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竜王の息子に転生した俺は王道な異世界生活を楽しむ  作者: 高錫裕貴
1章 旅の始まり
16/26

16話 告白

 毎度のことながら大変長らくお待たせしてすみません。高錫裕貴です。

 最近はこういうご時世なので仕事のとき以外はできるだけ部屋に引きこもっているのですが、一人暮らしなので退屈で退屈で・・・しかも人との会話が恋しくなるような思いを経験するとは夢にも思っていませんでした。やはりコミュニケーションって人間にとってとても大切なものなんですね。今回改めて痛感しました。

 奴隷商に着くと、建物の見た目は意外とまともだった。ボロいわけでもなければ派手過ぎるわけでもない。見た目の印象は悪くないな。

 中に入るとドアベルが鳴り、カウンターから店員が出てきた。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「ギルドマスターの紹介で来たんだが」

「はい、伺っております。失礼ですが本人確認のため、ギルドカードの提示をお願いします」

「これでいいか?」

「・・・確認しました。ではこちらへ」


 店員は奥の部屋に俺たちを案内したあと、お茶を淹れてから部屋を出ていき、代わりに身なりの良い男が入ってきた。


「ようこそ。私はここのオーナーで、スラーフと申します。以後お見知り置きを」

「そんなに何回も利用する機会はないと思うが・・・」

「いえ、おそらくあなたは私との縁を利用する機会があるでしょう。そして私もあなたのような強く正しい者と知己になるメリットはとても大きいので」


 スラーフはかなり確信を持って話しているようだ。なぜ分かるのかと問えば、「長年の経験と勘でございます」と返された。


「それで、奴隷の登録をするのはどちらでしょう?」

「私よ」

「かしこまりました。ではこちらが契約書になります」


 シェーラは渡された書類を特に抵抗もなく書き上げ、俺に渡してきた。

 ここで俺が一番気になっていたところに目を通し、勝ちを確信した。何の?と言われても知らん。何となくだ。


「・・・これでよし、と。じゃあこれでよろしく」

「それでは一応確認いたします。・・・あの?」

「ん?どうした?」

「それが、期間のところが1秒となっているのですが、1年の間違いでは?」

「いや、間違いじゃないぞ。そのまま続けてくれ」

「はあっ!?どういうことよ?」

「どういうこともなにも、俺は同意書の内容に従っているだけだが?」

「え?」


 俺が言っているのは、同意書の“シェーラの所有権はシグルにあり、期間は上限を2年とする”というところだ。それはつまり、1秒でも2年以内だからよしということになるわけで。


「ふざけんじゃないわよ!」


 俺が説明するとシェーラは怒声をあげた。


「そんなことで私が喜ぶとでも思ったの!?お節介にもほどがあるわ!いい?私が奴隷になるのは罪を償うためであって、私の意思でもあるの。あなたの身勝手な善意を押し付けないでちょうだい!」

「断る」

「なっ・・・」


 俺の即答に少し戸惑いを見せるシェーラ。だがすぐに我に返って再び言い募ろうとしたところで俺が遮った。


「大体、お前は俺に対してでっかい恩があるんじゃないのか?」

「それは・・・」

「なら、少しくらい我が儘を言っても良いだろう?」

「・・・」


 こう言うと恩着せがましく聞こえるかもしれないが、ガルベージ伯爵邸からの救出やザックの撃退など、色々シェーラには貸しがある。


「それにな、お前は何も悪いことはしてないじゃないか。ありもしない責任を取らされて奴隷落ちなんてそこからして気に入らない。ましてやそんな奴隷を連れ歩くなんて真っ平ごめんだ」

「だからって・・・」

「どうしても罪悪感が拭えないっていうのなら直接遺族のもとへ行けば良い。行きづらいなら付いてってやるし、理不尽な怒りを向けられそうなら守ってやる。彼らの知らないところで勝手に罪滅ぼししててもお前が満足して終わりだ。むしろそっちの方が不誠実だと、俺は思うがな」

「・・・わかった。でも、一つだけいいかしら?」

「何だ?」

「期間はせめて3ヶ月にしてちょうだい。ただの自己満足だってわかってるけど、それでも私のことを考えてくれてるならなおさらね。やっぱりケジメは必要だし、罪滅ぼしじゃなくて、あなたへの恩返しのためなら良いでしょう?」

「やれやれ・・・強情な女だな。わかったよ」


 一時はどうなるかと思ったが、話が拗れなくて良かった。やはり無理やりは後味が悪いからな。


「お話はまとまったようですな」

「ああ。期間は3ヶ月に修正しといてくれ」

「かしこまりました。ではシェーラさんは左手、シグル様は右手を出してください」


 俺とシェーラが言われた通りに手を出すとスラーフはその手を掴み、何やら詠唱を始める。するとシェーラの左手の甲に小さな黒い炎があがり、奴隷紋が現れた。


「これで登録は完了です。今より3ヶ月経過したときに奴隷紋は自然に消滅しますので解除の手続き等は必要ございません」

「ああ、わかった」

「それと、お時間があるようでしたらうちの奴隷も見ていかれませんか。きっとお気に召す者を紹介できると思いますが」

「いや、今回は遠慮しておくよ」

「そうですか。ではまた機会があれば是非ご利用ください」


ー ー ー ー ー ー


 スラーフと軽く会話を交わしてから店を出たあと、俺たちは宿に戻った。丁度隣の部屋が空いていたのでシェーラ達用に借り、鍵を渡すと怪訝そうな顔をされた。


「なんだよ、その顔」

「いえ? てっきり私に隣で寝るように言うのかと思ったから意外だっただけよ」

「だーかーらー、そんなこと命令したりしねぇってば!」


 確かにそうしてもらえたら最高だろうが・・・


「漏れてるわよ、心の声」

「何っ!?」


 くっ、思わず声に出てしまっていたか。油断した!


「まったく、何でそんなに頑ななのよ。いいじゃない、私はあなたの奴隷になったんだから」


 顔を赤くして目を逸らしながらそんなこと言われるとただでさえ危うい理性がプッツンといきそうになってしまうが、心の中にいる欲望の俺を殴り飛ばしてなんとか耐える。


「前に言ったろ。ザックの件を片付けたらお前のために行動する理由を話すって」

「!」

「それを話すから取り敢えず俺の部屋に行こう。ノーラは・・・あれ?」


 ふと気付くとノーラがいなくなっていた。隣の部屋の鍵がないし、気を遣ってくれたらしい。


「気の利く子だな」

「っ、そ、そんなことより、さっさと行くわよ!」


 さっきよりも赤くなった顔を隠すように下を向きながら早足で部屋に向かうシェーラのあとに俺も続いた。

 部屋に入るとシェーラをベッドに座らせ、一人分くらい空けて俺も隣に座る。


「それで? なんなのよ、その理由って」

「わりとあからさまに態度に出してる自覚あったし、その反応見れば大体察してるんだろうけどな・・・」


 俺はそう言いながら懐からあ(・)る(・)も(・)の(・)を取り出してシェーラに差し出す。


「これは・・・ネックレス? 見たことない石がついてるけど」

「それは俺(・)の(・)鱗(・)だ(・)」

「え?」

「特定の種類の贈り物に意味を持たせる文化は竜族にもあってな。自分の鱗を異性に贈ることに込められた意味は求愛。つまりプロポーズだな」

「っ!?」

「受け取って・・・くれるか?」


 平静を装ってはいるが、実のところ心臓はバクバクだ。ニオイにしても、大まかな感情を、なんとなくしか読み取れないから、今の彼女の表情や感情だけじゃ脈があるのか単に照れてるだけなのかも分からんし・・・


 シェーラはネックレスを見つめたまま何かを考え込んでいるようだ。それは数秒か、はたまた数分か。どれくらいかは分からないが俺にはその時間が永遠にも感じられた。

 長い沈黙のあと、シェーラは口を開いた。


「私は、奴隷。だからこれは受け取れないわ」

「っ、それは・・・!」

「か、勘違いするんじゃないわよ。奴(・)隷(・)だ(・)か(・)ら(・)受け取れないだけで、別に断ったわけじゃ・・・ないから」


 つまり、今のツンデレ語を翻訳すると・・・


「~~~~っ、よっしゃああああっっ!!!」

「ちょっ、うっさい!!他の部屋に聞こえるでしょ!」

「構うもんか!今日は俺の人生最良の日だ!!ワハハハハッ!!」

「・・・いいから黙れ!」


 バチーーン!


 シェーラにくらったビンタの痛みを含めて、俺はこの時のことを一生忘れないだろう。目の前に現れたくるくる回る星を眺めながら、そんなことを考えていた。

 作品を読んでいただき、ありがとうございます。

 誤字脱字、矛盾点などございましたら遠慮なくご指摘ください。

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