21話 あくまでお約束
最近、何となく始まった前書きの挨拶ネタが思い付かなくなってきた・・・というのをネタにして今話をしのいでいる高錫裕貴です。
最近は皆様のお陰でPV数が着実に増えていて、日別のPV数が2ヶ月連続で自己ベストを更新したり、総合ポイントが3桁に到達したりと、嬉しいことが続いております!
これからも頑張っていきますので、是非見守っていってください。m(_ _)m
「妖怪、ですか?」
この世界で妖怪というのは既存の魔術や魔物の能力では説明できない怪奇現象を引き起こす未確認生物のことを指す。
大抵は何かの見間違いであったり、科学的な現象を理解できていないだけで知っていればなんてことない動物の特徴や能力だったりするのだが、稀に生態がよく分かっていない神獣の仕業だったりするので一概にバカにすることはできない。
「ああ、王都の北側に位置する魔の森に妖怪が出るとの噂がある。いつもの与太話だろうと低ランクの冒険者を調査に向かわせたのだが、そいつらが奇妙な体験をしたそうでな。もう少し本格的に調査することになった」
なんでもその森の中を歩いていると、急に霧が出てきて道に迷ってしまうらしい。
そして夜になり、かなり冷え込んできた頃に濃霧の向こうからぼんやりとした灯りが見えてきて、そちらに向かうとなぜか山の奥なのに一軒家が建っている。
近づいてみると中から出てきたのは着物を着た妙齢の美女。そして彼女はこう言うのだ。
「あらまあ、このような山奥でさぞやお疲れのことでしょう。さ、中にお上がりなさいな。温かい食事もございます。今晩は家に泊まっていかれると良いでしょう」
そう言われて中に入れてもらうと囲炉裏の火の上に汁物が入った鍋が掛けられていて、徳利に入った酒も用意されている。
「ありがたい、家に泊めてもらうだけではなく、こんなに美味い食事までご馳走してもらってなんと礼を言えば良いのやら」
美味い食事と美女のお酌による酒を心ゆくまで堪能したあと、ふかふかの布団で眠りにつく。
次の朝。
目を覚ますと、そこに家や美女の姿はどこにもない。
あるのは土と木の葉が入ったボロボロの器と泥水の入った汚い徳利。そこで初めて何かに化かされたのだということに気づくのだった。
「へえ、何だかおとぎ話のような話ね」
「・・・ただの、いたずらみたい」
「みたい、ではなくて本当にただの悪ふざけの可能性もありますね。神獣や一部の知能が高い魔物は人間をからかったりすることもあるそうです」
エルフ姉妹は話の感想を述べ、エミリアは自分の知識をもとに妖怪の正体について考察している。
「シグルはどう思う?・・・シグル?」
「・・・あー、いや、何でもない。気にするな」
何でもないはずがない。
・・・ものすごーーーく、聞き覚えのある話であった。
まさか童話のテンプレまでぶっこんでくるとは・・・
「まあそんなわけで、こいつは高ランクの冒険者に回そうと思っていたんだが、竜人にエルフ、Aランク冒険者。こんな豪華なパーティーは中々いないからな。折角なので君たちに任せたい」
「報酬はどうなっていますか?」
「小金貨で5枚。結果によっては別途で追加しよう」
悪くない金額だ。小金貨だと、大体Bランク相当の報酬である。
「分かりました、引き受けましょう。みんなも良いよな?」
「ええ、特に反対する理由はないわ」
「・・・異議無し」
「私も良いですよ」
「決まりだな。手続きはこちらで済ませておこう」
俺達は部屋を出たあと、受付で本来の目的である依頼達成の報告をしてからギルドをあとにした。
「さて、お次は宿だな。エミリア、王都に来たことはあるんだろう? おすすめはないか?」
「んー・・・そうですねぇ、ではあそこにしましょうか。こちらです。案内しますよ」
Aランク冒険者であるエミリアはもちろん旅の経験もある。なのでおすすめを聞いてみると、少し考えてから前に立って歩き出した。
「えーと、確かこの辺に・・・」
「ちょっと待て」
「え? どうかしましたか?」
俺とシェーラ、ノーラが急に立ち止まったことに困惑の表情を浮かべるエミリアをよそに俺達は耳を澄ませる。
「なあ、シェーラ、ノーラ、聞こえたか?」
「ええ、あれは悲鳴ね。しかも幼い子供の声よ」
「・・・急ぐ!」
「え、ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 何なんですかも~!」
俺達は声のした路地裏へと駆け出した。
ー ー ー ー ー ー
「はっ・・・!はっ・・・!はっ・・・!」
少女は必死に足を動かしていた。
少しでも速く、遠く、あの怖い人達から離れるために。
「はっ・・・!はっ・・・、あっ、!」
しかし、少女は運悪く地面のへこみに足をとられ、転倒してしまう。
「うぅ、いたい・・・」
「へへへ、おいおい、ガキがこんなところに何の用だよ?」
「え? あ・・・」
いやらしい笑みを浮かべながら少女に近づいてきたのは、みすぼらしい格好をした五人の男達。
少女は逃げるのに必死で、うっかり路地裏からスラム街に入ってきてしまっていたのだ。
スラム街に迷い込んでしまった者はかなり悲惨な目に遭う。身代金目当てに拐われたり、その辺の陰に連れ込まれて暴行や強姦などの被害に遭ったり。さらに運が悪ければ殺されたりなんてのも珍しいことではない。
そしてこの男達もまた、新たに迷い込んだ獲物を狙ってやってきたのだ。
可哀想な少女は、その男達に捕まり、他の被害者達のような悲惨な運命を辿るはずだった・・・が、そうはならなかった。
「へへ、今日はついてるぜ。さあ、大人しく俺にァ゛グッ!」
「な、どうし、ガハッ!?」
五人の内の二人が、どこからか音もなく飛来したナイフに首を貫かれ、そのまま息絶えた。
「ヒッ・・・! お、おい、逃げるぞ! なんかやべぇ!」
「ああ、そうし、ヨ゛ゴボォ゛ッ・・・」
「あ、あああぁぁっ!!ァ゛ッ・・・ガ・・・!」
「キ、キャアアアアアァァァッッ!!」
突然の惨劇に驚いた残りの三人はその場を離れようと逃げ出したが、その瞬間にまた二人が同じように殺された。
残った最後の男は恐怖のあまり腰を抜かしてへたりこんでしまった。
「い、嫌だ、死にたくねぇっ! どこだ、姿を見せ、ヘゲッ!」
結局、その男もナイフで喉を貫かれた。
「い、いや・・・いやぁ・・・」
「フン、運の悪いゴミどもだ」
「ひっ!?」
冷たい声とともに現れたのは全身黒ずくめの衣装を着た男。そのあとに続いてもう二人出てきた。
「そんなことはどうでもいい。早く回収するぞ」
「ああ、そうだな」
「いや・・・たすけて・・・」
「すまないな、悪いが諦めろ」
恐怖に震える少女の命乞いを男は無慈悲に切り捨て、拘束しようと手を伸ばしたとき、そのお約束は起こる。
ズドォォォォオオオンッッ!!
「おい、何してんだお前らっ!」
主人公の登場である。
作品を読んでいただき、ありがとうございます。
誤字脱字、矛盾点などございましたら、遠慮なくご指摘ください。
もしよろしければ、ブックマーク登録と評価ポイントを付けていただければ幸いです。




