12話 対談
どうも皆さん、お待たせいたしました!高錫裕貴です。最近やっとプロットを作り始めたのですが浮かんでくるのが3章とか4章とか、ずっと先になる話ばかりで目の前の話がなかなか進まないのが悩みの種です・・・
ベリオスが連行された後、一気に事が進んだ。
まずは不法に拉致されていた奴隷達の解放。屋敷の地下には多くの不法奴隷が監禁されており、さらには環境もあまり良くなかったため急いで解放していった。体調が優れない者は町の治療院に運ばれ、手当を受けた後は無事な者を含め領主が一時的に保護することになるらしい。そして事情聴取を受けた後は没収されるであろうガルべージ伯爵家の財産から補償金を渡されて帰されるそうだ。
俺とエミリアは、夜遅かったこともあってその日は帰され、事情聴取は後日ということになった。そしてシェーラとノーラの二人はというと、ノーラは他の不法奴隷と同じように領主の屋敷で保護され、シェーラは被害者の一人であるとはいえ、ベリオスの悪事に手を貸していたことには変わりないとして、一時拘束されてしまい、今は拘留所にいる。処分の内容は事情聴取の後、領主とギルドが相談して決めることになる。
「チッ、納得いかねえ・・・ッ!」
なぜシェーラが責めを受けなければならないのか。それに、脅迫されていたとしても自分の意思でやったことなら多少の責任を取らされるのは仕方ないのかもしれないが、“隷属の腕輪”で自由意志を奪われていた彼女がベリオスに逆らうのは不可能だった。だというのに・・・
「くそっ、一体どうすれば・・・」
このままではシェーラが処罰されてしまう。それは絶対に認められない。ならどうすれば良い?力尽くは論外、交渉は・・・あまりそういうのは得意じゃない。いやしかしそんなことを言ってる場合じゃ・・・
その時、不意に俺の頭にぽんと手が置かれた。ついでになでられる。
「よしよし、いいこいいこ」
「・・・・・・・エ、エミリア?何をしてるんだ?」
「私、昔から結構おじいちゃん子でして。悲しいときや心に余裕がないとき、よくこうしてもらってたんです」
「顔に出てたか?」
「ええ、それはもうはっきりと。ついでにブツブツと独り言まで。焦る気持ちは分かりますけど、ちょっと怖いですよ?」
「・・・悪い」
どうも考えが顔に出やすいのは良くないなあ・・・と反省しているとエミリアが前に出てきてにっこり微笑む。
「大丈夫ですよ。シェーラさんは何も悪くありませんし、とてもいい人ですから」
「・・・そうだな。俺たちがあいつの無実を証言してやれば良いだけの話だよな」
「その通りです」
そう、それだけのことだ。焦っていても意味がない。しかし、ここまで冷静さを欠くとは我ながららしくもない。やっぱりそういうことなんだろうな・・・
「ありがとうなエミリア。おかげで落ち着いた」
「お役に立てたようで良かったです。それではまた明日。フェンちゃんもまたね」
エミリアはそう言って手を振りながら帰って行った。
「よし、俺たちも帰・・・」
グウウゥゥゥ~・・・・・・
「・・・る前に飯だな」
「ウォン!」
ー ー ー ー ー ー
翌日、ギルドに顔を出すと早速ダンブラーからお呼びがかかった。エミリアに案内され支部長室に入ると、ダンブラーとシェーラ・ノーラ姉妹、そしてもう二人知らない人物がいた。
「お、来たな!彼が例の期待の新人か?」
一人は40~50代くらいで質の良い服を着た筋肉質な男。サイクスよりもさらに強い覇気を感じる。一見すると機嫌良さそうに笑っているが、その目の奥は何かを見極めんとしているかのように鋭い光を放っている。
「へーぇ、彼がねえ・・・」
もう一人は20くらいのイケメン。こちらを完全に格下と見ているようで侮りの視線を向けてくるが、当の本人は装備の高級さと彼から感じられる力の質が釣り合っていない。この時点で俺はこの男に対する興味を失った。
「よく来たのう、シグルよ。ま、とりあえず掛けてくれ」
「・・・失礼します」
ダンブラーがすすめた場所は彼の隣だったのだが、気にせず座ることにした。
「ではまず彼らを紹介しよう。そっちに座っとる身なりの良い方がこの町の領主、ルーカス・フォン・レフェリア伯爵。その隣が近年勢いを増している新進気鋭のクラン『赤龍』のメンバーで、最近レフィリア支部のリーダーとなったAランク冒険者のザックじゃ」
クランとはパーティーの一つ上の単位で、一定数以上の冒険者のメンバーとギルドへの上納金を納めることで成立する。そしてクランにはギルドへの貢献度や戦力によって格付けされており、メンバーは所属するクランの序列に応じて受けられる待遇が変わる。
しかし領主の登場には驚いた。護衛を連れておらず、覇気を感じさせるだけの実力を持っていることから察するに、フットワークの軽いやんちゃ領主なのだろうか。
「それで、用件というのは先日の事件に関することですか?」
「その通り。それとシェーラさんへの処置についてじゃな」
それを聞いて俺の中に緊張が走る。部屋にシェーラ達がいたことからこの話が来るのは分かっていたが、ニヤニヤしているザックを見て嫌な予感しかしなかったからだ。
「・・・処置、というのはどういうことですか?」
「それはボクが説明してあげよう」
俺の質問に対して、ザックが説明を始めた。
「彼女はね、年限奴隷としてうちのクランに入ってもらうことになった。ノーラさんと一緒にね。まあ期間はせいぜい1、2年くらいだけど」
「なぜそうなる?彼女にはベリオスの命令に抗うすべはなかった。なのにそれではまるで処罰じゃないか」
感情を読まなくともわかりきっている。奴はシェーラとノーラが欲しいんだろう。戦力としても、女としても。
一応奴隷の身分でいることに期間が設けられている年限奴隷には人権が保障されているのだが、無視されていることが多いのが現状なのだ。どうにかして阻止しなければならない。
「実はシェーラさんは今回の事件の他にもガルべージ伯爵の命令でいろいろ裏で活動していたんだ。その時にうちのメンバーにも死傷者が出ていてねえ・・・本来なら問答無用で死刑になるところをたった1、2年の年限奴隷になるだけで済むんだから十分な温情措置だと思うけど?」
「全く思わないな」
一向に態度を変えない俺にだんだん苛立ち始めたザックは軽く威圧を放ちながら続ける。
「はぁ・・・物わかりが悪い男だねえ、君は。確かに今回の事件解決に君が貢献したのは聞いてるよ?だからってたかがDランクの新米がAランクのボクに口答えしても良いと思ってるならそれは大間違いだよ?」
「シェーラは仮にも同じパーティーを組んでた仲だ。そして俺はそんな奴がさらに不幸になろうとしてるのを黙ってみてられるほど、碌でなしじゃないんでね」
「不幸になるとはずいぶんな言い様だね。ボクは彼女たちを奴隷という名目で他の被害者から守ろうとしているんだよ?ガルべージ伯爵ではなく彼女に恨みをぶつけようとする者がいないとも限らないからね。それをまるで悪人みたいに言われるのは心外だなあ」
「俺は事実を言ったまでだ。あんたは外面は良いようだが性根の腐ったニオイがする。シェーラやノーラみたいな美人がそんなところへ行けば碌な目に遭わないのは火を見るよりも明らかだ」
「・・・あくまでボクにたてつく気かい?」
「当たり前だ」
次第に俺とザックの間の空気が険悪になっていく。後ろでその様子を見ている姉妹は不安そうな顔だ。
そこへ、ルーカスとダンブラーが仲裁に入った。
「まあまあ二人とも、少し落ち着きなさい。ここで喧嘩しても埒があかんじゃろう」
「ダンブラー殿の言うとおりだな。そこでだ、この話、冒険者らしく腕っ節で決めれば良いんじゃないか?」
「俺は構いませんよ。そいつが逃げないならね」
「新米風情が言ってくれるじゃないか・・・っ!いいだろう、ボクも乗った。確かに言って分からないなら力尽くで黙らせてあげるよ」
「決まりだな。立会人は俺が務めよう」
うまくいった。俺がわざと必要以上に煽っていることに気づいた二人のフォローのおかげで、決闘に持ち込むことができた。
さあて、どう料理してやろうかな・・・




