第72話 7人で初のキャンプ
新章です!!
マーラ・ドシタルを出発した僕達。
次の町がどの辺にあるのか分からない為、取り敢えず道なりに馬車を進ませている。
前回とは違い、今のセイラスは7人。
そして、フィオちゃんが加わってから初めての旅だ。
「うわぁ~!! 景色良いねぇ!!」
荷台から顔を出したフィオちゃんが、辺りを見ながら大喜びしている。
「フィオちゃん、落ちないでよ~。」
「大丈夫だって、ラウっち!」
「あんまり身を乗り出したら危ないですよ。」
リオさんにも注意され、フィオちゃんは渋々荷台の中へ戻っていった。
今のところ、周辺にモンスターらしき気配は無い。
僕とミュラ、ザン君が馬車の近くを歩きながら周囲を警戒。
リオさんとマシューは荷台。
ラウちゃんとフィオちゃんも、その中で話をしている。
というより…。
ポロロン♪
「おお~!!」
さっきからフィオちゃんが楽器を弾いている。
「フィオちゃん上手いねぇ!!」
「旅芸人だからね! これくらい出来ないと!」
「もう1曲お願い!!」
「良いよ~!」
…随分楽しそうだ。
今までの旅では、馬車の中から音楽が聞こえるなんて事は無かった。
フィオちゃんが加わっただけで、随分賑やかになった気がする。
「ベル。」
「ん?」
隣を歩いていたミュラが声を掛けてきた。
「そろそろ昼じゃない?」
「あ…。」
言われてみれば、マーラ・ドシタルを出てからかなり歩いている。
僕自身、少しお腹が空いてきた。
「じゃあ、この辺で休憩しようか。」
「ベル殿、少し先に開けた場所があります。」
ザン君が前方を指差した。
確かに、街道の横に丁度良さそうな平地がある。
「よし、そこでキャンプにしよう。」
僕達は馬車を街道の端へ寄せ、昼食の準備を始める事にした。
「じゃあ、いつも通り役割分担ね。」
「了解!」
まずザン君が簡単なテントの準備。
ミュラが火起こし。
マシューとラウちゃんが水の調達。
僕とリオさんは料理。
そして…。
「……あたしは?」
フィオちゃんが自分を指差した。
そうだった。
今まで6人でやっていた分担だから、フィオちゃんの役割をまだ考えてなかった。
「どうしようかな…。」
「ベル君、あたしも料理出来るよ?」
「本当?」
「簡単なのならだけどね。」
元々1人で旅をしてたんだから、考えてみれば出来ても不思議じゃない。
「じゃあ、僕達の手伝いをお願い。」
「任せて!」
早速フィオちゃんも料理に加わる。
今日は昨日買った食材の中から、あまり保存の利かない物を先に使う事にした。
野菜と肉を切り、鍋に入れていく。
「ベル君、このくらいで良い?」
「うん、それくらい。」
「おお~、何か楽しいね!」
「旅芸人でも野宿はしてたんでしょ?」
「してたけど、1人だったからさ。皆で料理するのは全然違うよ。」
確かに1人と7人では大違いだ。
僕もミュラと2人だけで旅をしていた頃を思い出す。
あの頃は、こんな人数になるなんて全く考えてなかった。
「お水持ってきたよ~!」
ラウちゃんとマシューが戻って来た。
「ありがとう、じゃあ入れて。」
「はい!」
水を鍋に入れ、火に掛ける。
グツグツ…。
暫く煮込んだ後、調味料を入れて味を整える。
「出来たよ。」
「待ってましたぁ!!」
ラウちゃんが真っ先に皿を持ってくる。
「ラウちゃん早いって。」
「だってお腹空いたもん!」
皆の分を皿へ取り分け、パンと一緒に食べ始める。
「ん~!! 美味しい!!」
フィオちゃんが一口食べた瞬間、大きな声を出した。
「ベル君、料理かなり出来るんだね!」
「まあね。僕とミュラは昔から2人で旅してたから。」
「僕はそこまで料理しないけどな。」
ミュラがパンを食べながら答える。
「火起こし担当が多かったし。」
「じゃあベル君が料理担当だったんだ。」
「大体はね。」
「へぇ~。」
フィオちゃんが妙に納得したように頷く。
「今度あたしにも教えてよ!」
「良いよ。」
「やった!」
そんな話をしながら昼食を済ませた。
7人になったせいか、やっぱり食材の減りは今までより少し早い。
2週間分買っておいて正解だったと思う。
「バラッドにもご飯あげないと。」
ラウちゃんが立ち上がる。
「ラウっち、あたしも行く!」
「じゃあ一緒にあげよう!」
2人はバラッドの所へ向かった。
「バラッドちゃ~ん、ご飯だよ~!」
「ほらほら!」
「ヒヒィーン!!」
……向こうも賑やかだな。
食事を終え、少し休憩。
そして、再び出発の準備に入る。
「皆、忘れ物無い?」
「大丈夫です。」
「ボクも大丈夫!」
「私もです。」
使った食器も洗い終え、荷物も馬車へ戻した。
「じゃあ出発しよう。」
僕達は再び次の町を目指して歩き始める。
まだ目的地が何処にあるのかは分からない。
何日掛かるのかも分からない。
でも…。
ポロロン♪
「フィオちゃん、また弾いてる。」
「良いじゃんベル様! 楽しいよ!」
「まあ、良いけど。」
今までより少し騒がしくなった旅。
だけど、悪い気はしない。
むしろ――。
こういう旅も良いかもしれないな。
7人になったセイラスは、まだ見ぬ次の町を目指して歩き続けていく。




