19話 またしてもお約束なトラブル
祝☆一・周・年ッ!どうも、高錫裕貴です。
第1話を投稿してから早一年が経ちました。特に人気が急上昇したり、ランクのトップに食い込んだりというのはないですが、それでもブックマークは少なからず登録してもらっているし、割と高い評価をしてくれた人もいます。本当に嬉しいです。
これからも是非本作を温かい目とともに応援していただければと思います。皆さんよろしくお願いします!
※正確には一周年は明日ですが、そこはご容赦ください。日曜日に投稿した方がたくさんの人の目にとまりやすいかなー、という作者の姑息な作戦です。
「おぉ~、ここが王都か~」
レフィリアを出てから二日後の夕方、いくつかの村を経由してついに王都へやってきた。高く豪華な城壁の向こうにはアートレア王国の象徴である王城が見えている。
「どうもありがとうございました。シグルさん達がいなかったら今頃どうなっていたことか・・・」
「そんなにかしこまらなくてもいい。俺たちはただ自分の仕事をしたまでだ」
「ええ、シグルさんの言うとおりです。ですからお気になさらず」
依頼達成の証明書をもらい、町の中に入ったところで御者の男と別れた。
王都はやはり国の中心なだけあってレフィリアと比べ、すべてにおいて規模が大きい。露店はなく、住居も店舗も2階建て以上のものがところ狭しと並んでいる。
とりあえず周りの店を一通り見て回り、途中で買ったものはもちろん飯。匂いにつられた俺とフェンがいろんな店で手当たり次第に買いあさり、銀貨数枚分の買い物をしたが、そのすべては問題なく俺たちの腹の中に収まった。
シェーラ達はその様子を呆れたように見ていたが、彼女たちも甘味をしっかり食いまくっている。
だが俺はあえてそこには突っ込まない。俺は不用意に女子の地雷を踏み抜くような鈍感系ではないのだ。
そうしているうちに一際存在感を放っている冒険者ギルドが見えてきた。5階建てで、隣にはコロッセオ並みに大きな闘技場も併設されている。
ギルドの中は依頼を終えた報告やギルド内の酒場で飲み食いしている冒険者達でごった返していた。そんな彼らの視線が、一斉に俺たちの方へ集まる。
『おい、あれ見ろ。金色の魔術師だ』
『マジか!あの有名な二代目の?しかもエルフまでいるじゃねぇか!』
『今はレフィリア支部の受付嬢をしてるって聞いてたんだけど』
『冒険者稼業に戻ったのか?』
『一緒にいる男の人は何者なのかしら?』
当然ながら俺に向けられる視線は疑問や嫉妬、殺意など、あまり良いものがない。ただ気にしていたらきりがないので、それらの視線を無視して受付の列に並ぶ。
「いらっしゃいませ。ご用件は何でしょうか?」
さすが王都。受付嬢のレベルも高い。みんなエミリアに勝るとも劣らない美人揃い・・・いててっ!
「「シグル(さん)?」」
「いや、王都のレベルは高いなと思ってただけで、変なことは考えてないから」
「ふふ、仲がおよろしいんですね」
そう、このまま終わればただの日常の一ページで済むんだが、どうしてもこの世界は俺をテンプレに巻き込みたいらしい。
「ほう、Aランク冒険者にエルフか。これは珍しい」
そう言いながら近寄ってきたのはキンキラキンの悪趣味な衣装に身を包んだいかにもなお坊ちゃま。といっても見た目は中年で、その服装だけでなく腹の肉にいたるまで贅の限りを尽くしている。
「そろそろ冒険者を補充しようと思って来てみたが思わぬ掘り出し物を見つけたな。おいそこの三人、私の屋敷まで付いてこい。金はやるぞ」
なんとお約束なクソ野郎か。もうすでにシェーラ達を手に入れたつもりなのか、ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべながらいやらしい視線を向けている。
しかも早速手を伸ばそうとしたので俺が間に立ってその手を阻んだ。
「む、なんだ貴様は」
「俺は、」
「どうでも良い。おい、こいつが邪魔だ。斬れ」
お坊ちゃまはこちらの言葉も聞かずに両隣に控えていた護衛の一人へ命令した。護衛はかなりの手練れで、ほとんど音を立てずに洗練された動きでこちらへ斬りかかってくる。
「危ないっ!」
とっさに声を上げた受付嬢も含め、周りにいる者は次の瞬間に俺が斬り殺されている惨劇を想像しただろう。だが、もちろんそうはならない。
ガキン!
「なに・・・っ!?」
まっすぐに俺の首めがけて振るわれた剣は振れた瞬間にポッキリ折れた。からくりは俺が首に纏わせた“破壊”の魔力なのだが、それを知らない護衛はただ困惑するだけ。その隙は、俺の前では致命的である。
呆然としている護衛の顔面に回し蹴りを叩き込み、そのまま吹き飛ばした。
ズドォォォン!!!
勢いよく飛んでいった護衛は轟音を立てて壁に突き刺さり、ピクリとも動かなくなった。一応言っておくが殺してはいない。気絶しているだけだ。
それを見たもう片方の護衛は警戒を強めるが、意外にもお坊ちゃまの方はあまり変化がない。
「ほーう、ダズルを一撃とはなかなかやるではないか。気に入った、お前も特別に護衛として雇ってやろう。金も女もやるし、そこの娘も使わせてやろうではないか。さ、ダズルを連れて付いてこい」
・・・なんて自分勝手な奴だろうか。
究極の自己中とでも言おうか、すべてが自分の歪んだ価値観のみで成り立っており、自分の言葉が否定される可能性など少しも疑っていないようだ。本当にこんな人間が存在するのかと怒りを通り越して呆れてしまう。
「はぁ・・・言いたいことはいろいろあるが、まず誰だお前は」
「フン、この私を知らないとはな。まあ良い、私はマルケル・フォン・コンタドール。由緒正しきコンタドール侯爵家の次期当主だ。平民でありながらこの私に認められるとはお前はなかなか運が良い。さあ、分かったらさっさと、」
「お断りだ」
「・・・何だと?」
「お断りだと言ったんだ。人の連れに手を出そうとした挙げ句、俺のことまで殺そうとしたくせに何寝ぼけたことを言ってるんだか。オークのケツでも舐める方がまだマシだ、っとまずいな。そうするとお前のも舐めなくちゃいけなくなる。これは失敬」
軽蔑の視線とともに俺が放った下品な挑発はノリの良い野郎どもにはウケたようで緊張感が漂っていたギルド内は一転して爆笑に包まれた。
『ぎゃははははっ!良いぞ兄ちゃん!もっと言ってやれ!』
『そいつの傲慢な態度には前からムカついてたんだ!』
『別嬪を侍らせやがっていけ好かねえ野郎だと思ってたが案外やるじゃねえか!』
したり顔でお坊ちゃまの方を見れば、恥辱からかはたまた怒りからか、顔を真っ赤に膨らませてまるでトマトのようになっていた。
「き、き、貴様・・・この私を侮辱してただで済むと、っ!?」
最後まで言い切る前に、お坊ちゃまの足を払って仰向けに転がす。そしてブニッと顔面を踏みつけながら濃厚な殺気を叩きつける。
護衛が動こうとするが、そちらにも殺気をぶつけて怯ませる。
「お前がどこの誰だろうと知ったことか。気に入らない奴の言うことに従うつもりは毛頭ない。これ以上ごねると・・・潰すぞ?」
ブニィィィッと踏みつけている足にさらに力を込め、殺気を高めながら脅しを掛けると痛みと恐怖に耐えかねたお坊ちゃまは遂に音を上げた。
「ヒ、ヒイイイイィィッ!わ、わかった!帰る!帰るから!」
「ったく。始めからそうすりゃ良いんだ」
殺気を止め、足をどかしてやればお坊ちゃまは護衛を連れて逃げるように去って行った。ダズルとかいう護衛は相変わらず壁に突き刺さったままで置いてかれてしまっていたが。
俺には関係ないので放っておこう。とりあえず目の前の問題が片付いたから良し。
「ああ、そうだ。楽しく飲んでいたところを邪魔して悪かったな。この場は俺が持つから好きなだけ飲み食いしていってくれ」
「「「「「オオオオオオォォォッッ!!」」」」」
俺が金貨をカウンターのマスターに向けてはじきながらそう宣言すると大きな歓声が上がった。
「まったく、かっこつけちゃって」
「まあ良い手だとは思いますよ。冒険者達に好印象を与えておくことは大きなメリットになります」
「・・・チョロい」
「ノーラ、男なんて単純なもんだ。だがそれが良いんだよ」
そんな完全勝利ムードのこちら側とは裏腹に、ギルド職員側はかなり顔を青くしていた。
「・・・うぅ、一体どうしたら良いんでしょう」
「どうかしたのか? 顔色が悪いぞ?」
俺の反応があまりにのんきに見えたのか、若干苛立ちを含んだ声で受付嬢が答える。
「そりゃ気分も悪くなりますよ。あの方の名前を聞いていたでしょう? あなた達、ひいては我々冒険者ギルドはコンタドール侯爵家に真正面から喧嘩を売ってしまったんですよ?」
・・・確かに、奴らが俺個人ではなく、冒険者に喧嘩を売られたともとれるような追い払い方をしてしまったな。
冒険者ギルドという巨大な組織と侯爵家というこれまた強大な力を持つ上級貴族との対立。うん、面倒な予感しかしない。しかも貴族というのはプライドの塊だから喧嘩を売られたら買わないわけがない。
・・・・・・ちょっとだけやらかしてしまったかもしれん。
「どうするつもり? シグル」
「原因は俺にあるわけだから責任を取るのは当然として・・・どうしようか」
「それについては、俺とじーっくり話し合おうじゃないか」
強烈な殺気とともに掛けられた冷たい声に反応して振り返った先には、綺麗な青筋を浮かべた大男が立っていた。
「俺はダニエル・リー。アートレア王国の冒険者ギルド統括をしている。少し話を聞かせてもらおうか」
やはり俺はやらかしてしまったらしい。
ギルド統括という大ボスを前にしては一冒険者でしかない俺に断れるはずもなく、大人しく従うのだった。
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