↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/79

第73話 7人で初めての夜営

昼食を終えてから数時間。


僕達は次の町を目指して、ひたすら道なりに進んでいた。


しかし――。


「ベル。」


「ん?」


「そろそろ暗くなるよ。」


ミュラに言われ、空を見る。


確かに夕日がかなり低い。


このまま進んでも、次の町へ着ける様子は無い。


「今日はここまでかな。」


「私もその方が良いと思います。」


リオさんも周囲を見回す。


「暗くなってから場所を探すより、明るいうちに野営の準備をした方が安全です。」


「じゃあ、キャンプだね!」


ラウちゃんが嬉しそうに言った。


何でそんなに楽しそうなんだろう。


「ベル殿。」


ザン君が少し先を指差す。


「向こうに丁度良さそうな場所があります。」


街道から少し離れた場所。


木々に囲まれているが、中央だけ広く開けている。


馬車を置くにも十分な広さだ。


「よし。今日はあそこで泊まろう。」


僕達はバラッドを連れて、そこへ移動した。


「じゃあ準備しようか。」


「はーい!」


以前までなら、それぞれ何をするか大体決まっていた。


でも今はフィオちゃんがいる。


「今日はあたし何すれば良い?」


「そうだなぁ…。」


昼は料理を手伝ってもらった。


夜も同じでも良いけど…。


「あたし、薪拾って来ようか?」


「1人では行かないでよ。」


「分かってるって!」


するとマシューが、


「では、私も一緒に行きます。」


と言った。


「シュアちゃんありがと!」


「いえいえ。」


という事で、マシューとフィオちゃんが薪。


ラウちゃんが水汲み。


ザン君がテント。


ミュラが火起こし。


僕とリオさんが夕食を担当する事になった。


「ベル様ー!」


少しして、水を汲みに行ったラウちゃんが戻って来る。


「これくらいで足りる?」


「十分だよ。」


「重かったぁ~!」


そう言いながらも、かなり大きな容器を普通に運んでいる。


元逃がし屋だけあって、こういう移動には慣れているみたいだ。


そして――。


「戻ったよー!」


今度はフィオちゃん達。


「結構あった!」


2人とも腕一杯に薪を抱えている。


「ありがとう。」


全員揃ったところで夕食作り。


今日は保存食ではなく、昨日買った肉と野菜を使う。


「またベル君の料理?」


フィオちゃんが鍋を覗き込む。


「嫌なの?」


「逆!楽しみ!」


「それなら良かった。」


肉を焼き、野菜を加える。


そこへ少し水を入れ、調味料で味を整えていく。


「良い匂い~!」


ラウちゃんが近付いてきた。


「まだだよ。」


「味見!」


「駄目。」


「ベル様ケチ!」


「完成してから食べなさい。」


「はーい…。」


「ラウっち子供みたい。」


「フィオちゃんも昼間お菓子食べようとしてたじゃん!」


「それとこれとは別!」


…この2人、本当に似た者同士かもしれない。


暫くして料理が完成。


皆で火を囲みながら食べ始めた。


「美味しいです。」


リオさんが笑顔で言う。


「やっぱり温かい料理は良いですね。」


「野宿だと特にね。」


ミュラも頷く。


フィオちゃんはというと――。


「おかわり!」


早い。


「もう食べたの?」


「美味しかったから!」


「はいはい。」


僕はもう一度皿へ盛った。


「ベル君、本当に良いお嫁さんになれそう。」


「僕、男なんだけど。」


「あははは!」


ラウちゃんまで笑い出す。


全く…。


食事を済ませると、辺りは完全に暗くなっていた。


焚き火の明かりだけが僕達の周囲を照らしている。


「さて。」


ミュラが言う。


「夜の見張りどうする?」


これも必要だ。


野外で全員同時に寝る訳にはいかない。


「今まで通り交代制だね。」


「7人だと分けにくいな。」


確かに。


「じゃあ2人、2人、3人でどう?」


ラウちゃんが提案する。


「それが良さそうですね。」


マシューも賛成した。


話し合った結果。


最初が僕とミュラ。


次がリオさんとラウちゃん。


最後がマシュー、ザン君、フィオちゃん。


「えっ?あたし最後?」


「朝方だから楽だよ。」


「そういう問題?」


フィオちゃんが首を傾げる。


「それに3人いるんだから安心じゃん。」


ラウちゃんが笑う。


「まあ、それなら良いか!」


あっさり納得した。


皆がテントへ入った後。


僕とミュラは焚き火の前に残った。


辺りは静かだ。


聞こえるのは火が燃える音。


風で木の葉が揺れる音。


そして時々、バラッドが動く音くらい。


「静かだね。」


「うん。」


ミュラは槍を近くへ置いたまま、火を見ている。


「7人になったな。」


「急にどうしたの?」


「いや。」


ミュラが少し笑う。


「最初は僕とベルの2人だけだったのにって思ってさ。」


「……確かに。」


リオさん。


マシュー。


ラウちゃん。


ザン君。


そしてフィオちゃん。


気付けば随分増えた。


「まあ、賑やかになったよね。」


「特にラウちゃんとベクちゃん。」


「あの2人はうるさいくらいだけどね。」


「本人達に聞かれたら怒られるぞ。」


「聞かれてないから大丈夫。」


そんな他愛も無い話をしながら、見張りを続けていた。


その時だった。


ガサッ…。


「……ん?」


少し離れた茂みから音がした。


僕とミュラが同時にそちらを見る。


「ベル。」


「うん。」


風じゃない。


明らかに何かが動いた音だった。


僕は静かに立ち上がる。


ミュラも槍を手に取った。


ガサッ…。


ガサガサッ…。


今度は1ヶ所じゃない。


複数。


「……何かいるね。」


「あぁ。」


僕達はテントへ視線を向ける。


まだ皆は眠っている。


出来れば起こさずに済ませたい。


だけど――。


暗闇の向こうから聞こえる音は、少しずつ近付いて来ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。