第39話 ラウネの目的
「私の…目的?」
「えぇ、貴女が何故"逃がし屋"の仕事をするのかという理由です。」
本題でもある"逃がし屋"をやる理由を聞いた。
「私が"逃がし屋"をやる目的ですか…簡単な理由を述べるなら、お金を手に入れる為…。」
まあ、予想のつく理由だわな。
「では、何故お金が必要なのか? それを聞きたいです。」
これが本来の聞きたい事、こんな面倒な仕事を何故やる必要があるのか?
そんなにお金が必要なのか…それが一番気になる…。
「…多分、皆さんは見てきたのでしょうけど…私はある奴隷を購入する為に、お金を貯めてるんです。」
「それって、バジーニの奴隷売買所ですよね?」
リオさんが予想を考えて、ラウネさんに聞いた。
「知ってるんですか。」
すると、やはり予想通りだった。
彼女の目的はバジーニでの奴隷売買所の為だった。
「失礼ですけど…その購入する奴隷の金額っていくらぐらいなんでしょうか?」
僕は危険を承知で、ラウネさんの買いたい奴隷を聞く。
正直、これはかなり危険な領域に踏み込む行動だが…それを聞く為にここに来たんだ。
「…金額は1000万以上です。」
「それって、もしかして…若い人でしょうか?」
「…まあ、そうなりますね。」
「じゃあ、単刀直入に聞きますけど…その人物はもしかして最高額の人物でしょうか?」
僕は直球で聞いた。
それを聞いたラウネさんは、少し冷や汗を出す…。
少し変な空気になり…誰も喋らない沈黙の時…。
すると、遂に沈黙を破るかのようにラウネさんの口が開く。
「ええ、確かにその通りです。」
ラウネさんは、それを認めた。
それと同時にラウネさんが買い取りたい奴隷がこれで分かった…。
あの1820万ロドの15歳の奴隷が…。
「それで、今どのくらいまで貯めてるんですか?」
マシューが貯めてる金額について聞いた。
「そうですね…今、2000万くらいまで貯めてます…。 死ぬ気で貯めた額です。」
何と貯めてる額は2000万だと言う。
それなら買えそうだな。
「それなら問題ないですね。 実は、少し前にその最高額を見たのですが、その時は1820万でした。」
僕はその時の金額をラウネさんに教えた。
だが…買える金額と知ってもラウネさんの表情は何故か浮かないものだった。
その理由を本人が語り始める。
「うーん、確かに買える金額ですけど…ただ…。」
「ただ…?」
「実は、あそこの奴隷売買所の金額…あの金額であったら買えると思いがちですが…実際には、あの値段は関係者の気分次第で変わるんです。」
「それってどういう意味ですか?」
ミュラが首を傾げてラウネさんに聞く。
まあ、ミュラの言う事も分からんでも無い。
僕達もいまいち意味が分からず、それを知る為にラウネさんにどういう事かを説明してもらう。
「まあ…例えば、私が1000万ロドを持ってきて、700万程の奴隷を買い取る話をした時、その際に相手は私が沢山お金を持ってると見込んで急に値上げをしたりするんです。」
「え…じゃあ…。」
「そうです、あの連中はさらにお金を手に入れたいが為に急な値上げをするんです…。」
何とも言えない衝撃の事実だ、急な値上げを行うなんてあり得ない事だぞ!?
それはもう…高額の奴隷をエサに金を巻き上げるって行為だろ!!
奴隷を売る気が無いって事なのか…?
「じゃあ、お嬢。 貴女が買おうとしてるその奴隷はまさか…値上げされたとか…?」
「ええ、最初は1000万くらいでしたけど…私が1000万貯めた事を知ったら、1300万に上げて…1300万貯めたら1500万に上げて…そんな感じの繰り返しで…ある時なんて2000万に上げたんですよ!!」
何とも信じられない話だ…金が有る事を知って、さらに巻き上げようなんて…人間のする事じゃないわ…。
「売る気が見られないですね…。」
「それじゃあ…どんなに頑張っても…買えないじゃないですか…!!」
「延々と続く我慢比べみたいだな…。」
マシュー、リオさん、ミュラの順でその実態に対して一言言う。
そんな最中、僕はラウネさんにこんな事を聞いた。
「一つお聞きしたいんですけど、"逃がし屋"は確か、"依頼者"と"対象者"からお金を受け取る仕事な訳ですから、相当儲かるはずなのでは…それに、あの連中は貴女がこんな仕事をしてる事を知ってるんですか?」
という質問をした。
「"逃がし屋"の報酬は確かに高いですが…色んな準備等に掛かる費用を考えれば…そんな簡単に儲かる訳じゃないんです…。 この前は、貰えた報酬は合わせて200万ロドでしたけど、準備に掛かった費用の差し引きすれば儲かったのは160万程ですから…。」
あの時の儲けは160万程らしい、単純に考えると沢山仕事をこなせば直ぐにお金が貯まると思うけど…。
何か訳があるんだろう…貯まらない複雑な事情が…。
「なら…沢山仕事をすれば、直ぐにお金が…。」
ミュラが沢山行えば良いと言うが、だがラウネさんはこう言い返した。
「確かに、理屈を考えればそうなりますが…しかし、"逃がし屋"の仕事は月に2回か3回程なんです。 1回あたりの報酬が多くても準備やら何やらで時間が掛かりますし、そんなに数を多くこなせないですから…。 だからそんな直ぐにお金が貯まる訳じゃ無いんです。」
「あ…そっか…。 1日そこらで出来る仕事じゃないですもんね…。」
やはりそうだろう、それにあの時の100万以上の儲けが毎回出来る訳じゃないだろうし…それにラウネさん事態の生活もあるんだ、そう考えればそんな簡単にお金が貯まるとは思えないな。
「ただ…連中が私の仕事を知ってるかどうかは…分からないですね…。」
どうやら連中が"逃がし屋"の事を知ってるどうかまでは分からないみたいだ。
いや…普通に考えれば、彼女は元令嬢だし…奴らがその情報を知ってたら、彼女からお金を巻き上げる行為に至ってもおかしくはないな…。
「まあ…本来は、お家復興の為に稼いだお金なんですけども…。」
と彼女のこの言葉で、僕は彼女に今一番に聞きたい質問をする事に。
「ラウネさん、貴女がそこまでしてでも手に入れたい…その奴隷って…一体どんな人物なんですか?」
本来の目的を捨ててまで…そこまでしてでも買い取りたい奴隷の正体…。
「彼の名は…ザン・カッハリー。 元々は王宮に仕えていたエリート兵士です。」




