22話 シグルは女に弱い?
潜入・ドンパチ何でもござれ!どうも高錫裕貴です。
最近は海賊の秘宝を探すのにハマっていまして、そのなかでも敵地に潜入して一度も発見されずにスニークキルで全滅を目指すのと、真正面から突っ込んで大立ち回りの二通りの楽しみ方があって、何とか日々の退屈をしのいでおります。
ただ問題なのが、シリーズものなので全部欲しくなってしまい、つい通販のカートへ入れた結果、出費が結構痛い・・・
悲鳴が聞こえた場所に駆けつけてみれば、そこは思っていた以上にひどい現場だった。
怯えたようにその場でうずくまっている五歳くらいの小さな女の子と、それを囲むように立っている黒ずくめの男達。さらにその周りには喉をナイフで貫かれている男の死体が転がっている。
そして、今まさに震える少女に向かって男が手を伸ばしているのが見えた瞬間、思い切り跳んで上から踏みつけた。
ズドォォォォオオオンッッ!!
「おい、何してんだお前らっ!」
地面にヒビが入る程に踏みつけたのだが男はギリギリ生きていた。服になにかしらの防御措置が施してあるのかもしれない。まあ俺の攻撃力の前には命を繋ぐ程度の効果しかないようだが。こいつ白目剥いてピクピクしてるし。
「まずい、退くぞ」
「ああ」
一人がやられたのを見て即座に撤退の姿勢を見せる。良い判断力だが・・・もう遅い。
「「“風よ”!」」
「〈ショックボルト〉!」
エルフ姉妹による風の精霊魔法で逃げようとする二人を上から押さえつけ、エミリアが感電させて意識を奪う。
「ナイスだ、三人とも。それにしても・・・何者だ? こいつら」
「さあね。憲兵に引き渡しておけばどうにかしてくれるでしょ。それよりもあなた、大丈夫? どこか怪我したりはしてない?」
シェーラが手を差し伸べると、襲われていた女の子は素直に手を取った。
「う、うん。たすけてくれてありがとう。おねえちゃんたち」
「どうってことないわ。家まで送ってあげるから、一緒に帰りましょ」
そう言ってシェーラは女の子を安心させるようにふわりと微笑む。
ズキュゥンッ!
「くっ・・・!」
「ど、どうしたんですかシグルさん!」
「シェ、シェーラの母性あふれる微笑みに心を撃ち抜かれた・・・可愛すぎる・・・!」
「ああ、確かにシェーラさんの表情といえば普段のクールなものと、シグルさんに対するツンとデレの3つくらいしか見たことないですねぇ」
「・・・姉さんは、結構面倒見が良い。私にも昔はよくあんな笑顔を見せてくれた」
「な、何だと・・・くっ、羨ましすぎるだろ・・・!」
俺にもあんな笑顔を見せてほしいと思う反面、俺をあやすシェーラというのも何か変だし、どうしたら良いんだ?
「ちょっと、聞こえてるんだけど?」
「そうか、ならさっきの笑顔を俺にも見せてくれ! さあ!」
「~~~っ、恥ずかしいことを叫んでるんじゃないわよ!」
バチーーン!
叩かれた。解せぬ。
「・・・シグル、シグル」
「何だ、どうした・・・どうした?」
ノーラに呼ばれて振り返ると、なぜか口角だけが不自然につり上がっている彼女の顔があった。見た感じ笑おうとしているのだろうが、残念ながらただの変顔でしかない。
「・・・ん、どう? キュンときた?」
「うーん、クスリとはきたな」
「・・・むぅ。案外難しい」
顔を撫でながら思案顔をするノーラ。そしてエミリアはノーラの変顔がツボったのかそっぽを向きながらクスクス笑いを必死にこらえていた。
「全く、なにやってるんだか・・・ほら、馬鹿なことしてないで早く行くわよ」
シェーラは呆れを幾分か含んだ声でそう言うと、女の子の手をとって大通りの方へ歩き出し、俺たちもそのあとに続いた。黒ずくめの男達については縛り上げている縄の端をフェンにつないで運ばせている。
「ねえねえ、おねえちゃんたちってつきあってるの?」
「え!? ええ、まあそうね。そんな感じ、かな・・・」
どうやら見た目によらずおませさんな女の子は、恋バナに興味津々のようだ。
「そうなんだ! みんなおにいちゃんのおよめさんなの?」
「はい! その通りです! いやあ、やっぱり私とシグルさんとの愛の深さは純粋な子供にはわかっちゃうんですねぇ。えへへ」
「な、勝手なこと言ってんじゃないわよ。まだ恋人になった訳じゃないでしょ?」
「ええ。まだ、ですけどね? シグルさん?」
「俺に振るなよ・・・」
「・・・シグル、ここが男の見せ所」
エミリアがわざとらしく俺に抱きつけば、シェーラがそれに噛みつく。ノーラはマイペース。最近はこのやり取りが日常化してきているが、俺が気まずいことに変わりはない。
ノーラの言う通り、俺がハッキリさせないといけないんだろうが・・・いかんせん俺は恋愛経験値があまりない。そんな俺にどうしろと言うのか。悩みの種は尽きない。
「そ、そういえばまだ名前を聞いてなかったな。君の名前は何て言うんだ?」
あからさまではあったが、誤魔化すために話題の転換を図る。
「わたしマリア!」
「そうか、俺はシグル。で、手を繋いでるエルフのお姉さんがシェーラで、もう一人のエルフがその妹のノーラ。そしてこの意外とちゃっかりしてるお姉さんがエミリアだ」
「シグルさん、私の紹介だけ何か悪意がありません?」
「そうか? 俺が断れないようにわざわざ大衆の面前でダンブラーさんを巻き込んだ告白で付いてきて、その後は傍目から見れば確実に恋人に見えるように振る舞い、かといって嘘はつかず、宿やテントでは夜中にいつの間にか俺の寝床に入ってきて、朝俺の目が覚める前に出ていって、俺が部屋を訪ねれば何故か必ず半裸の状態で、しかもそのまま入らせようとして、なにげにノーラまで巻き込んで、最近は無味無臭の惚れ薬やらなんやらを入手しようとあれこれ画策して・・・」
「わーっ!わーっ!分かった、分かりましたから! ちゃっかりしててすみません! というか何でそんなことまで知っているんですか!?」
「俺の相棒は優秀だからな」
「ウォンッ!」
そう、フェンはその見た目や神獣というステータスから戦闘向きなイメージが強いし、実際その通りなのだが、調査や尾行、潜入などの仕事もこなせるのだ。
神獣が持つ独特の気配は非常に感知しにくいので、フェンが本気で身を隠せば俺でも見つけるのが難しい。昔はそれでよく修行を兼ねたかくれんぼもしたものだ。
さらにフェンはあまり睡眠を必要としない。眠る気持ちよさは感じるらしいので睡眠を楽しみはするが、見張りなどをまかせられるのは大きなメリットである。ついでに、寝たふりが上手い。
「ま、というわけで俺に隠れて何か企んでも無駄だってことだ」
俺がフェンと共にドヤ顔で言ってやると、エミリアは悔しがるか、感心した顔でも見せるのかと思いきや、むしろ楽しそうにニヤリと笑った。
「つまり、シグルさんは意外と束縛系なんですねぇ?フェンちゃんまでつかって私たちを監視してるなんて。やだ、怖ーい」
「な、ち、違う! そんなんじゃなくて、妙なことをするなって意味であってだな!」
「なるほど。妙なこと、つまり自分以外の男に近づいたりするなよ、というわけですね?」
「ちっがーーーうっっ!!」
都合よく解釈して追撃してくるエミリア。何となくドツボにはいってる気がしなくもないが、“束縛系”なんて不名誉な称号をつけられてはたまらんと、全力で否定するがすでに焼け石に水である。
そしてここで思わぬ伏兵が登場。
「・・・シグル、私は他の男に靡いたりしないから安心して」
「ちょっと待てノーラ、その言い方だとまるで俺が女に逃げられたくなくて必死になってるやつみたいじゃないか!」
「へーぇ、じゃあシグルさんは別にシェーラさんや私たちに逃げられたとしても気にもとめないと。ま、確かにシグルさんほどの男なら女に困ることはないでしょうしねぇ」
「いちいち揚げ足をとるんじゃねぇぇぇえええっ!」
口擊が止まらないエミリア。心なしかものすごく楽しそう、というか快感を覚えてるように見えるのは気のせいだろうか。何となく彼女の本性を垣間見た気がする。
「シェーラ頼む、助けてくれ~」
「・・・知らないっ」
「なんでぇっ!?」
旗色が良くないことを悟った俺はシェーラに助けを求めるも、そっぽを向かれてしまった。何か拗ねられるようなことをしたのかと思ったが、よく見ると笑いを噛み殺していた。
「・・・ち」
「「「ち?」」」
「ちくしょぉぉぉおお!! 俺に味方はいないんだぁぁぁあああ!!」
俺が叫びながら走り去った後、マリアがポツリと一言、
「おにいちゃんって、ママにいじめられてるときのパパみたい」
と呟いていたらしい。
作品を読んでいただき、ありがとうございます。
誤字脱字、矛盾点などございましたら、遠慮なくご指摘ください。
もしよろしければ、ブックマーク登録と評価ポイントを付けていただければ幸いです。




