17話 修羅場(?)
よしっ!今回は早めに投稿出来ました!高錫裕貴です!
最近見た目は子供な探偵のアニメへの熱が再燃しまして、DVDや公式の動画を見まくって暇を潰してます。憧れますよねぇ、ああいうの。いつか自分もあんな感じで周りの人をあっと驚かせるような何かをしてみたい・・・
あれから数日は、次の町への準備期間として主に資金稼ぎと情報収集をして過ごした。資金はガルベージ伯爵の件で白金貨10枚をもらったのだが、いざというときのために全部貯蓄としてギルドに預けた。あのまま懐に入れておいたら、酒と飯で溶けてしまうだろうしな。
そして、シェーラが暗殺した人の遺族への訪問も済ませた。やはり無事にとはいかなかったが、中にはシェーラの事情を理解し、逆に親切にしてくれた人もいた。そのあとシェーラが隠れて静かに涙を流していた姿はまだ記憶に新しい。
願わくばこれで少しでもシェーラの心の負担が軽くなってくれると良いのだが・・・
俺とシェーラの関係については明確に言葉にして確認したわけではないが、主従兼恋人みたいな感じになっている。まだ互いを意識してしまって恋人らしいことをするのには時間がかかりそうではあるが。
っと。長話は程々にしておいて、今一番に考えるべきことといえば決まっている。
「そうだ王都、行こう」
「どうしたのよ?急に変なしゃべり方して」
「気にするな。ただ、無性にこういう言い方をしたかっただけだ」
「・・・むしろ気になる」
エルフ姉妹が揃って首を傾げる姿は微笑ましい。こういう反応ならボケる甲斐があるというものだ。
あれからノーラの冒険者登録も済ませて、今は3人でパーティーを組んでいる。パーティーの名前はある程度有名になってから付けるものなんだそうだ。個人に付けられる二つ名と同じように、パーティー名を付けられるのも名誉なことらしい。
「冗談はさておき、次の目的地は王都だな。やっぱりその国の中心を訪れるのは鉄板だろ」
「そうね。これといった目標がないなら取り敢えず王都に行けば退屈はしないでしょうし」
「・・・賛成」
アートレア王国王都『アリア』。初代女王の名を冠しているその町は、レフィリアからさほど遠くない。大体馬車で1日、2日というところだろう。
フェンの上にシェーラとノーラを乗せて走っていけば半日とかからないが、町と町の間の移動も旅のうち。というわけで、ギルドで乗り合い馬車の護衛依頼に乗っかっていくことにした。
3人でギルドに向かい、依頼ボードを探したが良いのがなかったので、まだ張り出されていないものがないか聞こうと受付を見ると丁度エミリアのカウンターが空いていた。
エミリアは仕事が早く正確で、人気の受付嬢なだけあって受け答えも丁寧だから、話していて気持ちが良い。
「よう、エミリア」
「シグルさん、おはようございます。どうされました?」
「ああ、王都行きの護衛依頼で良いのがないかと思ってな」
「・・・やはり、出ていかれてしまうのですね。分かっていても寂しいものです」
「まあな。ただ、二度と会えなくなる訳じゃないから。寂しいと感じてくれてありがとな。それで、依頼はあるか?」
「少しお待ちください」
エミリアはそう言うとカウンターの奥の棚から書類を引き出してきてテキパキと仕分けていく。しばらくして一枚の紙を取り出した。
「乗り合い馬車で、3日後に出る王都行きの護衛に空きがありますね。これでいかがですか?」
「それにしよう」
「承りました。馬車の出発は三の鐘になりますので、遅れないようご注意下さい」
一応この世界の1日も24時間で、地球と同じ時計はあるが、上級貴族でないと金額的にもコネ的にも手に入れるのが難しいので普通は鐘を使う。
それぞれの時間は一の鐘から順に6時、9時、12時、15時、18時、21時だ。
「あ、あの!」
頭のなかで出発までの予定を考えていると、エミリアが話しかけてきた。心なしか頬が少し赤いような?
「ん? どうした?」
「シグルさんは明日お暇ですか・・・?」
「あ、ああ。特にこれといった予定はないけど」
エミリアはそれを聞いてぱぁっと顔を明るくしたかと思うととんでもない爆弾を落とした。
「じゃあっ、私とデートしてくださいっ!」
・・・な、
『『『『『「「何だってぇぇぇぇえええっっっ!!!」」』』』』』
運の悪いことに、人が少なくて丁度静かなタイミングで放たれたエミリアの言葉はギルド内に響き渡った。
「ちょ、ちょっと、どういうことよ~~~~っ!!」
「知らん! ていうか俺の首を掴むな! 揺さぶるな!」
「そうですよ、離してあげてください!」
「あんたが言うか!」
突然のことに動揺したシェーラは咄嗟に俺の首を締め上げ、仲裁に入ろうとしたエミリアにも噛みつかんばかりの勢いでガルルッ!と威嚇している。
「だぁーっ! いいから少し落ち着けっての!」
「これが落ち着いていられるもんですかぁ~~~!」
数分後。
「とにかく、どういうわけなのか聞かせなさいよ」
何とかシェーラを落ち着かせたものの、今度は物凄いジト目でエミリアを尋問し始めた。
ついでに俺は後ろの野次馬と化した男性冒険者たちから熱い視線を頂戴している。それに込められた感情は、もちろん嫉妬と殺意だ。
「どういうわけもなにも、シグルさんのことが好きだからに決まってるじゃないですか」
「ストレートっ!?」
本当に直球で来たな~。
だがシェーラの怯みも一瞬、続けて何か言おうとしたところでエミリアに遮られた。
「そもそも、なぜ私はシェーラさんに問い詰められているのでしょう?」
「そんなの決まってるじゃない! わ、私が、その・・・」
「・・・シェーラさんが、何ですか?」
「・・・ど、」
「奴隷だからって言うのなら、主人の意思を差し置いて口出ししてくるのは筋違いなんじゃないですか?」
シェーラのやつ、恥ずかしいから奴隷なのを口実にしようとしたな。しかもエミリアに先回りされて潰されてるし。
「う、うぅ・・・」
「どうなんですか?」
「わ、わ、私とシグルは好き合ってるの! 恋人なの! だから口出しする権利はあるのよ!」
シェーラが顔を真っ赤にしながら叫んだ瞬間、周りから冷やかしの声があがり、殺気の濃度も増した。
そしてエミリアの方はというと、安心したような、それでいて少し残念そうな複雑な顔をしていた。
「はぁ、そうですか。やっぱりお二人は既にそういう関係だったんですね。ひょっとしてノーラさんもですか?」
「・・・検討中」
「ノーラ!?」
ノーラまさかの返答。しかもこのニオイ、嘘じゃねぇし・・・
「やはり正妻は難しそうですね。ではシグルさん、私は第二か第三夫人ということでいかがです?」
「待てい! デートの話から飛躍しすぎだろ!」
「・・・でも、満更でもなさそうな顔してる」
「ノーラさん!? 君まで俺の心を読まないでくれませんかね!?」
「・・・分かりやすい」
「分かりやすいわね」
「分かりやすいですね♪」
馬鹿な・・・そこまで分かりやすいのか俺は? 最近やっと父さんに先読みされないレベルまでポーカーフェイスを身に付けたというのに。戦闘での駆け引きとはまた違うのか?
「それで、どうでしょうか? 私こう見えてAランクの冒険者でもありますから旅の足手まといにもならないでしょうし」
「A!? 確かに魔力は結構ありそうだが・・・」
「えっへん。これでも幼い頃から祖父に魔法を教わっていましたから」
そういや前におじいちゃん子だって言ってたな。
「Aランクまで鍛えられる祖父って一体何者なんだ?」
「わしじゃよ」
「おわっ!?」
いつの間にかダンブラーが近くに来ていた。動揺していたとはいえ近づかれて気付かないとは・・・ってそんなことより、
「わし、ってまさかエミリアは・・・」
「言っとらんかったかの? わしの孫娘じゃよ」
・・・な、
「何ぃーーーっ!?」
ってあれ? 驚いたの俺だけ?
「なによ、知らなかったの?『金色の魔術師』の孫娘が祖父の才能を受け継いでいて、将来は2代目『金色の魔術師』ってわりと有名なのよ? 彼女」
「まあ知らなくても無理はない。彼等の家は孤島にあるからのう。情報は入りにくいじゃろうて」
それにしてもまさかエミリアがダンブラーの孫娘だったとは。ってそんなことより!
「もしかして貴方がここに来たのは・・・」
「なに、孫娘へのちょっとしたジジイのお節介じゃよ。シグル、わしからもエミリアのことを頼めないかと思ってな」
「やっぱり・・・」
「君は人格的にも実力的にも信頼できるし、共にいればエミリアにとっても良い経験になるじゃろう。もちろん、婿の相手としても申し分ない」
ニコニコしながらそんなことをのたまうダンブラー。ギルドマスターまで出てきたことでギルドの中にいた者もギルドに入ってきた者も全員こちらに注目している。
またやられた・・・こりゃ二人ともグルだな。まったく、この爺さんといい孫といい・・・完全に断れない状況になってしまったじゃないか。
しかも、断る理由が全くないうえに受けるのにメリットしかないのが微妙に腹立つ。
「・・・交際云々は取り敢えず置いておくとして、パーティーメンバーに加えるのは構いませんよ。二人が特に反対しないならね」
「・・・私は別に構わない」
「お前はどうなんだ? シェーラ」
「・・・反対はしないわ。ここでムキになったって格好悪いだけだし。ただし、明日は私も付いていくから」
「ええ、構いませんよ。ならノーラさんも一緒に行きましょう?」
「・・・当然、行く」
あーあ、シェーラのやつ完全に拗ねてんな・・・
対するエミリアはシェーラの警戒心バリバリの態度などどこ吹く風で、ノーラと楽しそうに明日の話をしている。
そして周りの野次馬は、修羅場(?)が丸く収まり、なおかつギルドの人気ナンバー1のエミリアを手に入れたことに対する、もはや物理的に刺せそうなくらいの殺気を俺に向けている。
まあ殺気を出しているのは男だけで、一部の女性冒険者は修羅場が丸く収まってしまったことにどこかガッカリしており、他はキャーキャーとさっきのことについて会話していた。
「ダンブラーさん、こんなタイミングにしたの、わざとですよね」
「ほっほっほっ。なんのことやら」
「・・・恨みますよ」
「なあに、色を好むも好まれるも英雄の性じゃて。お主の甲斐性に期待しとるよ。ほっほっほっ」
・・・はあ。次は思い通りにさせねーぞ、爺さん。
作品を読んでいただき、ありがとうございます。
誤字脱字、矛盾点などございましたら遠慮なくご指摘ください。
もしよろしければ、ブックマーク登録と評価ポイントを付けていただければ幸いです。




