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夢見るロンリーガール 〜Dreaming Lonely Girl〜  作者: 樹唯
第一章 ロンリーガール
15/31

あと少し

よろしくお願いします!!

夢@14


あと少し



「わっ、わわぁっ!ミーちゃん!?」



 モモちゃんが咄嗟に両手でミルクちゃんの手を握り、倒れてしまわないように支える。


 当の本人は、衝撃と、想像と異なる状況に目をギュッと瞑ったまま、首を後ろへとガクッと倒していた。モモちゃんに支えられるがままになっていることから、何が起きたかわかっていないように思える。


 この状況で、すぐに動いたのはココアちゃんだった。モモちゃんは、手を繋いでいたから、咄嗟にそのまま引っ張ったに過ぎない。これに関してはさすがお姉ちゃんといったところである。最早、脊髄反射かと思うほどだ。


 彼女は、ミルクちゃんの背中に周り、抱きしめて、支えた。



「ミルク!?怪我は!?大丈夫なの!?」



 その顔はまるでこの世の終わりを見たかのようで、そこから彼女の妹への愛の大きさがよくわかる。しかし、今はそこではない。彼女はかなり動揺して周りが見えていないのだ。誰よりも、何よりも、愛すべき妹のことだけを優先している。


 そんな隙を、ウサギは見逃さない。


 ミルクちゃんの壁は跳ね上がったあと、消えてしまった。ウサギは、そこをそのまま、二人を串刺しにする勢いで真っ直ぐ進んできている。


 私では、間に合わない。



「ミルクちゃん!ココアちゃん!よけてーーーー!!!!!」



 私の叫びに、現状に、ウサギが二人を狙っている状況にその二人が気付く。


 クレアさんは叫ぶより先に動いていたが、キナコちゃんと共に後方を警戒していたために、間に合うかどうかといったところだ。


 クレアさんは、ウサギを倒すことを視野に入れて、刀を投擲する構えをとった。



「クレア!いい!」



 ココアちゃんの、雰囲気が変わった。彼女はクレアさんを手のひらと声で制すると、ミルクちゃんに向かって爆弾を使った。ミルクちゃんは思い切りに吹き飛ばされ、すぐそばにいたモモちゃんを巻き込んで地面に倒れ込んだ。


 彼女はそのまま、もう片方の手に爆弾を作り、ウサギと自分の間に挟むと即座に爆発させた。そんなことをすれば、ウサギは勿論、ココアちゃんも同様に吹っ飛ぶ。


 そのまま地面に倒れるかと思えば、彼女は数回、爆弾を作り自分に向けて爆発させると、見事に着地した。


 え?なにそれ、知らないんだけど!?そんなことできたの!!!?


 彼女は自分でも驚いてるのか、ポカンとしながら、



「なんでもやってみるものね」



などと、言っていた。


 ぶっつけ本番、思いつきもいいとこだ。下手すれば、自分がやられていたかもしれない状況で自分でもできるかどうかわからないどころか、文字通り自爆する危険性のあることをやってのけた。


 これなら、ココアちゃんもクレアさんと一緒に前に出れるんじゃ……?と思った矢先、ミルクちゃんに駆け寄ろうとしたココアちゃんがずっこけた。



「あ、やば、動かないわ。誰か助けて!?」



 元々、彼女のできることは、遠くから爆発させることが主である。それを、近距離で自分の機動力として使うのはかなり体に負担がかかってしまったようだ。痛みがないからできたこととも言えるだろう。


 今、動けるのは私だけ。クレアさんは、ウサギの相手を、キナコちゃんは周囲の警戒を、モモちゃんとミルクちゃんはまだ倒れ込んでいる。そのため、私は、駆け寄って手を貸そうとしたが、



「あんたは、しっかりウサギを見てなさい!」



と、一蹴されてしまった。あまりの勢いについ、



「ご、ごめん!」



と、謝ってしまうが、それではどうするのだと思い直す。自分から助けてと言っておいて、さすがに理不尽ではないだろうか。しかし、確かに今回の達成目標はウサギの能力を解き明かすことなので、ウサギを見続けなきゃいけないことも正しくないことはない。ここは素直に、集中してウサギを見ることにした。


 ミルクちゃんは、私とココアちゃんが話している間に、モモちゃんと共に立ち上がって近くに来ており、すぐに両手で壁を作り出した。


 ウサギは、クレアさんによって何度も角を斬りつけられながら、倒されずに右へ左へと転がっていた。


 ウサギは、あと少しのところだったのにも関わらず、一人も倒すことができなく、思うようにいかないことに焦れたのか、その場に立ち止まった。


 その直後、体毛を赤く変え、前歯を剥き出しにして、いかにも怒っていますといった風貌へと変化した。そして、体をのけぞらせて息を吸ったかと思うと、



「ブー、ブー!!!キューーーー!!!!!」



と、突然叫んだのだ。急になにをしたのだと、皆が不思議そうにしていたが、今度はキナコちゃんが血相を変えて叫んだ。



「まずい!今ので、周りからウサギが走ってきてる!!なにこの数……八、いや、十羽!!!」


「ユユちゃん!あと何秒!?」


「あと、三十秒!」


「むぅ……ユユ、ウサギは同じのじゃないとダメ?」


「ううん、一羽だけ残ってれば大丈夫」



 それなら、と言ってクレアさんは目の前のウサギの耳を斬り捨てた。


 今の場所は、湖が近くにあるうえ、少しひらけた場所である。そのため、背後からの警戒はいらず、すでに新たなウサギは視界に入っている。



「湖を背にして、ミルクとユユは右側、ユユはミルクを支えながらウサギを見続けて。ココアは左側、私は前方を。ココア、倒していいからね。キナコは、周囲の警戒。また増えたら教えて」


「キーちゃん、私はー……?」


「モモは……こんなにたくさん相手するのは怖いから、守りの支援をお願いできる?」


「わかったー、任せて!」



 周囲に綺麗なピアノの音色が響き渡る。


 前方のクレアさんは、さすがに多数を相手にするのは難しいのか、中々、有効打を与えられない。


 左側のココアちゃんは、先程の無理が祟り、立てずにいた。しかし、むしろ立てないことでウサギが直線的に向かってくるため、どんどん爆発を当てることに成功しているようだ。とは言え、以前に聞いたウサギを倒したほどの大きな音は聞こえてこないことから、すぐに倒すことは叶わないのだろうと予測できる。


 さて、私とミルクちゃんだが、ひたすらに耐えていた。両手で壁を支え、腰を低くして踏ん張っているミルクちゃんを、私が後ろから支えてなんとか耐えている。私たちの前にはほかの場所よりも、一羽多く、四羽がおり、次々と突撃してきては甲高い音をたてながら、弾き飛ばされる。



「ま、だ……!?」


「あと、ちょっと……!!」



 クレアさんの方から音の激しさが減り、ココアちゃんの方から大きな爆発音が二度ほど聞こえた頃、状況が動いた。


ゴーーーーン!!!ゴーーーーン!!!


 突然、鐘の音が鳴り響いたのだ。


 この音が鳴った瞬間、ウサギが動きを止め、その場に転がった。急にどうしたのかと思って見ていると、ポンッと魔法が解けたかのような音と共に、その姿をぬいぐるみへと変貌させた。


 これには、皆、驚きを隠せなかった。何が起きているのだろうか、という困惑もしている。



「おつかれさまー!今日はここまで!」



 気づかなかった。目の前のウサギに集中しすぎて、空高く飛んでいる小悪魔、エミに気付くことができなかった。



「さっきのは、終わりの鐘だよ!それじゃ、まったねー!」


「ちょっ……」



 私たちは、終了のあと、少しの時間も与えられず、ここで記憶が途切れた。


 一日目が、終わったのだ。


 残り、二十九日。

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