24話 招待状
お待たせしました!高錫裕貴です。
最近は自分のなかでゾンビゲームが再燃していていつも世界の誰かと一緒に戦ってます。一番好きなキャラは黒幕な金髪グラサンの息子です。
“黒牙”の副首領ジャンとの戦いで体力を消耗しきっていた俺だが、フェンの背中に乗って大通りに出る頃には歩けるくらいまで回復した。フェンとシェーラは安静にしてろと言って降りさせてもらえなかったが。
「そういえばあとの二人はどうしたんだ? マリアと憲兵の詰所あたりで留守番か?」
「いいえ、もう事情聴取は終わってるから家に送り届けているところよ。ついでに宿の確保ね。あの子結構人気がある宿屋の娘だったらしくって、せっかくだから宿はそこにしようってことになったの」
「なるほど、それは色々と都合がいいな」
マリアを襲ったやつらは明らかに裏の仕事を専門にするプロだった。何故マリアがそのような連中に狙われる羽目になったのか。一度首を突っ込んだ以上は最後まで責任をもって危険を排除してやりたい。
それからジャンを引き渡すため、まずは詰所に行ったのだがまたまた一悶着起きた。
「この男は・・・まさか“黒牙”の副首領!? しょ、少々お待ちを! 騎士の方をお呼びしますので!」
流石は大物の犯罪者。憲兵は自分達の手に負えない事態と判断し、騎士が呼ばれることになった。
「これはこれは、報告を受けたときは耳を疑ったが・・・実に驚きだ。本当に君が一人でこの男を捕らえたのか?」
「ああ、なんとかな」
「まったく、信じられんな。あの“黒牙”の副首領がこんな少年に・・・」
「それで、あなたは?」
「おっとすまない、紹介が遅れたな。私はアートレア王国騎士団所属のマルクだ。君は?」
「シグル。Dランク冒険者だ」
「D!? ・・・ああ、登録したばかりだからか」
意外とすんなり納得したと思ったら、有名な冒険者の弟子や武闘派貴族の子弟は登録する前から実力があるのでランク以上の実力を持つ冒険者は多くはないが珍しいわけでもないそうだ。
まあ、逆に同じ理由で実力に身合わないランクの冒険者もいるわけだが。
「ん? 待てよ、シグルと言ったか?」
「? ああ」
「いやな、丁度君に渡すものがあったんだよ。これから訪ねようとしていたところだ」
「渡すもの?」
マルクが懐から取り出したのは一通の手紙。それも明らかに高級感溢れる上質な紙が使われており、封蝋で閉じられていた。
「なあ・・・この紋章、その鎧に描かれているのと同じなんだが、まさか?」
「ああ、そのまさかだな。それは我がアートレア王国の紋章、つまり王族からのものだ」
マジか・・・まあ俺は竜人という珍しい種族だし、ついこの間伯爵家をひとつ潰したばかりだから目をつけられるかもしれないとは思っていたが、早くないか?
中に入っていたのはパーティーの招待状だった。そこに書かれていることによると、どうやら第三王女の成人を記念するものらしい。
「開催日は・・・一週間後か。これって同伴は認められるのか?」
「もちろんだ。パーティーには大抵パートナーを連れていくものだからな。というか貴族でない者が一人であの魔窟に迷い込んでみろ、地獄だぞ・・・?」
・・・確かに。その様子が目に浮かぶようだ。
俺のことが気に入らない者に陰口を叩かれるだけではなく、常識知らずの田舎者とナメられて、搾取しようと悪徳貴族に群がられたりすると確実に騒ぎを起こす自信がある。
王族主宰のパーティーでそれはとてもマズい。
「取り敢えず、招待状は確かに受け取った。参加させてもらおう」
「ではそのように知らせておこう。当日は遅れないようにな」
それから二、三話した後にジャンを引き渡して宿へ向かいながら、俺は再び乗せられたフェンの背中の上で嘆息していた。
「まったく・・・この王都でのトラブル遭遇率の高さは物語の主人公の比じゃないな。やることが山積みだ」
「ほんと、あなたといると退屈しなくていいわね」
「それは皮肉か?」
「もちろん」
言ってくれる。退屈しないのは良いことだとは思うが、それにしても多い。整理してみよう。
・第三王女の成人パーティー
・魔の森で妖怪の調査
・コンタドール侯爵の対策
・マリアが狙われた原因の調査と排除
「とりあえず、マリアを襲った奴らがまた来るのか俺の休憩がてら二、三日様子を見よう。それで何もないようだったら護衛を残して森の調査を済ませる」
「ま、他は時間も手間も掛かりそうだし、妥当なところかしらね。・・・あ、見えたわ。あそこよ」
シェーラが指差した先には『安らぎの泉亭』と書かれた看板が掛けられた宿があった。
宿についたところでようやくフェンから降りることを許されたのだが、降りたときに少し足元がふらついてしまった。
「おっとっと・・・」
「もう、だから大人しくしてなさいって言ったじゃない。ほら、肩貸してあげるから」
「いやあ、悪いな。思ったより体の負担が大きかったみたいだ」
フェンは心配そうにしていて俺から離れたくないようだったがさすがにフェンの体長だと建物の中に入れないので渋々馬小屋に向かい、俺達は宿に入った。
カランコロン♪
扉を開けると喫茶店などでよく聞くドアベルの心地良い音色が響き、客の来店を知らせる。すると、カウンターから女性が出てきた。
「いらっしゃいませ!・・・あ、貴女は先程の! ということはその方がもう一人の?」
「もしかして、マリアの母親か?」
「はい、マリアの母でメリッサと申します。この度は娘を助けていただいて本当にありがとうございました」
「大したことはしてないけどな」
「そんなことはありませんよ。お礼と言ってはなんですが精一杯サービスさせていただきますね」
彼女はニッコリと微笑む。思わず見とれてしまいそうな笑みだ。これが大人の魅力というものなのだろうか。
「・・・なにデレデレしてんのよ」
「イテテテテッ! 脇をつねるな! そんなことしてねぇよ!」
「ウフフ、それでは部屋にご案内しますね」
メリッサは俺達のやりとりを微笑ましそうに見ながら部屋に案内してくれた。
「あっ、シグルさん! お帰りなさい・・・って、どうしたんですか!?」
部屋の中ではエミリアとノーラ、そしてマリアが待っていて、ドアを開けるなりエミリアがいの一番にとんできた。
「大丈夫だ。ただの疲労だから心配する必要はない」
「・・・何があったの?」
「今話すよ。だがその前にマリアの件で何か分かったことがあったら教えてくれないか?」
ゆっくりとベッドに腰掛けながら、先に二人の方で何か進展があったかを尋ねる。
憲兵の調査で襲撃者の所属などが分かっていれば、と思ったのだが、あいにく二人は首を横に振った。
「・・・まだ何も。マリアも母親も襲われた理由に心当たりはないって」
「あの男達に関してもまだ調査中のようです」
「そうか、まあそんな簡単に分かるようなことじゃないよな」
次はジャンとの戦いについて話した。
「脳のリミッターを外す、というのはどういうことでしょうか? なんだか聞くからに危なそうなんですが・・・」
「まあ危険と言えば危険だな。生存本能に逆らう行為なわけだし」
『火事場の馬鹿力』というものがある。生命が危険に晒されたとき、とんでもない怪力が出せるのはこの“脳のリミッター”を無意識に外すことで、本来生命を維持するために保存してあるエネルギーを引き出せるようになるからだ。
そのあたりをかいつまんで説明すると、感心と呆れの混じった視線を頂戴した。
「・・・やっぱり危なそう」
「本当、無茶し過ぎよ」
「そう言うなよ、あの時はそれが最善だったんだから。それにうっかり命を使い尽くすようなヘマはしないさ・・・父さんには鼻で笑われた技だけど」
子供の頃、ラノベの知識を再現するのにハマっていた俺はとある落第騎士に憧れて必死に完成させたのだが、父さんはこのピーキーすぎる技はお気に召さなかったらしい。
「それより、またひとつ厄介事を増やしてしまったんだが・・・」
「はい、何ですか?」
「・・・なんか、反応薄くないか?」
「・・・シグルだから。そのくらいじゃ驚かない」
信用あるなー、俺。あんま嬉しくないけど。
「実は憲兵にジャンを引き渡しに行ったときにこんなものを受け取ったんだ」
「手紙ですか?・・・ってこれは、第三王女の成人パーティー!?」
「ふっ。驚いたようだな?」
「当たり前じゃないですか!・・・くっ、まさかここで新たなライバルが登場するなんてっ」
「・・・はぁ?」
なぜそうなる。
「だってそうじゃないですか! きっとガルベージ伯爵の件からシグルさんの事を知った陛下は、きっと第三王女殿下の婚約者として囲い込むつもりなんですよ!」
「まさか。あくまで俺の身分は平民だぞ? そんな簡単に王女を降嫁させられるわけが、」
「甘いっ! 甘いですよシグルさん! そんなだからいつもやり込められてしまうんです! いいですか? 第一王女殿下と第二王女殿下は既に名門の貴族家へ嫁いでいます。ですからシグルさんほど有能な若者であれば、平民であることなど些細なことでしかないのです!」
反論しようとしたら、目をクワッと開かせたエミリアに説教されてしまった。
・・・言われてみれば確かに一理ある。
ただでさえシェーラに告白した直後にノーラとエミリアの二人に迫られてどうしたらいいのか悩んでるというのに、さらに増えるのは俺の精神衛生上よろしくない。
王道なラノベが好きな日本人はハーレムに憧れる者が少なくないが、一夫一妻制が常識となっている日本的価値観を持っているために実際にこの立場に立つと正直キツい。
嫌な予感を感じながらも、俺は森へ行く準備を始めるのだった。
作品を読んでいただき、ありがとうございます。
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