらに敵が集まる。


 今までは、ミルクちゃんによって完全な受け身の防御ができていた。しかし、ミルクちゃんがいなくなってしまったことで、攻撃による排除でしか敵からの脅威から身を守ることができない。その上、ココアちゃんの爆発は連発では敵を倒すことができず、自分だけでなくキナコちゃんをも守るためには何度も音を鳴らす必要があった。これに加えて、止めの一際大きな爆発により、どんどんと敵が寄ってくる。完全な負のループであった。



「むぅ……キナコ、どこか逃げられる方向は……?」


「……ない。でも、数が多すぎて遠くまではわからないけど、数が少ない方向ならわかる」


「もう、それに賭けて、一点突破しかないわね……!」



 あまりの戦闘の激しさに、ココアちゃん達はこの場からの退避を選択する。しかし、現状はそれを簡単には許してくれず、それを為すには一か八かの賭けに出るしかないほどだった。



「ココア、今できる最大威力の爆弾を作って。それができたら、キナコの合図でそれを私たちの向かう方に投げて、全力で走ろう」


「わかったわ、すぐに始める」



 ココアちゃんは、クレアさんの指示によって片手で爆弾を作り始めた。もう片方の手では、瞬時に作れる爆弾を作り出し、敵を自分へと近づけないように爆風で押し退けていた。


 先程キナコちゃんを守っていた負担はクレアさんへと移る。これにより、敵を倒すことが困難となり、さらに敵の密集の度合いが上がる。



「できたわよ!!」


「よし、せーのでいくよ!せーの!!」



 キナコちゃんの掛け声に合わせて、爆弾が飛んでいく。その方向にいた、ウサギ数羽とカメレオン数匹を吹き飛ばし、砂煙があがる。倒すことはできなくとも、数匹吹き飛ばすくらいは可能なようだ。それを隠れ蓑にし、全力で包囲網を抜ける。


 ココアちゃんがおまけに後ろに爆弾を何個も投げつけたおかげで、敵との距離をそれなりに離すことに成功した。


 敵から逃れたことに喜び、このまま駆け抜けようと前を向くと……そこには、ユニコーンが立っていた。


 皆は、足を止めるしかなかった。唯一の道筋だったところを最大の敵に立ち塞がれてしまったのだから、そうする他なかった。


 背後からは、やっとの思いで突き放した敵が近づいてくるのが、足音とそれによる地面の揺れによってよくわかる。


 背後を向くと、すぐ側まで来ていた敵が、攻撃の態勢へと移ろうとしていた。なんとか防ごうとするが、ユニコーンを無視することはできず、対応が中途半端になってしまう。このことで、敵の数に押され劣勢となる。


 それを黙って見ていたユニコーンが……嘶いた。


 突然のことに、皆は咄嗟に後ろを向き驚愕の表情を見せた。


 戦闘中に致命的な隙を晒してしまったが、それでも全員、無事であった。


 なぜなら、全ての敵が動きを止めたから。


 ウサギたちは、動きを止めた後、一歩ずつ慎重に後退りをし、数メートル離れた所で静止した。


 そして、ユニコーンはそれを見届けると、私たちについてこいと言わんばかりに歩き出した。


 ウサギ達からすぐには攻撃されない辺りまで移動すると、ユニコーンはすぐに攻撃の意思を示してきた。ここから、ユニコーンとの戦闘が始まったのだった。


 ミルクちゃんがいなくなってしまえば、ユニコーンと相対するのは無理な話である。キナコちゃんを庇いつつ、ココアちゃんが小さな爆発で気を引こうとするが、ユニコーンは全く気にした様子を見せない。だからと言って高威力な爆弾を作ろうとすると、鋭い攻撃が迫ってくるため、自分への爆発で避けざるを得ない。


 そして、クレアさんの攻撃は全く通用しなかった。それもそのはず、モモちゃんの支援があってやっと、体の表面に傷をつけられたのだから、今では弱点すら浅い傷しかつけることができない。


 戦闘開始から何分経っただろうか。ユニコーンは突如、動きを止めた。静かな睨み合いが少しの間続くと、クルッと周り背後を見せながら、私たちとは逆方向に歩き出した。


 とうとう、あの黒い角による攻撃がくるかと、皆は待ち構える。しかし、一向にその気配はなく、ユニコーンは立ち止まることなく、森の方へと向かっていった。



「どういうことなのよ……待ちなさいよ!!!」


「ココア、待って!?」



 キナコちゃんの制止は虚しく、ココアちゃんはユニコーンに食ってかかる。つい先程までの戦闘、弄ばれるかのような戦闘で、ミルクちゃんとの最後の戦いを想起したのだろうか。


 一瞬で、最大威力のハートの爆弾を作り出し、ユニコーンへ投げつけた。


 その爆弾は真っ直ぐ、ユニコーンの背後へと向かっていくが、やつが避ける気配はなかった。もうすぐで着弾するくらいまでの距離になると、ユニコーンはそれを尻尾を使って斜め上へと跳ね返してきた。以前にもしていたが、爆弾を爆発させずに打ち返したのだ。



「……え?」



 ココアちゃんは、自分の頭上の爆発を避けることができず、爆発に巻き込まれてすぐに上半身を失った。下半身はバラバラになり、光の粒子へと変化する。


 私を含めた全員は爆風によって近づくどころか、無理矢理、後退させられた。


 ユニコーンはその様子を一切見ることなく、森の中へと帰っていった。


 あまりの一瞬のできごとに、残された皆は何が起きたのかと理解が遅れた。


 しかし、残された皆に現状を理解し悲しむ暇などなかった。


 後退させられたことで、先程の敵がいた近くまで来ており、さらにユニコーンがいなくなったことに加えて、先程の大きな爆発によって敵が集まってきたのだ。


 いち早くこの現状を理解したクレアさんは、キナコちゃんを真正面から見つめてこう告げた。



「……キナコ、私が道を切り開く。だから……」


「やだ、やだよ!クレアまでいなくなったら……私、一人になっちゃう!!」


「けど、これは、もう……」



 泣きつくキナコちゃんに、困った表情を見せるクレアさん。彼女は少し目を瞑ると、覚悟を決めた顔をした。



「わかった。キナコ、そこにいて。何があっても、絶対に動かないで」


「……え?」



 クレアさんはそれだけを言うと、キナコちゃんが何かを言う前に敵の群れへと向かって行った。


 どこにそんな力があったのかと、そう疑いたくなるような勢いで、クレアさんは敵の弱点を斬り裂き、次々と倒していく。それは、とにかく目の前にいる敵のみを倒しており、常に動き続けることで敵からの攻撃を避けていた。


 その勢いは見事に一身に注意を引き寄せ、キナコちゃんに向かう敵がほとんどいなかった。自身に向かってこない敵には、近くにいる敵を投げつけて注意を引く。


 ただ、そんな大立ち回りを演じていれば、無傷とはいかない。だんだんと傷を増やし、敵を三割ほど倒した所で目に見えて動きが悪くなった。


 その隙は、数多いる敵が見逃さない。


 まず、カメレオンの舌によって足を掴まれた。これにより、足から段々と痺れ、動きが止まる。


 次に、何羽ものウサギにより、体の至るところを貫かれた。


 これだけで、もう致命傷だ。助かる術はない。


 キナコちゃんは、その様子を見て泣き叫び、クレアさんへと近づこうとする。しかし、



「キナコ!!!」



と、クレアさんによる力強い声と眼光により止められる。


 そして、キナコちゃんへと、にっこり笑いかけた。


 最後は、トリによって首を刎ねられた。


 クレアさんが光の粒子へと変わっていく。



「いやぁ……一人にしないで……」



 キナコちゃんは、すでに戦意を喪失して地面に蹲っている。


 私は周囲の敵を見た。敵は動きを止めている。


 キナコちゃんは生き残り、そして、終わりの鐘が鳴り響く。


 ここにクレアさんの目論み、命懸けの時間稼ぎは達成された。

ありがとうございました!

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