20話 状況把握
フッフッフッ・・・いよいよ物語が本格的に動き出したぞ・・・このまま行けばランキングを駆け上がり、人気作品になるなど造作もない!
・・・調子にのりました。ごめんなさい。高錫裕貴です。
最近コロナ太りというやつのせいか、少しお腹が出てきてしまい、遂にバイトの先輩にさらっと「太ったね」と言われてしまいました・・・今までそんなことを言われたことがなかったので、かなりグサッときましたね。
ということで、執筆で息抜きをしつつ、筋トレに励みたいと思います。
ダニエルに連れられてやってきたのは、最上階の一番奥にある統括の部屋。綺麗に整理されているが、窓際にある執務机にはその多忙さを示すように書類が山のように積み上げられている。
部屋に置いてある物はかなり質が良く、貴族のようだと思っていたら冒険者ギルドや商業ギルド、職人ギルドなど、国家の承認を得ている組織の長は一代限りの名誉爵位を持っているそうだ。“フォン”が付いていない家名がその証なのだとか。
ちなみに支部長が名誉子爵で、統括が名誉伯爵だ。
中に入ると、ダニエルはこちらへソファを勧めた。
「まあ掛けてくれ」
「失礼します」
俺たちはソファに座り、緊張の面持ちで彼の言葉を待っていると、ダニエルはそれまでこわばらせていた顔を崩し、少し困ったような笑顔になった。
「まったく、何かやらかすとは思っていたがまさか来て早々とは思わなかったよ。シグル」
「なぜ、俺の名を?」
もしかして、ダンブラーと同じように父さんの仲間だったりするのだろうか?
そう思って問うてみると、彼は若干眉をひそめた。
「どうやら君は自分の存在が周囲に与える影響をもう少し知った方がいいな。君のことはこの国の王族とその側近にはもう知られているし、ギルド内でも幹部クラスの間で情報が共有されている」
「それは、俺が竜人だからですか?」
「それもある。あとは君の相棒の神狼や父親である“漆黒の竜王”、とかな」
「もうそこまで把握してるんですか」
何気なく返した返事だったが、それを呟いた瞬間、エミリアが「あ・・・シグルさん、それは・・・」と何かを言いかけたところで諦めのため息を吐き、ダニエルの口角がつりあがった。
なにやらまずい反応だ。
「フ、やはりそうだったか」
「どういうことですか?」
それに対して、気まずそうに答えたのはエミリアだった。
「あの、シグルさん。さすがにお父様がレクス様であることをおじいちゃんはむやみに言いふらしたりはしないと思いますが・・・」
「・・・あ」
くっそぅ、またやられた・・・
「はぁ、なにやってんだか・・・」
「・・・シグル、油断大敵」
「面目ない・・・」
やっぱりこういうのは苦手だ。どうも戦闘で相手の考えを読むのとは違うんだよなぁ・・・
落ち込んでる俺を見て、ダニエルは気にするなと笑う。
「安心しろ。君の父親が“漆黒の竜王”であることは君が黒竜族の竜人であることから簡単に推測できる。竜人なんてそんなにいるわけじゃないからな」
「そうですか・・・」
「とはいえ、これからは気を付けていかないとな。この国に限らず、王都というのは海千山千の狸がわんさか集まっている場所だ。特に政治の世界に影響を与えるほどの力を持つ君は、下手をすればいらぬ混乱を招くことになる」
「・・・はい、すみません」
ぐうの音も出ないとはまさにこのことか。改めて自分の未熟さを自覚させられてしまった。
「君は、とても素直な性格をしているのだな。普通は君くらいの年齢の若者であれば説教をすればどんなに正論であっても多少は不満や反感を持つものだが」
「俺は敬意を払うべき人にはしっかりと敬意を払っているつもりです。倫理や道徳などの精神面の教えも父にしっかり叩き込まれていますので」
「そうか。確かに竜族は高いプライドと共に高潔な精神を持つと聞く。余計な心配だったようだな」
ダニエルは満足げに頷いたあと、纏う雰囲気を真剣なものに変える。
「さて、話を本題に戻そう。これからの対応についてだ」
それを聞いて俺達は気を引き締める。
なにせ相手は侯爵家という大貴族。特に権力によって攻撃されると、身分的には平民でしかない俺にとっては非常に厄介だ。ギルドが間に立ってくれたとしても限度があるだろう。
「まずはこの国の大まかな政治体制とともにコンタドール侯爵家がどいうものかを説明しておこう」
アートレア王国は国王を中心とした封建制の国で、国王が最高権力者ではあるが、やはり貴族のなかにはいくつかの派閥が存在しており、それぞれの利権をめぐる政治闘争が常に行われている。
ひとつは国王派。国王を中心に政権の安定と国家の繁栄を目指す保守派で、貴族社会の中でも最大の派閥であるが、さらに第二王妃の息子である第一王子を支持する派閥と第一王妃の息子である第二王子を支持する派閥に別れている。
しかも第一王妃が元公爵令嬢で第二王妃が元子爵令嬢という王妃の間の身分差や、第一王子・第二王子ともに優秀で、人格的にも問題ないことなどの様々な要因重なって、どちらの派閥も勢力は半々、国王は大いに頭を悩ませているらしい。
次に革新派。貴族至上主義を掲げて政治における貴族の権力を強化することを目的としており、過激思想・差別・汚職などの温床になっている国の暗部とも呼べる派閥。大きな商会との繋がりを持っているので、経済に対する影響力が強く、根絶が難しい。
最後に中立派。と言っても武芸一辺倒な者や、研究者など政治にあまり関心がなく、どちらの派閥にも属していない貴族の総称のようなもので、正確には派閥ではない。
そして大体予想はついているだろうがコンタドール侯爵は革新派に所属する有力者の一人。本人や子供が横暴な性格で有名なのに加えて、なにかと黒い噂が絶えないようだ。
「あのバカ息子を見ていれば分かるだろうが、父親であるコンタドール侯爵も相当のクズでおまけにプライドが服を着て歩いているようなやつだ。報復がないわけがない・・・が、恐らく数日は猶予があるだろう」
「それはなぜですか?」
「やつらはクズだが馬鹿じゃない。今日の出来事を聞き、調べを入れれば竜人の存在と価値に気付くだろう。なにせ竜族は力の塊とまで呼ばれるような種族。やつらにとっても、君は喉から手が出るほどに欲しい人材だ。そしてそれは国王派も同じ。そんな君に手を出す以上、その動きは慎重になる」
「確かに」
となると、真っ昼間に堂々と襲ってくることはないだろう。もちろん警戒はするが、気を付けないといけないのは奇襲や搦め手の類いだな。
「ま、今のところ話しておかなければならないのはこんなところだ。気になることや相談したいことがあれば遠慮なく訪ねてきてくれ。君は俺たちにとっても貴重な人材だからな」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて、何かあればまた伺います」
俺達が軽く一礼して席を立とうとすると、ダニエルに呼び止められた。
「まあ待て、もうひとつ聞いてもらいたい話があるんだ」
「なんでしょうか?」
ダニエルは机の上にある書類の山から一枚の依頼書を引っ張りだし、こちらに差し出した。
「なあ、妖怪って知ってるか?」
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