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竜王の息子に転生した俺は王道な異世界生活を楽しむ  作者: 高錫裕貴
2章 王都アリア
23/26

23話 強敵

 どうも、最近物語のペースが波に乗ってきたためか、(自分としては)早めに更新できていて満足げな高錫裕貴です。

 Twitterでも報告しましたが、遂に10000PV到達しました! 感謝感激です!

 今この作品を見てくださっているだけでとても励みになります。これからも頑張って書き進めていきたいと思いますので、温かい目で見守って下さいm(_ _)m

「・・・行っちゃった」

「ああ見えて意外と繊細なところもあるのかしら。ちょっと悪いことしたかも」


 エルフ姉妹はシグルが走り去っていった方向を見ながら少しやり過ぎたかもしれない、と反省していた。


 しかしエミリアがさっきから反応がないので二人がふとそちらを見ると、


「ああ、やってしまいました・・・。戸惑うシグルさんが可愛いからつい・・・最近は大分治まったと思っていたのに、シグルさんに嫌われちゃったかなぁ・・・はぁ~・・・」


 頭を抱えて猛省しているところだった。


 シグルも先程のやり取りで感づいていたがエミリアは物腰丁寧な雰囲気とは裏腹にSなところがある。

 しかも生来根は真面目な性格であるためにやらかしたあと正気に戻ってから後悔するという何とも困った組み合わせな性格の持ち主なのである。


「・・・大丈夫、シグルは良い人。だからちゃんと謝れば許してくれる」

「うぅ、そうでしょうか・・・」

「そうよ。最後は私の悪ふざけがとどめを刺したみたいだし、一緒に謝りましょ?」

「シェーラさん・・・」


 男のメンタルの犠牲によって深まる女の友情。シグルがこの場面を見れば納得いかないながらも否定するわけにも行かずにモヤモヤしそうな場面だ。




 やがて大通りに出ると、まずは憲兵の詰め所に行って黒ずくめの男を引き渡す。そしてそこで行った事情聴取で先程の一件での大まかな流れが分かった。


 まずマリアが友達の家に遊びに行く途中でいきなり黒ずくめの男に囲まれ、連れ去られそうになったのだが、運良く逃げ出すことができた。


 しかし、パニックになってしまったマリアはうっかり来た方向とは逆に逃げてしまい、スラム街へ入ってしまったそうだ。当然スラムの男達に危害を加えられそうになっていたが、その前に黒ずくめの男達が追いついてきてスラムの男達を邪魔だとばかりに殺した。


 そして改めて捕まりそうになったところでシグル達がやってきた、ということのようだ。


「それにしても、シグルは一体どこに行っちゃったのかしら?」


 事情聴取を終わらせて詰め所を出た後も、まだシグルは戻ってきていなかった。


「何かあったんでしょうか・・・」

「・・・むしろ何かをしているのかも」


 実は、ノーラの推測が正解だったりする。


 ー ー ー ー ー ー


「ったく、あいつらよってたかって俺をからかいやがって・・・」


 あのあと、俺はスラム街の中を適当に歩き回っていた。なぜ大通りに向かわずスラム街の中を歩いているのかというと、


「おいこらそこのガキ、命が惜しかったら持ってるもん全部、ぐはぁっ!?」


「おらガキ! 金出せへぶぅっ!?」


「食い物ごはぁっ!?」


「いやあああっ!! 離してぇっ!」

「へっへっへ、そういうなよネエちゃん、楽しませてやっからふぶぉあっ!?」

「え?」


 ・・・という具合にチンピラ、ならず者、強盗、レイプ魔、ありとあらゆる犯罪をしているゴロツキ共を片っ端から殴り飛ばしていた。要するに憂さ晴らしである。


 やがて俺の見える範囲に悪党がいなくなってきたところで、ようやく悪党狩りを終えてみんなのところへ戻ろうと大通りの方へ目を向けた。


 その時、明らかに他とは違う気配を感じた。そこら辺の雑魚とは違う、圧倒的な力の気配。


「こいつは・・・面白い」


 強大な敵の存在で久しぶりに闘争心を刺激された俺は自然と口角がつり上がっていた。


「貴様か。スラムを荒らし回っている冒険者は」


 やって来たのは黒豹の獣人。背が高く細身ではあるが、その身体の下にはしっかりと鍛え上げられた筋肉がある。

 装備は革鎧と短剣が数本。スピードタイプの戦士か・・・、厄介だな。


 ここは王都の中だから、〈竜王の息吹き(ドラゴンブレス)〉のような大規模で破壊力の高い技は使えない。かといってちまちました攻撃は苦手なのだ。

 まずはフェンに分かるように魔力の動きで合図を出し、こちらに呼び寄せる。それまでは時間稼ぎだ。


「そうだ、と言ったら?」

「当然、排除するまで」


 男はスラリと短剣を二本抜く。俺も合わせて拳を構えながら、もう少し時間を引き延ばしつつ情報を得るために話し掛ける。


「待てよ、お前は一体何者なんだ?」

「これから死に行く貴様に教える必要などない」


 キィンッ!


「おわっ! 問答無用かよ!」


 男がこちらの質問を無視して駆け出したかと思えば、あっという間に距離を詰められ、短剣を振るってきた。

 何とか手甲で防いだものの、かなりギリギリだった。


「ほぅ・・・これを防ぐか。なかなかの反射速度だ」

「そりゃどーも」


 敵とはいえ評価されるのは悪くないが、どうも上から目線なのが気に入らない。


「良いだろう、お前は強い。名乗ってやる」


 一定の力を持つ者には敬意を払うようにしているのか、今度は話に応じる姿勢を見せた。


「私の名はジャン。盗賊団“黒牙”の副首領をしている」

「へぇ、“黒牙”ねぇ・・・」

「何だ?」

「いや、この前おたくの下っ端たちに世話になってな」

「ふん、ないとは思うが私をあの者達を基準に考えるなよ?」

「さっきの一撃を見てそんな考えするやつはいねえ、よっ!」


 今度は先程のお返しとばかりにこちらから殴りかかる。しかし呆気なくかわされ、ジャンの後ろにあった壁を砕くだけに終わった。


「そうだな。貴様は彼我の実力差が理解できないような雑魚ではない。これは失礼した」

「・・・暗に自分の方が上だと言ってるように聞こえるが?」

「事実その通りだろう」

「どこまでも上から目線な奴め。その鼻っ柱をへし折ってやる!」


 さらに激しい拳打を浴びせるが、やはりスピードは向こうが上。その上土地勘もあるので、周りの空き家や狭い道に引っ込み、そこかしこから飛び出してきては目にも止まらぬ速さでヒット&アウェイを繰り返していく。


 こちらの攻撃は当たらず、向こうからの攻撃も防ぐので手一杯。このままではジリ貧である。

 そんな矢先、ジャンが少し攻め手を変えてきた。ただこちらにダメージを負わせるための攻撃がどこかに追い込もうとしているような攻撃になっている。


 そうであるからには、わざわざ敵の罠に飛び込むわけにはいかない。そこで一呼吸置いて体勢を整えるためにフェイントを仕掛ける。


 ジャンが飛び出してきたところへ殴りかかると見せかけてそのまま逆立ちからの回し蹴りをくらわせる。ガードはされたものの、体勢を立て直すのには成功した。


「随分と珍妙な技を使うのだな?」

「護身術のひとつでカポエイラっていうんだ。見よう見まねで使っているが、中々様になってるだろう?」


 俺に残っている前世の知識の中には戦闘に関する色々な知識も含まれている。一体前世の俺は何者だったのか非常に気になるところではあるが、今はそんなことを考えている場合ではない。


 スピードで勝る相手を目で追うのはそもそも無理な話。ならどうすればいいのか? 目で追わなければいいだけの話だ。といっても、簡単なことではないが。


 さっきの攻防でジャンの大体の動き方は把握した。目を瞑り、音と気配を頼りにタイミングを見計らう。


「そこっ!」

「くっ!?」


 ジャンの動きから次に攻撃してくる位置を予想し、そこに“破壊”の魔力を乗せた一撃を放つ。結果は見事に成功、彼の短剣は俺の“破壊”に耐えきれず砕け散った。


「・・・この力、もしや黒竜族の“破壊”か? どうりでその若さに似合わぬ強さを持っているわけだ」

「おっと、勘違いしてくれるなよ。俺だって幼い頃から父親の死ぬほどキツイ特訓で鍛えられたんだからな」


 竜族の血による才能だけの力ではなく、ちゃんと努力も重ねた上での力だということを念押ししようとしたが、ジャンはその必要はないとばかりに首を振った。


「そこを疑うつもりはない。ただ、私も久しぶりに本気を出さなくてはならないと思っただけだ」

「はっ、知ってるか? そういう台詞って大体物語の悪役が負ける前に言うものなんだぞ?」


 と挑発はしてみるものの、正直言ってこのままでは勝ち筋が見えない。策はあると言えばあるが、それこそ力任せの技で反動も大きいのであまり使いたくない。


 かといって“破壊”を使い続けるのにも限度がある。ノーリスクで使える強力な技ではあるが、一回使うだけでもかなりの集中力を要するので気軽にホイホイと使えるものではないのだ。


「ただ、そうも言ってられないなこれは・・・」


 悔しいが俺一人では少し手に余る。フェンが来るのは・・・まだかかるか。ならもう少し時間稼ぎを、


「さっきから何を気にしている?」

「っ!」


 しまった、気付かれたか!


「いつの間に呼んだか知らんが、その様子だとどうやら応援を待っているらしいな。その前に仕留めてやる」


 ジャンはヒット&アウェイからこちらへの特攻に戦法を変えた。多少のダメージを覚悟して短期決戦を図る心づもりらしい。


 だが、それはこちらにとっても好都合だ。短期ならこの技を使える。


「〈身体加速(アクセラレーション)〉!」


 その瞬間、周りの世界がスローモーションのようにゆっくりとした動きになる。実際には周りが遅くなったのではなく、俺の認識速度が速くなったのだ。


 身体加速(アクセラレーション)は体の筋力を強化するだけではなく自らの脳にも干渉し、リミッターを外して限界以上の強化を可能にするという、速度に特化した身体強化の派生技だ。


 ただし今述べたように、生物にとって必須の本能である脳のリミッターまで外してしまっているので長くは持たないうえに効果が切れたあとの反動が非常に大きい。

 もとろんその代わりに得られる効果は絶大で、強化倍率は数十倍にも達する。


「フッ!!!」

「な、ぐはぁぁああっ!?」


 まずはジャンの懐に踏み込み、腹に掌底を打ち込む。

 彼の方からすれば、俺が消えた瞬間に吹き飛ばされたように感じただろう。だが、まだまだ俺のターンは終わらない。


 ジャンを吹き飛ばしたところへ先回りし、次は空中に蹴りあげる。そこへまた先回りして真横に蹴り飛ばし、最後に両手の打ち下ろしでフィニッシュ。

 地面に叩きつけられたジャンは完全に気を失っていた。


「ウォン!」

「シグル! 大丈夫!?」


 ジャンの戦闘不能を確認して強化を解いたところでシェーラを背中に乗せたフェンがやって来た。


「ああ、なんとかな・・・うっ・・・」

「ちょ、ちょっと! 全然大丈夫じゃないじゃない! どこかやられたの?」

「このくらいはまだ平気だ・・・ちょっと極度の疲労になってるだけだから・・・」

「自力で立つのがやっとのくせに何が平気なのよ・・・ほら」

「すまん、助かる・・・」


 シェーラの肩を借りて、何とか立ち上がる。そのまま伏せて待っていたフェンの背中に乗せてもらった。


「ところでこいつ、一体何者? シグルにそこまでさせるなんてよっぽどでしょ?」

「この前馬車を襲ってきた“黒牙”って盗賊団がいただろ? あれの副首領らしい・・・」

「ああ、あれね・・・まあ詳しい話は後で聞くわ。まずは移動しましょう」


 黒ずくめの男と同じようにジャンを縛り上げてからフェンに繋ぐと、俺たちは大通りの方へ歩き出した。

 今回初めて戦闘らしい戦闘を書きました! 色々と拙いところはあるとは思いますが、頑張って経験値を貯めていきたいと思います。

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