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夢見るロンリーガール 〜Dreaming Lonely Girl〜  作者: 樹唯
第一章 ロンリーガール
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ユユの不安、新たなる刺客

よろしくお願いします!

「ど、どどどど、どうしよう!?」



 想像だにしていなかった事態に、私はひどく狼狽した。


 正直なところ、私は自分のできることに絶対の自信を持っていた。なぜなら、対象のことを知りたければ、見るだけでいいのだ。


 見るだけ、たったそれだけだった。それだけで全てがわかった。だというのに、キナコちゃんが示した方向にはそもそもの姿が見えない。誰が見えないものがあることを予想できただろうか。そんなこと、知らない、聞いてない!


 少なくとも、対象の能力を知るには見る必要があるのだ。私にはどうすることもできない。



「あちゃー……ユユちゃん、どうするのー?」



 モモちゃんの少し呑気なその声が、私の頭の中に響き渡る。それは、がっかりしているようで。私には、その声が呆れを、失望を孕んでいるように聞こえてしまった。


 これでは、皆の役に立つことができない。


 せっかく、私を中心にした作戦を立ててくれて、皆が期待してくれていたのに、それに応えることができない。


 このことに思い至った瞬間、とある心当たりから嫌な想像が浮かんだ。


 まって、まって!いやだ、いやだよ……私、まだ皆と一緒に……


 私は、みんなの方へ顔を向けることが怖くなった。地面に手をついてへたり込み、怯えた。



「どうしよう……どうしよう!どうしたら!!?」



 悪い想像がいくつも浮かぶ。私は、私は、もう……



「ユユちゃん?そんな手をつくなんて、オーバーだよー?急にどうしたの、びっくりするからやめてよー!」



 そんな私をよそに、モモちゃんは、笑っていた。


 あれ?と、私が何か皆との空気の違いに気づき、



「だって、私……皆の役に立てない……」



と、声を絞るようにして出すと、モモちゃんは何を言っているんだと言いたげな様子で、



「え!?そんなことないよー?あれだって、たぶんだけど、ずっと見えないなんてことはないんじゃないかなー?」



と、あっさりと私の言うことを否定した。


 もしかすると、私のリアクションを冗談か何かだと思っているんだろうか。そう考えて、他の皆の方へと顔を向けると、ココアちゃんと目があった。



「なにしてんのよ……ミルクのことを信頼するのはいいけど、敵の前よ?冗談はやめときなさい」



 怒られてしまった。



「モモちゃん、私、寝不足かな……」


「あははー!ユユちゃん、ここ、夢の世界だよー!!」



 とんだ醜態を見せてしまった。咄嗟に誤魔化した言葉にすらモモちゃんに突っ込まれてしまう始末だ。とにかく、まだ、そこまでじゃなかったらしい。私の考えすぎだったようだ。



*



 私が、項垂れている間も、他の皆は行動に移っていた。ミルクちゃんは当初の予定通り、壁を作り、モモちゃんも力の支援をしている。



「むぅ……ココア。どうする?私がやる?」


「いや、私がやるわ。下手に近づいてクレアに何かあったら困るもの。音を出してでもそうする価値はあるわ」


「わかった、倒さないようによろしく」



 ココアちゃんとクレアさんは話し合いの結果、一度、ココアちゃんが攻撃をしてみることにしたようだ。


 キナコちゃんは、見えない敵を見逃さないように注意を払っている。と言っても、全く動いていないようだが。



「ユユ。ココアが攻撃したら姿が見えるかもしれない。その後はどれくらいかかるか教えて」


「う、うん。わかった。ごめんね」


「むぅ?……なんのこと?」


「え!えっと……ううん、気にしないで」


「そう?なら、準備して」



 私は、クレアさんに指示をもらい、行動に移った。よかった、私は、まだ役に立てるみたいだ。


 いいことが連続した最近に浮かれていたところに、自分のできることが役に立たない可能性が出たことで、その落差から悪い想像が加速してしまったようだ。


 気持ちを切り替えて、キナコちゃんの示した方向へと意識を向ける。姿は見えないが、キナコちゃんを信じてそこを見続ける。


 ココアちゃんが小さな爆発する球体を壁の端から、投げつける。その距離が、だんだんと近づいて、もう少しで当たるといった具合になった途端に、何かが動いた。直後、もともと何かがいた場所が小さく爆発を起こし、その何かが煽りを受けて、少し吹き飛んだ。


 その何かは、そのまま地面に落ちると思われたが、空中で静止した。


 見た目は全身が虹色であり、体の大きさはウサギより少し小さいくらいでそれなりの大きさをしている。特徴的なのは、ギョロギョロとした大きな目玉に、まるで蚊取り線香のようなクルクルとした尻尾であった。


 私たちの目の前に姿をあらわし、宙を浮いているのはカメレオンだった。


 しかし、カメレオンは宙を浮かない。その理由は、背中あたりに付いている悪魔のような小さな羽であり、そこからはウサギの角と同じような感覚がしている。



「ユユ!どれくらい!」


「一分半!ウサギと同じくらいだよ!」



 クレアさんの問いに対して、私は彼女以外の人にも聞こえるように大きな声で返した。


 カメレオンは、私たちに向かって舌を伸ばし、攻撃を試みてきた。しかし、彼我のあいだはミルクちゃんの壁によって隔たれており、攻撃は一切通ることはなかった。


 その様子を見て、カメレオンに対する警戒は不要と判断したのか、



「また見えなくなったら教えて、すぐに探すから」



と言って、クレアさんとキナコちゃんは周囲の警戒へと移った。


 残された私たちは、現状でわかることを分析し始めた。



「ミルク。あのカメレオンの力はどれくらい?モモの支援は必要かしら?」


「いらない……かな。ウサギは、体重の分重かった、けど……カメレオンの、舌の攻撃だけなら、ウサギの半分、くらい」


「そう……モモ。とりあえず、他の攻撃手段がらあるかもしれないから、そのまま続けてちょうだい。私は……逃さないようにするわ」



 カメレオンは、何度か攻撃を繰り返してきたが全く効果がないと悟ると、背を向けて立ち去ろうとした。ココアちゃんは、それをみすみす逃すまいと、カメレオンの進路の先に爆弾を投げ込み、爆風で私たちの方へと押し戻していた。


 正直、何度も転がっているカメレオンを見ていると、段々、可哀想に思えてきた。


 しかし、私たちもそれぞれ大切な何かがかかっているため、手加減するわけにはいかない。


 私はその後、十数回ほどカメレオンが地面に転がるのを見て、最後には爆散させられて光の粒子となるのを見届けた。


 二度目の作戦は、あっさりと成功したのだった。


 これには、皆、少し拍子抜けしてしまった。



「むぅ?終わったの?」


「あ、クレアさん。終わったよ、全部わかった」


「そう。それじゃあ、説明お願い」



 私は、クレアさんに頼まれて説明を開始した。


 まず、最初に姿が見えなかった理由だが、透明化する能力だった。目以外の動きを完全に止めることで、透明化することができる。しかし、攻撃する時など、少しでも動いてしまえば、すぐに能力は解除される。その上、動きはあまり速くないため、完全に背後を取られない限り、見てから避けられる可能性がある。


 次に、攻撃手段だが、主に二つあった。


 一つ目は、先程、何度も見た舌を伸ばすもので、あの舌には触れたものを痺れさせる効果があった。この技の速度はかなり速いが、予備動作に口を膨らませるというものがあり、真っ直ぐにしか伸ばせないという特徴があるため、視認できていれば避けるのは簡単である。


 二つ目は、全身を丸めて転がる突進である。これは、何かにぶつかるまで止まることができないが、威力はかなり高い。


 弱点は、二点。舌と尻尾だ。


 この他にも、目の可動域が広いなどがあったが、基本的には以上である。



「なんか、ウサギもそうだったけど、攻撃が直線的な奴が多いわね」


「けど、油断はできないよ。見てから避けられるといっても、タイミングがズレれば大変なことになる」


「それ、は……やっぱり、ウサギと一緒じゃ、ない?」


「そうだねー、一応、こまめに後ろを確認するようにしよっかー」


「姿が見えないだけで、私ならわかる。カメレオンは任せて」



 私たちの総意としては、カメレオンは必要以上の警戒はいらないということになった。


 二日目は、現在では、キナコちゃんのおかげでかなり優位に進められている。あと、半分くらいだが、このままいけば……



「新しいのが来てる!こっちに真っ直ぐ来てるからたぶん、もう見つかってる!皆、注意して!!」



なんて、そんな簡単な話はなかった。

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