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夢見るロンリーガール 〜Dreaming Lonely Girl〜  作者: 樹唯
第一章 ロンリーガール
12/31

第一歩

よろしくお願いします!

一部、モモとユユの名前を間違えて表記していましたので、修正しました。

「見た相手の弱点?」


「うん。厳密にはちょっと違うんだけどね……昨日、私もウサギに会ったんだけど、耳が弱いのがわかったよ。攻撃も効きやすくて、傷つければ動けなくなるって」


「ほんとー!?すごい、すぐにそんなことがわかるの!?」


「あ、ごめんね。会ってから時間経過で段々とわかるの。ウサギは……一分くらいだったかな?」


「そうなの?それでもすごいよー!すごく強いのに会っても何とかなるってことでしょー?」



 私のできることにモモちゃんは、すごいすごいと褒めてくれる。その間、クレアさんは何かを考え込んでいるようだ。そこに口を挟んだのは、



「弱点なら私もわかるよ。それもすぐに」



キナコちゃんだった。実は、ウサギにはほとんど嫌な感覚がしない場所があり、それは耳だったらしい。つまり、キナコちゃんのできることは、注意しなきゃいけない部分と、弱点がすぐにわかるということになる。


 これに、モモちゃんが、



「けど、ユユちゃんが弱点だっていうまでわからなかったわけで……」



と、フォローしてくれた。しかし、キナコちゃんはそれでも自分のできることの優位性を話し続ける。



「どちらにしろ、実際に試すでしょ?で、結局、そこでわかってたはず。何のや……」


「キナコ。今はそんなことより、皆のできることであのウサギとかにどう対処するかを考える方が大切。今、襲われない保証なんてないんだよ」


「う……わかったよ。それじゃあ……え、待って!?何かが直ぐそばまで近づいてる!?」



 クレアさんが話を戻し、これからの対策を考えようといった話になった矢先のことだった。キナコちゃんが、慌てて、皆の注意を促した。



「キナコ、どっち!」


「えっと、えっと、三方向!あっちと、そっちと、こっち!」



 クレアさんに方向を尋ねられ、キナコちゃんは急いで方向を示した。しかし、慌てていたために、口で詳しく説明せずに、指をさして皆の視線を誘導した。


 ただ、急に三方向を示されても、どこを向けばいいかわからずに、皆も慌ててしまい、対処が遅れた。


 モモちゃんの背後から、ウサギが角の先端を向けて飛び出してきた。ミルクちゃんは震えており、ココアちゃんはそれに寄り添っている。キナコちゃんは気づいたようだが、反応が追いつかない。


 反応できたのはクレアさんだけだった。モモちゃんを左手で押しとばし、ウサギの脅威からまもった。しかし、無事とはいかなく、左肩にウサギの角が突き刺さってしまった。


 クレアさんは、右手に握った刀で、咄嗟に耳を斬りつけてウサギを動けなくした。ウサギが動かなくなるのを確認すると、ウサギと角を切り離そうとしたが、勢いが足らず斬れないと悟り、思い切り引き抜き、投げ捨てた。


 そんなことをしてしまったら、血が止まらなくなり、大変な事になってしまうのでは、と危惧するが、そのことを気にしていられる余裕が私たちにはなかった。



「ミルク!!そっちに壁作って!」



 クレアさんが傷ついた様子を見て、ミルクちゃんは状況に追いつけず、顔をサーっと青褪めさせて、呆然として、クレアさんの指示を聞き逃していた。しかし、そばにいたココアちゃんに肩を揺すられ、



「ミルク!しゃんとしなさい!!」



と、荒げた声を投げかけられ、一瞬ビクッとしたものの、何とか一方向に壁を作ることに成功した。



「クレア、準備はできてるわよ!ウサギ一匹分!!」



 ココアちゃんは続けてそう言うと右の掌の上に球体を浮かせていた。おそらく、モモちゃんが襲われてからすぐに準備をしていたのだろう。



「ミルクと一緒の方向をお願い!こっちは……モモ!」


「は、はい!」


「全員の守りを強くして!」


「わ、わかりました!すぐにやります!!」



 モモちゃんは、クレアさんに庇われてから、頭を真っ白にしていたのか、動けずにいた。今も、かなり動揺しているようで、普段のすこし間伸びした喋り方が鳴りをひそめているどころか、クレアさんに敬語を使っていた。


 モモちゃんに敬語を使われたクレアさんはどことなく悲しそうな表情をしていた。


 すこしすると、周辺にはピアノの綺麗な音色が鳴り響き、全員の体に薄らと水色の光りが纏わりつき出した。


 キナコちゃんは、ピアノの演奏をしているモモちゃんの側で周辺を警戒している。


 私には、なにができるだろうか。クレアさんは、私には何も指示してくれない。実際、先程伝えたできることでは戦闘に役立つことはない。


 それでも、皆がそれぞれの役割を果たして戦っているんだ。私にもできることはないかと思案し、ウサギを睨み続ける。


 そして、自分でも先程まで気づかなかったできることに気づいた。


 これなら……そう考えて、クレアさんに向かって大声で伝える。



「クレアさん!私が、一羽、引き付けるから!」



 私はクレアさんに向かってそう叫び、クレアさんの前に出てきていたウサギに向かって、辺りに落ちていた石を投げつけた。


 クレアさんたちからすれば、その石はウサギに簡単に避けられると、そう思われただろう。しかし、その予想を裏切り、私の投げた石はウサギにしっかりと命中した。


 クレアさんの目が驚愕により、見開かれるのがわかる。なぜなら、その投げた石の位置が、明らかにウサギの動く方向を知らなければ当てられない位置へと投げられており、その上で命中したからだ。


 私にもできることがあった。それならば、私は、私にできることをする。しなきゃいけない。友達になにもしてあげられないのは嫌だから。


 ウサギから一秒たりとも目を離さず、情報を集める。私は、さっきは見た相手の能力や弱点がわかると言った。しかし、それよりも情報がわかる言った方が正しい。


 そもそも、情報がわかるということは分かっていたが、私自身が理解出来ていなかったため、わかりやすいメリットとして能力や弱点と答えた。


 先程のウサギを睨み続けてわかったできることとは、その対象を見続けることで、次にどんな動きをするかがわかるというものだった。


 これをうまく利用すれば、本気で走って逃げれば追い付かれないくらいの速度であるウサギ相手なら、ギリギリではあるが、避けることができると踏んだのだ。


 ただ、こんな大それたことは、一人じゃ恐ろしくてとてもじゃないができなかった。モモちゃんがいる、モモちゃんの演奏のおかげでこうして頑張ることができる。



「今のうちに、お願い!」



 私はクレアさんに向かって再度叫んだ。この声に反応し、クレアさんは私では追いきれない速さで動き、ウサギの耳を断ち切った。ウサギは地面に倒れ伏し、ピクリとも動かなくなった。その途端、キラキラと光る粒子になって虚空へと消えた。


 この一連の流れが終わると同時に、ミルクちゃんの張った壁の向こう側から少し大きな爆発音が聞こえた。



*



「そっちも終わった?」


「えぇ、ミルクのおかげで怪我もなかったわ。それより、あんた、それどうなってんの?」


「うん、不思議だね」


「不思議だねってあんた……大丈夫なの?」



 ミルクちゃんとココアちゃんは二人の見事な連携力により、傷を負うことなくウサギを倒すことに成功したらしい。それは喜ばしいことだ。


 その一方で、クレアさんは戦闘開始の直後に、傷を負っており、ココアちゃんが、それを指摘した。


 ウサギによって貫かれた左肩、私はその傷から血が溢れることを恐れていたが、全くそんなことはなかった。


 その傷は、ぽっかりと穴があき、断面はただ黒くなっているだけで、傷らしい傷ではなかったのだ。



「ひとまず、問題ないよ。それよりも……」



 クレアさんは、自身の傷を見ながらそう言って後回しにした。


 ただ、それよりも伝えなきゃいけないことがある。そう言いたげな様子で言葉を発しようとしていたが、事態は急を要しており、私はその言葉を遮って皆に伝えた。



「みんな、急いでここから離れないと!さっきのウサギ、近くにいたのもあるけど……ココアちゃんの爆弾の音を聞いて近づいてきたみたい!」


「え、私!?使ってな……くないわね。けど、あれっぽっちで!?」



 私が、ココアちゃんの爆弾が理由だと告げると、驚いた様子を見せ、ココアちゃんは先程のできることの説明に思い当たるとまた更に驚愕していた。たった少し、破裂音が鳴った程度だったのだから、無理もないだろう。


 キナコちゃんは、私の言った近くにいたということに疑問を持っていた。



「近くにって、全く嫌な予感しなかったけど?」


「……やっぱり。とりあえず、話は後にしよう。キナコ、今、その嫌な感じしない?」



 しかし、クレアさんはすでに予想していたらしく、皆の移動を促した。また、それと同時にキナコちゃんへと、周囲の様子の確認をした。



「……さっきまでしてたけど、今はないよ」


「じゃあ、移動しなきゃ」


「え、なんで……」


「急いで」



 おそらく、クレアさんの予想は私の知り得た情報に近いのだろう。キナコちゃんの言葉に、その予想を確信へと近づけたらしく、すぐに移動の判断を下した。


 一方、キナコちゃんは、今は危険な感覚がしないのに移動しなきゃいけないことに納得できていないようだった。しかし、クレアさんの指示のために渋々と従う。


 この話の間、ミルクちゃんはぷるぷると震えながら、ずっとココアちゃんの側にいた。


 モモちゃんは、クレアさんの傷を見て、何かを考え込んでいるようだった。しかし、すぐに何かを言い出すわけではなく、皆と一緒に移動を開始した。


 一日目は、まだ終わらない。一時間、たったそれだけが、果てしなく感じる。

ありがとうございました!

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