不幸中の幸い
よろしくお願いします!
今日の私は、少しだけ気分が悪い。昨日の夜にまた夢の中で、眼前で何かグロいものをみたような気がするからだ。
気持ちを落ち着けるために、ゆっくりと家で過ごしてから学校へと向かうと、教室にはそれなりに人がいた。昨日見た、モモちゃんと言う子も、他の子と仲良く会話をしている。
教室をぐるりと見回すが、キナコちゃんはまだ学校に来ていないようだった。もう少し、朝のホームルームまで時間があるため、私は、隣のクラスにいるココアちゃんかクレアさんを訪ねることにした。
隣の教室の扉から、その中を覗く。クレアさんはまだ来ていないようで、机には荷物がなかった。一方、ココアちゃんは既に来ていて、彼女によく似た、見たことのない子と仲良く会話をしていた。
そのため、思わず声をかけてしまった。
「ココアちゃん、その子、だあれ?」
「あんた……何しに来たの?ミルクとは話させないわよ。あんたには関係ないんだから」
しかし、ココアちゃんは、強めの口調で私を拒否する言葉を口にしてきた。
「あはは……そんな言い方しなくても。ココアちゃんに妹っていたっけ?何年生?」
「同じ歳よ……もういいでしょ。私、今日はこの子がいなくなる夢を見て不機嫌なの。あっちいって」
彼女はそう言うと、手で私のことをぐいーっと押して、教室の外へと追い出した。そして、
「今日はもうこの教室に来ないで」
と、一言だけ告げて、飛びつくようにしてミルクちゃんの元へと戻っていった。
少し様子を見ていたが、邪魔をして悪かったと思うほどには、イチャイチャとくっついていた。そして、それはどこか既視感があったのだった。
*
夢の世界に来てすぐ、ココアちゃんが泣いていた。
「よかった……よがっだぁぁぁ……私、ミルクのこと忘れてなかった……」
それは安堵の涙であり、ココアちゃんだけが現実でミルクちゃんのことを覚えていたからである。
私が教室に戻った後、キナコちゃんを見つけてミルクちゃんのことを伝えると、何を言ってるのか、からかっているのかと怒られたため、キナコちゃんも確実に忘れていた。この分だと、おそらくクレアさんも忘れていたはずだ。
「なんで、ココアだけ……?姉妹だから……?」
キナコちゃんが明確に自分達とは違う部分からそう推測すると、
「そのと〜り〜」
と、突然エミが口を挟んできた。あまりに自然に混じってきたため、一瞬気づくことができなかった。
エミの言葉に、クレアさんは睨みながらも質問をする。
「むぅ……姉妹だと、どうして記憶を失わない?」
この質問に対して、エミは、
「家族とか血縁関係だと面倒なことになるんだって〜。なんか、目をつけられるとか……まぁ、私の気分でできなくもないんだけど、そうする?」
と、どこか他人事のように言った後、誤魔化すように脅してきた。これによって、このことについてこれ以上、聞くことは難しくなった。
「わ、わかったわ……これ以上、何も聞かないようにするわ」
藪蛇をつついて、ミルクちゃんの記憶を消されては困ると思ったのだろう。ココアちゃんは素直にそう言った。
「物分かりが良くていい子だね!それじゃ、そろそろはじめよっか!あ、今回も少しだけお友達の数を減らしてあるからね!ではでは〜、すたーとぉ〜」
エミは、モモちゃんのような間伸びした口調で開始の宣言をすると、どこかへ消えていった。
それを確認して、私は三人へと今後どうするかを聞こうとした。しかし、
「家族だって……私たちはもう、モモとミルクこと思い出せないんだって……!」
と、エミがいなくなることで堰が切れたかのように泣き出したキナコちゃんがクレアさんへと抱きついていた。
この様子をココアちゃんが申し訳なさそうな顔をしながら見ている。
クレアさんは、ココアちゃんの様子に目敏く気づき、キナコちゃんを慰めつつも、
「そう……だね。けど、ココアもモモのこと思い出せないのは変わらない。ココアだって、辛いことは変わらない」
と、口にした。
キナコちゃんは、クレアさんの言葉にハッとして、ココアちゃんにも抱きついた。
「ごめんね、ごめん……私、そんなつもりじゃ……」
「わかってるわ……気にしないで」
こんな状況で口を挟むのは難しかった。しかし、この場でモタモタしていると、すぐに敵に見つかってしまうということも重要だ。ただでさえ人が減っていることもあり、ユニコーンとの遭遇は絶対に避けなくてはならないのだから。
幸い、ここではクレアさんがそのことを指摘してくれた。これにはココアちゃんとキナコちゃんも従った。しかし、いざ出発といった所で、ココアちゃんがある提案をした。
「けど、やっぱり……私、こいつのことは許せない……別行動にしない?」
彼女は私を指差し、ミルクちゃんに庇われたことで生き残ったこと、そしてその結果、ミルクちゃんがいなくなってしまったことに怒り、一緒にいたくないと告げた。
私は置いていかれては困るため、なんとか機嫌をとりなそうとしたその時、
「いやぁぁぁ!!!??」
と、突然、キナコちゃんが悲鳴をあげたのだ。
「どうしたの、キナコ!?」
クレアさんがキナコちゃんに駆け寄り、事情を問う。
しかし、キナコちゃんは狂乱しており、周りの声が聞こえていない様子だった。そして、ココアちゃんのしようとしたことを全力で阻止した。
「それは、ダメ!絶対に駄目!誰かを置いていくのはだめぇ!!」
「どうしたって言うのよ、キナコ!」
「それを考えただけで、ユニコーンより、いや、エミよりも強い危機感を覚えたの!!!それをしたら、私たちは絶対に助からない!!」
「わかった、わかったわよ!!連れてくわよ!!!」
キナコちゃんの取り乱し様に気圧されて、ココアちゃんは渋々、発言を取り消した。そのことに、私は安堵する。このままでは、本当に大変なことになるところだった。
「仕方ない……けど、こいつは居ないものとして扱うわよ。皆、それでいい?」
ココアちゃんは自身がぎりぎり受け入れることのできる提案をし、それは誰も否定しなかった。
そして、私たちは生き残るために夢の世界を歩き出したのだった。
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