第60話 気に入った6人
フィオさんと別れた翌日。
僕達は、元々この町へ来た目的である資金稼ぎに戻る事になった。
グランさん達を探すため、予定より3日ほど仕事を休んでしまったからだ。
「じゃあ、今日からまた頑張りますか。」
「そうだな。今度は何も言わずに3日間いなくなるなよ?」
「……ミュラ、もう、分かったから…」
「ホントか?」
ミュラは呆れたように笑った。
あの件については、僕達4人も本当に反省している。
マシューも隣で苦笑していた。
「まあまあ、ベルさん達も反省してますし。」
「そうですよ、次から気を付ければ良いと思います。」
リオさんにもそう言われ、僕は改めて頷いた。
「うん、もう絶対にしないよ。」
その後、僕達6人はそれぞれ仕事へ向かった。
僕とミュラは荷物運び。
リオさんとマシューは商店の手伝い。
ラウちゃんとザン君は倉庫の整理をする事になった。
久しぶりに普通の仕事をしていると、ここ数日の出来事が随分前の事のように感じる。
「ベル。」
「ん?」
荷物を運んでいる途中、ミュラが僕を見る。
「フィオさんの事、まだ気になってるのか?」
「正体について?」
「あぁ。」
僕は少し考える。
「もうそんなに気になってないかな。」
「そうか?」
「元司祭だった理由も聞けたし、今は本人がやりたかった旅芸人をやってる。それなら、それで良いんじゃない?」
「……ベルらしいな。」
ミュラは小さく笑った。
「何?」
「いや。別に。」
結局、その日は特に何事も起こらなかった。
仕事を終えた僕達は宿へ戻り、夕食を食べて、そのまま眠りについた。
そして――翌朝。
「さて、今日も働きますか!」
僕達6人が宿を出た、その時だった。
「おーい!!」
聞き覚えのある声がした。
「ん?」
振り向くと、こちらへ向かって走ってくる金髪の女性がいた。
「フィオさん?」
「おはよー!」
フィオさんは僕達の前まで来ると、満面の笑顔を浮かべた。
「おはようございます。」
「おはようございます、フィオさん。」
リオさんとマシューが挨拶を返す。
だが、わざわざ僕達を待っていたようにも見える。
「今日はどうしたんですか?」
僕が聞くと、フィオさんは少しだけ言いづらそうに頬を掻いた。
「いやぁ~……実はさ。」
「?」
「あたし、昨日みんなと別れてから色々考えてたんだよね。」
珍しく言葉を選んでいる。
「昨日の事ですか?」
「昨日だけじゃないよ。」
フィオさんは僕達6人を順番に見る。
「グランさん達が行方不明になった時、みんな3日間も探し続けたでしょ?」
「はい。」
「危険な場所なのに。」
フィオさんの表情が少し真面目になる。
「それに、あたしが元司祭だって分かっても、態度変えなかったじゃん。」
誰も何も言わず、続きを待つ。
「あたしね、もっと色々聞かれると思ってたんだ。」
「大教会で何があったのかとか、〖快癒〗の事とか、ルシアの事とか。」
少し間を置き、
「でも、みんな聞かなかった。」
フィオさんは笑った。
「話したくない事なら話さなくて良いって言ってくれた。」
「あれは普通の事だと思いますけど……。」
僕が答えると、フィオさんは首を横に振った。
「少なくとも、あたしには嬉しかったの。」
そして今度は、いつもの明るい笑顔を見せる。
「それにさ!」
「はい?」
「みんな見てて面白いんだよね!」
「面白い?」
ラウちゃんが首を傾げる。
「うん! 性格バラバラなのに、何だかんだ仲良いし。」
「ベルさんが突っ走ったらミュラさんが止めるし、リオさんとマシューさんは優しいし、ラウネさんは話してて楽しいし、ザンさんは15歳なのにすっごくしっかりしてるし!」
「わ、私ですか?」
突然褒められたザン君が少し戸惑っている。
「だからね――」
フィオさんは一度大きく息を吸った。
「あたし、みんなの事、気に入った!」
「え?」
僕達の声が重なった。
「あたし今まで一人で旅してたけど……みんなと一緒だったら、もっと楽しく旅出来そうだなって思ったんだ。」
そしてフィオさんは僕を真っ直ぐ見る。
「あのさ、ベルさん。」
「はい。」
「あたしも――」
ほんの少し緊張したように笑って、
「セイラスに入れてくれない?」
フィオ・ベックハート。
元ハイトランダ教大教会の司祭であり、現在は一人で各地を巡る旅芸人。
そんな彼女から突然告げられた申し出に――。
僕達六人は、揃って目を丸くするのだった。




