ウサギ、みたび
よろしくお願いします!
「キーちゃん!?な、何を言ってるの!?」
キナコちゃんの言葉に、一番に反応したのはモモちゃんであった。それもそのはず、自分がやられかけてしまったのだ。それに加えて、
「私のせいだけど……!クーちゃんがあんな怪我をしたんだよ!?それなのに、またすぐに行くなんて……危険すぎるよ!」
と、いう理由もある。先程は何とかなったが、もう少し戦うための方法を考える必要があると思うのだ。
しかし、キナコちゃんはここでひかなかった。
「けど、このままだと私のできることがあてにならなくなる。そしたら、さっきみたいな戦いが連続するよ。逆にいえば、私のできることの欠点さえ理解すれば無用な戦いは避けられるの。そのためには、ウサギの能力は早めに把握しておくべきだと思う」
「キナコ、それはどうしてもすぐじゃないといけないかしら?別に次に会った時でもいいじゃない」
キナコちゃんは、ウサギの能力を急いで確認すべきだと主張している。対して、他のみんなはわざわざ危険を冒してまで会う必要はないと考えている。
何より……戦ったのだ。いくら命の危険はないと言われていても本当かどうかわからない状態で、ただの中学生が、だ。
襲われた時は必死だった。必死だったからこそ、あそこまで戦えた。どこか、夢の中の出来事のようだった。
けれど、クレアさんが声をかけてくれなかったら。できることを事前に把握しあっていなかったら。もっとたくさんの数が来たら。
いざ、冷静になってみると、足が動かせなくなるくらい震えてしまうほどに、恐ろしくなってきた。
そんな場所に、もう一度行こうと言うのだ。誰もが反対するだろう。
「行こう」
だから、その発言には皆が心底驚いただろう。何せ、怪我をした張本人が言い出したのだから。
「キナコ。ウサギとその他の区別、数はわかる?」
「……それくらい、わかるよ。けど、クレア」
「むぅ?キナコが言ったことでしょ?何を驚いてるの?」
キナコちゃんもまさか、クレアさんに賛成して貰えるとは思ってなかったのだろう。その様子は、他にも言うことを準備していたらしく、出鼻を挫かれたようだった。
クレアさんが賛成したことを受けて、ココアちゃんが少し考え込んで、
「……なるほど、そうね。探しましょう」
と、賛同の意見を出した。
これには、モモちゃんが大慌てだった。ウサギにもう一度会う流れになってきたからだ。
「まって、まってぇ……ほんとに行くの?」
「私も考えたんだけど……あんた、ウサギはゆっくり近づいてきたのよね?」
ココアちゃんはそう言って、私に確認を取ってきた。私がそれに肯定すると、モモちゃんの方へ向き直してつづけた。
「もし、そのゆっくり動くのが気配を消すための条件だとしたら。大きな音を出してない時だけじゃなくて、戦いとかで大きな音を出したあと素早く移動すれば、ほぼずっと敵のことを把握できることになるわ。そうすれば、私のできることも気兼ねなく使えるようになるのよ」
「コーちゃん……あの一瞬でそこまで思いついたのー?」
「さすがに、もともと引っ掛かってたわ。本当にすぐ近くにいたら、音を出す前にキナコが気付いてるはずだもの。音を出してから少し時間が経ってたから、移動してきたのは明白よ」
「それ、なら……?」
「ウサギに、会いに行くわよ」
*
キナコちゃんのできることの保証、そしてココアちゃんの仮説を確かめるために、ウサギを探しに行くことになり、キナコちゃんとクレアさんが先導し始めた。今日の残り時間もなくなってきてるため、細かいことは歩きながら打ち合わせをすることになった。
「キナコ、一匹だけのいる?」
「……一匹じゃなくて、一羽だよ。まだ見つからない」
「そう。見つけたら教えて」
ウサギは一羽だけでいるのを探すことになった。
能力を知るだけなので、倒す必要もなく、かといって能力を把握するまで倒してもいけない。周りからも近づいてきたら困るため、大きな音を出せない。
こうなると、一番の適任がミルクちゃんである。しかし、ミルクちゃんのできることは壁を一方向にしか作れないため、一羽が適しているのである。
「ユユは、ミルクのそばから離れないで。ミルク、ユユを守ってあげて」
「……わかった。お姉ちゃんも、モモちゃんも、わたし、から、離れないで?今回は、静かに、だから」
「ミルク〜!私を守ってくれるの〜?えへへ、ずっとくっついてるわね!」
「……静かに、して!」
ミルクちゃんはそうは言うものの、ココアちゃんを突き放そうとはしない。もしかして、少し機嫌がいいのだろうか。
「ココア。一応、ウサギを見つけたら、周りを警戒しながら、いつでも爆発できるようにしといてほしい」
「わかってるわよ。ウサギの能力を知るためにも時間がかかるだろうし」
ある程度まで話が進んでまとまった頃、ずっと集中していたキナコちゃんから合図があった。
その瞬間、クレアさんとココアちゃんの空気が変わった。
ミルクちゃんはモモちゃんと一緒に、可愛く気合いを入れている。
「見えてくる。今は周りに嫌な感覚ないけど、できるだけすぐに終わらせて」
「それはー、ユユちゃん次第?」
「が、がんばるよ!」
そこは、森の中でも比較的ひらけた場所で、近くには湖があった。私たちは、木の陰からそちらを覗き見る。
「もしかしてー……気づかれてない?このままいけるー?」
「いや、気づかれてるはず」
「うん。耳が立っててかなり警戒してる。ミルク、あの子がこっちを見たらすぐに壁を出して」
「……」
「ミルク?聞こえてるの?」
「……!うん、大丈夫、お姉ちゃん、クレアちゃん。任せて」
ミルクちゃんは少し緊張しているようで、すぐ近くのモモちゃんの手をしっかりと握っている。右手を前に出して、いつでも大丈夫と言っているようだ。
「ユユちゃん。どれくらいかかりそー?」
「全部を把握するとなると……あと一分半はほしいかな」
「そっかー、思ったより……」
「こっち見たよ!ミルク!」
私が時間を伝えてすぐ、ウサギが動き出した。
「完全に見つかってる。こっちに対する悪意をすごく感じるから」
「ミルクちゃん!」
「わ、わかった!」
ミルクちゃんが、みんなの声に反応して片手を前に出して壁を作る。
そこに、ウサギが角で突撃をしてくる。
前回は、問題なく防げた。今回も同様にそうだと思われていた。
ガキンッと甲高い音が鳴ると共に壁がはね上げられ、その勢いでミルクちゃんが押し飛ばされそうになった。現在、ミルクちゃんは後ろにのけぞった形で、手を繋いでいたモモちゃんに倒れないように引っ張られていた。
ミルクちゃんの壁による防御、そしてウサギを相手取った時間稼ぎは失敗に終わったのだ。
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