第35話 酒場"バジーニ"の実態
僕達は、ラウネさんが通ってた酒場[バジーニ]を調べる為に。
あの人の元へと4人で向かった。
コンコン
ガチャ…
「誰です…あっ! [セイラス]の皆さん!」
「どうも、リュブオン家の皆さん。」
そう、リュブオン家にやってきた。
ドアを開けるとメイドさんが快く僕達を出迎えてくれる。
「あの、タイラーさんは…?」
僕達がリュブオン家に来たのは、タイラーさんに酒場[バジーニ]の事を聞くため。
タイラーさんなら、何か知ってるだろうと思っての判断。
だが、家の様子から見ると…中にはあまり人がいないのだろう。
そうなると…タイラーさんがいるのかが心配だな…。
「ご主人様なら今部屋にいます。 私がご案内致しますので、どうぞ。」
メイドさんは、タイラーさんがいる事と今いる場所を教え、自らその場所まで案内をしてくれる。
僕達はそのメイドさんの後をついていく。
スタスタ…
コンコン…
メイドさんが立ち止まり、立ち止まった前のドアをノックする。
確か…この見覚えのある部屋は…
「ご主人様、セイラスの皆さんです。」
そうだ、タイラーさんの部屋だった。
「分かった、中に入れてくれ。」
タイラーさんの声が聞こえた。
メイドさんはタイラーさんの言った通りに、ドアを開けてくれた。
僕達はメイドさんにお礼を言って、部屋の中に入る。
「いやーセイラスの皆さん、ようこそ!! さ、さ、席にどうぞ。」
タイラーさんに言われるがまま、僕達は用意された席に座る事に。
そしてタイラーさんも席に座ると、僕達は早速タイラーさんにあの事について聞いた。
「タイラーさん、あの…ラウネさんの事なんですが…。」
「ん、彼女がどうしたんですか?」
「彼女、暗殺の対象者を逃がしていました。 表では死んだ風に見せて、裏で遠く離れた場所に逃がす…そんな事をしていました。」
「ほう…分かったんですね。」
そして、タイラーさんはラウネさんの本当の職業を教えてくれる。
「彼女の正体は、"逃がし屋"という特殊な仕事なんです。」
「逃がし屋…。」
彼女の正体は"逃がし屋"と言われる仕事らしい。
ただ、逃がし屋というのが一体何の仕事なのかは分からない。
それに対して
「それって、どんな仕事なんですか?」
リオさんが聞く。
それに応じるかのようにタイラーさんは、"逃がし屋"の仕事内容を僕達に教えてくれる。
「逃がし屋と言うのは、表向きは暗殺者のように依頼者から殺しの依頼をお願いされ、殺しの対象を跡形も証拠も無く対象を表向きに対象を暗殺するという一見すれば完璧な暗殺者に見えます。」
「へー…けど、実際には…。」
「ええ、実際には対象者にあらかじめ暗殺される内容と自分の考えた逃げる計画を話すんです。 そして、前もって用意し保存してた対象者の大量の血を現場にぶちまけ、あたかも殺されたかのようにして…頃合いを計らい、対象者を依頼者の目が届かない場所まで逃がすという事なんです。」
「成る程…となると報酬は?」
僕はタイラーさんに報酬の事に関して聞いた。
「報酬に関しては、依頼者と対象者の双方から受け取ります。 例えるなら、依頼者から50万、対象者から30万ならば合わせて80万受け取る事になりますね。」
「かなり…貰える…あ、でも対象者を逃がす為の費用…いやそれでもかなりの報酬ですね…。」
「ええ…。」
タイラーさんは逃がし屋の説明をしてくれた。
報酬がかなり貰えると聞いたミュラは、何かやろうと考えた顔を一瞬したが、僕の顔を見て考え直した。
ただ…僕が気になるのは、ラウネさんがその仕事をやる理由だ、タイラーさんは知ってるのかな?
「では、彼女は何故そんな仕事をするんでしょうか? タイラーさんは知ってますか?」
「さあ…私もそこまでは知りません…。 考えられるとしたら、滅んでしまった自分の家を復興させるからじゃないかと…?」
流石にタイラーさんもそこまでは知らなかったようだ。
確かにタイラーさんの言う事が有力だろうけど…それなら、もう商人として始めても何ら不思議じゃない。
ただ、考えてもまだ答えは出て来ないな…。
次はあの事についてタイラーさんに聞こう。
「それじゃあ…次に、彼女が通ってる[バジーニ]という酒場について…。」
[バジーニ]という酒場について、するとタイラーさんの顔色が変わる。
それどころか…タイラーさんは僕達に「彼女はそこに通ってるのか」と聞いてくるにまでに焦ってる。
僕達は「そうです」と教えると、しばらくの間、落ち着かずに「まさか…」、「彼女が逃がし屋を続けるのは…」、「何で…」とブツブツ言う始末…。
そんな姿に僕達は、恐怖を感じてしまう。
それを数分続けた後、ようやく落ち着きを取り戻したタイラーさんは冷や汗をかきながら、[バジーニ]という酒場について話し始めた。
「あの酒場は…普通の酒場じゃなく、裏でとんでもない事をやってるという噂が…。」
「とんでもない事?」
タイラーさんの口から衝撃の言葉が…
それを聞いた僕達は、この街の恐ろしい実態を知る事となった。
「奴隷の売買です。」
「な…そんな事…本当なんですか…?」
奴隷の売買…噂だと思いたいが…
この街の実態を知れば、否定はできない…。
「私も数年前くらいに一度立ち寄ったのですが、何人かが店主と話をしては、店の変な入口に入ってたのです。 ただ、その後は何事も無かったかのように普通に出てくると言った感じで…。」
「…奴隷の売買なんて…到底許される事じゃない事ですよ…!! 規定が有っても、そんな事なんて!!」
マシューが激しく怒りを立てる。
その気持ちは良く分かる、確かに奴隷の売買なんて、人間やエルフ、獣人族の生きている権利を阻害するような行為。
幸せになるなんて、そんなの絵空事でしか無い事だ。
買われても地獄、買われなくても地獄…生きる感覚も奪いかねない最悪の行為だ。
だが、それがもし本当なら…ラウネさんはおそらく…。
「もしかしたら、奴隷を買う為に…。」
「そんな…。」
マシューが少し青ざめてしまうが…。
「真相がどうなのかは、今の時点では分からないです…。 真相を掴む為にも、私達もバジーニに行きましょう。」
リオさんの言う様に、ここで語っても事実かどうかも分からない。
「そうだね、こんなとこで議論してても意味は無いね。」
実際に出向かないと本当かどうか分からないからね。
バジーニに行く意志を感じたタイラーさんがこんな事を聞く。
「えーと、皆さん…。 何故、彼女の事をそこまでして?」
タイラーさんは僕達がラウネさんに対してそこまで調べるのかと聞く。
それに対して僕の答えは
「まあ…何というか…ほっとけないというか…その…やっぱり、傷つけた責任ですかね? 理由を知らないとは言え、あの時傷つけたのは事実ですし…。」
現に彼女を傷つけた訳だ、せめて詫びの一つくらい言わないと…。
「成る程、貴方は真面目で心優しいお方なのですね。 素晴らしい心です。」
「???」
タイラーさんから何故か絶賛された。
何か絶賛される理由があるのか…?
他のチームメンバーを見ると、皆何故か納得してる顔をしてるし…。
「それなら、私も同行しましょう。」
「えぇっ!? そんな、何故ですか!?」
何と、タイラーさんまで同行すると言い出した。
これには、他のメンバーも驚く行動だ…僕達でも予想のつかない事。
「皆さんを見ていると、昔、冒険者だった頃の自分を思い出して、それに…。」
「それに?」
「貴方達に恩があるのと、バジーニ近辺のエリアはろくでも無い連中がはびこる危険なエリアですから…。」
タイラーさん曰く、バジーニ近辺のエリアは無法地帯と言われる危険なエリアの様だ。
もはや、奴隷の売買が行われてるのはほぼ間違いないと言っても過言じゃないな。
「そんな危ないエリアに私は行ってたの…?」
「確かにそうだけど、それよりも…ラウネさんがそんな所に出入りしてるのが恐ろしい…。」
よくよく考えてみれば、そんな危険なエリアに踏み入れて無事で生還したマシュー。
だが、もっとスゴいのはラウネさんだ、そんな危険なエリアにある店に立ち寄ってる訳だからね。
しかもマシュー同様に無事で…そう考えると、ラウネさんが実力者だと物語ってる。
「では…。」
逃がし屋
表向きは暗殺稼業という名目で暗殺の依頼を受けるが、
実際には対象となった人物を遠くの町や村に逃がして、
依頼者と対象者の両方から報酬を受け取る仕事
どんな手順で行われる?
暗殺の依頼を受ける
↓
対象者が誰なのかを知る
↓
対象者に接触し、狙われてる事を教える
↓
対象者に表向き殺される計画を教える
↓
殺された証拠の痕跡を残す為、対象者の血液を大量に搾取し保存する
※なお、対象に家族がいる場合、表向き証拠隠滅の為、一家皆殺しという名目で家族にも内容を伝える
↓
頃合いが来たら、現場に対象を呼び大量に保存した血液を使って、あたかも殺されたかのような演出を見せる
ここからは状況によって手順が変わったり、無かったりします
(必須)依頼者から報酬を受け取る
対象を別の場所に一旦隠した後、頃合いを計らって自宅に呼び寄せる
(必須)状況に応じて、対象者を逃がす為に必要な物を購入していく
対象の家に血液をぶちまけていく
※対象の家族が着てた衣服の切れ端に血液を含ませて現場に残す
上記の行動を終えたら
最後頃合いを計らってその日の深夜に、対象者(対象者一家)を呼び、街の外へ逃がす
↓
逃がす直前に、対象者から報酬を受けとる
と言った手順です。




